見出し画像

感情を思い出し、日々の喜びを増やす方法~京都ライター塾アドバンスコース「エッセイの書き方」講座

この記事は、京都ライター塾アドバンスコースの講座のひとつ
「エッセイの書き方」の受講の様子を”レポ記事として書く”という課題で作成しました。
※”レポ記事を書く” 講座の様子はこちら≫
https://note.com/tyk805193/n/nd7a6c90546fc?sub_rt=share_pb

最近の嬉しかったこと、楽しかったこと、好きなことを聞かれたとき、何も思い浮かばない、あるいは、ぼんやりしていて言葉に表せられないときはありませんか。

もしかしたら、「感情」を置き去りにして行動を起こしてしまっているから、かもしれません。

2024年2月「書く」という実践をメインにしたライティング講座「京都ライター塾アドバンスコース」のなかで、「エッセイの書き方」という回がありました。

京都ライター塾アドバンスコースは、ライター活動で即戦力として使える講座内容が中心ですが、「エッセイの書き方」の回は一変して、「作家」を目指すようなテーマです。

しかし、受講してみると、エッセイを書くことで、自分の感情と向き合い、自分を改めて知る時間が生まれていることを体感しました。
「エッセイの書き方」を生徒として受講した私がレポートします。


エッセイを書けるようになることで、書く幅が広がる

通常、京都ライター塾アドバンスコースの講師は、ライター・エッセイストの江角 悠子(えずみ ゆうこ)さんです。しかし、今回は、大学や文化教室で、エッセイの講師をしている、寒竹 泉美(かんちく いずみ)さんが、特別講師として招かれました。

講座の冒頭では、「エッセイの書き方」を講座テーマにした理由について、江角さんが「商業ライターとして書く文章とエッセイでは使う筋肉が違いますが、使い分けたり、ブレンドすることで書く幅が広がるので、ぜひ身に付けてほしいと思い、企画しました」と説明がありました。ご自身も今回の講座を楽しみにしていた様子です。

受講生は講座当日までに、寒竹さんからの資料を読んで「エッセイを書く」という課題に取り組みました。


思い切って減らすことで満足度が高まる

講座はオンライン形式で、ゲスト講師の寒竹さんと、江角悠子さんを含めた受講生5名の計6名での講座でした。

まずは、寒竹さんから課題に入れられた添削について、丁寧に説明がありました。その後、資料を見ながら、エッセイとは何か、商業ライターが文章を書くときとの違い、エッセイの魅力や書き方のポイント、決まりごとについての話がありました。

課題のフィードバックでは、寒竹さんが、エッセイを書くポイントを身近なことに例えて説明します。とてもわかりやすく、画面ごしの受講生たちは激しい頷きと、あまりの的確さに笑ってしまう人もいるほど、和やかな雰囲気でした。

実際には、エッセイを書くときの「文字数を削る」という作業について、寒竹さんは「5日間の旅行を3日間に短縮する」という例に置き換えて話してくれました。

5日間の旅を3日間に短くする場合、観光する場所の数を変えずに、1か所あたりの滞在時間を減らすよりも、旅行のテーマを決めて、思い切って、観光する場所を減らしたほうが、1か所あたりの滞在時間が伸びて、満足度が高くなるというのです。

「エッセイも同じで、満遍なく文字数を削ると間延びして淡々と見えます。しかし、思い切って要素を削ることで、伝えたいことが際立ちます」と寒竹さんは話し、私はその効果を強く感じました。

なぜなら、私が提出した原稿は、まさに「満遍なく削ったために淡々とした状態」だったからです。そして、文字数を削り、リライトされた先生の原稿では、私の伝えたかったことが、ぐっと浮き出ていて、自分で自分の原稿に感動しました。


感情を拡大鏡で見る

添削結果のフィードバックが終わり、そもそもエッセイとは何か、という説明に入ります。

エッセイに書くべきことは「情報」ではなく、出来事に対しての「感情や自分の考え」と寒竹さんは話します。そのため、まずは自分の感情を知ることが必要だそう。
事前課題に取り組む際にも「書きたい感情を決める」ことから始めるように指示がありました。

しかし、気持ちを言葉に表現できないとき、そもそもどういう気持ちかがわからないときもあります。そして、感情と間違えやすい表現があることも寒竹さんから説明がありました。

ここで、寒竹さんから「自分と同じ年の美しい人が目の前に現れた時、どんな気持ちですか?」と問いかけが入ります。

受講生たちからは、うれしい、ずるい、うらやましいといったさまざまな感情が飛び交います。

うまく感情を見つけられない受講生には、寒竹さんから「良い気持ちですか?悪い気持ちですか?」と質問が入りました。それでも言葉が見つからない受講生に「どちらかと言えば、どっちですか?」と尋ね、受講生からは「そんなスタイルを保てるなんてうらやましい、何を食べてるのか知りたくなる」と答えが出てきました。

寒竹さんは「楽しい、悲しいという強い気持ちは言葉にしやすいですが、気持ちが見えないときには、まず、良い気持ちか、悪い気持ちかの二択から考え始めると良いです。どちらかと言えば……で考えても構いません」と、気持ちを観察する方法を教えてくれました。

続けて、「美しい、きれい」という外から見える描写は気持ちではなく、美しさに対して、どう感じたのかが「気持ち」であり「個性」だということも話してくれました。

1つの対象物や出来事に対して人の数だけ感情がある。これこそがエッセイのおもしろさであり、「感情は他人と比較する必要がない、自由なもの」と、言われてみれば当然のことかもしれませんが、すっかり見失っていた大切なことを思い出させてもらえた時間でした。


エッセイを書くことで、喜びの幅が広がり、暮らしが豊かになる

普段は行動することが優先され、行動を起こす前、起こした後の感情を認識する間もないまま、出来事は通り過ぎてしまいます。

しかし、エッセイを書く時には、過去に立ち戻り、知らずに通り過ぎてしまった感情を拾い上げる作業が必要です。それこそが、自分が何に喜びを感じ、何を不快に感じるのかを知る大切な時間となります。

感情を拾い上げることを繰り返していくと、自分が心地よく思うこと、嫌だと思うことは何なのかを知ることができ、無意識で行動していたことが次第に、自分の感情を知ったうえで起こす行動に変わります。そうすることで、自分を大切に、丁寧に扱えるようになるのではないかと思いました。

講座を終えた今、エッセイを書けるようになることは、表現力の幅だけではなく、日常生活の喜びも広がるような希望があると、感じています。

江角さんのライター塾のテーマは「書くことで幸せになる」
ライター塾のテーマの通り、エッセイの書き方を学んだことで、書いて幸せになる方法が増えたように感じられた講座でした。

【プロフィール】
寒竹 泉美 ~Izumi Kanchiku
1979年生まれ、京都在住の「小説と科学を書く人」
出身は岡山県、育ちは広島。大学院では脳科学を専攻した医学博士。
京都・東京に拠点をおく理系ライター集団「チーム・パスカル」に所属。主に研究室・理系企業の取材を行い、専門的な分野をわかりやすく伝える理系ライター。2009年講談社Birthから作家デビューした小説家でもある。
大学や文化教室で、文章の書き方やエッセイの講師も務める。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?