0224-1特lifeshift-FBAD

『LIFE SHIFT リカレント編』週刊東洋経済eビジネス新書No.255

本書は、東洋経済新報社刊『週刊東洋経済』2018年2月24日号をもとにワンテーマで再構成したオリジナルコンテンツです。情報は底本編集当時のものです。(標準読了時間 80分)

生涯学習がスタンダードに
ライフ・シフトは「学び直し」がカギだ

 人生100年時代に備え、教育→仕事→引退の順に同世代が一斉行進する「3ステージ」の人生から、複数のキャリアを渡り歩く「マルチステージ」の人生へのシフトを勧めたのが、英ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏らが著した『ライフ・シフト』だ。

 2016年11月の発売以降、反響は続き、17年秋には安倍晋三政権が目玉政策に掲げる「人づくり革命」の一環で「人生100年時代構想会議」を設置、グラットン氏も有識者議員に起用された。

 同会議で幼児・高等教育の無償化とともに、改革の柱として議論されているのが、社会人の「リカレント(学び直し)教育」である。

 長寿化に伴い現役で働く期間が延びる一方、インターネットの発達やAI(人工知能)の台頭など環境変化は著しく、一つの分野のスキルで一生稼げる時代は終わりつつある。だからこそ社会人に、異分野の知識や能力を磨くリカレントの必要性が高まっている。

学びの四つの課題 それぞれに解決の兆し

 社会人の学び直しは以前から必要性が叫ばれてきたが、日本で十分に根付いているとはいいがたい。厚生労働省の調査によると、その要因は大きく四つある。

 一つ目は社会人の〝忙しさ〟だ。学び直しを求められるミドル世代ほど、経営層と現場との狭間で多くの責任を背負いがち。学び直しの余裕は乏しかったが、政府の掛け声の下、残業時間削減の動きが生じ、潮目は変わりつつある。

 二つ目はおカネ。独身時代は自己投資に励んでも、住宅費や教育費がかさむと自己投資は後回しになってしまう。ただオンライン講座やSNSを介す学びなどおカネをかけない手法も広がっている。

 三つ目は「何を学び直せばいいかわからない」という目的の欠如だ。目先の仕事に追われると学ぶ目的を見失いがち。しかしAI・ロボットなど新産業の広がりが学びを促す一方、既存産業でも人材不足に悩む地方中小企業が都心人材の起用を模索しており、そこに学び直しの需要が生じつつある。

 さらに「社員のキャリアアップは重視するが、キャリアチェンジには慎重」(政策研究大学院大学の田中和哉リサーチ・フェロー)という企業の姿勢も課題だが、副業解禁など変化の兆しが見える。

 学びの手法は人それぞれ。すでに手探りでの学びも始まっている。まずはその現場をのぞいてみよう。

続々登場、大人の学び場
広がる社会人の学び直し

 地方でも都心でも、社会人が手探りで学び直しを始めている。学び方は十人十色だ。社会人の学び直しは子ども時代の義務教育と異なり、学びの内容や手法が多岐にわたる。実際にどんな学び直しが行われているのか、現場をリポートする。

続きをみるには

残り 29,797字 / 17画像

¥ 432

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?