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#5日目:活字の晩酌に感じる魅力

感受性が乏しいのか、鈍感なのか、デリカシーがないのか、本を読む割には作家の文調や表現にのめり込む事がない。

例えば、村上春樹の比喩表現が散りばめられた本も楽しいとは思うが、現実離れし過ぎて今一つ想像力を刺激しない。

これまで気に入った本はその時の自分にオーバーラップするものが多い。
例えば自分の住んでる地域を題材にしたものや、物語が当時の状況似ていたりと、身近だから容易に想像できる内容が多い。

それ故にお薦めも完璧個人主観となり心苦しいが、十年来の友人のお願いでもあるため紹介させて頂こう。

晩酌の一文に感じる共感

酒好きな男一人のやもめ暮らしも35年となり、一端の呑兵衛となった。
気づけば毎日の楽しみは家や外での一人飲みとなったが、テレビに飽きたり外で話し相手がいなければ本を読みながら飲むことが多い。

そんな酒の暇つぶしに購入した本の中から、今年一番のお薦めを紹介したい。
「一私小説書きの日常」だ。

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「苦役列車」で知られる西村賢太氏の、小説でもエッセイでもないただの日記。
内容は執筆活動やテレビやラジオへの出演等の日常で、時に詳細を書けばまた短絡的に「~した」とだけで基本は簡素な内容が多い。
だから酒を入れた頭で流し読みをするにはテンポも良く楽で心地いい。

この本の中でもお気に入りなのは、晩酌の描写だ。
例をあげると
「深更、手製のハムエッグ3つで缶ビール一本、宝半分」
「夕方、近くのスーパーにゆき、豆腐と白菜とポン酢を購める。
 深更、珍しく湯豆腐で缶ビール一本。宝一本」
※宝=宝焼酎と思われる

読んだ瞬間に「独り身の晩酌はまさにこれ」だと感じる。
上等なつまみは要らない、手製で当たり障りのないものでダラダラと飲む。酒好きの心をくすぐる。

晩酌もそうだが飲み屋の描写も良い、例えば
「夜十二時、鴬谷の信濃路にゆく。
 ウーロンハイ六杯と肉野菜炒め、ハムカツ、ウィンナー揚げ。
 最後にニラ玉定食とカレーそばを食べる。」

安酒と安いつまみで延々と飲み続ける至福の時間、ましてカロリーなど微塵も気にしていないつまみの数々、女性を連れて行けばこんな飲み方はできない。


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他にも同じ酒飲みだから、味や食欲を文章から感じることもある。
「缶の黒ビール一本、宝一本。
 レトルトのもつ煮込み、冷奴、魚肉ソーセージ、さきイカ。
 最後に緑のたぬきをすすって寝る。」

大してつまみも食べずに大量の甲類焼酎でも飲めば舌も麻痺してくる。
そんな舌を落ち着かせるため最後に汁そば、いつも以上に濃い味が口と胃に溢れるのを容易に想起させる。

やはり個人主観にはなるため、、、

この本の作家とは
「独り身」「酒飲み」「中年」
とまさに今の自分に重なるもので、想像力が刺激されたのが今回の本だ。

よって上述の通り個人主観となるため良本としてのお薦めはできない。

強いて言えば「独身アラフォー呑兵衛の日常」
大半の方が経験しない(できない)生活を垣間見ることができる、暇つぶしとしてお薦めしたい。

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