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夫の借金29,035,436円と私⑰

第17話 予想外の行動をするからこそ愛おしい

私の住むマンションは北向きで、日中はほとんど日が当たりません。
一時はベランダでガーデニングをしていましたが、日当たりが悪いせいかことごとく植物が枯れてしまい、あきらめました。

ガーデニングを諦めた私は、玄関の飾り棚に室内でも楽しめる観葉植物を飾るようになりました。
日当たりが悪いためか、アイビーなどの葉の薄い植物はすぐ枯れてしまいます。
試行錯誤の末辿り着いたのが、多肉植物です。

今では玄関に常にたくさんの多肉植物が並んでいないと、なんだか何かが欠けているような、落ち着かない気持ちになるほどなのです。

多肉植物は半日陰でも育ち、乾燥や冬の寒さにも強いのです。


気温が25度以上になる6月から10月は多肉植物の休眠期であり、この頃は水のやり過ぎに注意しなくてはなりません。
私は何度も水やりに失敗し、買ったばかりの多肉植物を枯らしてしまいました。

週に1度、細心の注意を払いながら霧吹きで水やりし、日に何度も様子を見て、葉がしおれていないか虫がついていないかチェックしています。
土も多肉専用の物や鉢底石、肥料まで研究し、それでも枯れてしまった時は何とも虚しいものです。
多肉植物は一鉢500円前後もするので、枯らしてしまった時の心のダメージも大きいのです。

あまりにも次々と枯れてしまうので、虚しくなった私は、フェイクの多肉植物を買って玄関に置いてみました。
フェイクの植物は水やりも、日当たりも、肥料も必要なく、365日青々とした姿をみせてくれ、枯れる事はありません。
見た目もほぼ、本物そっくりと言って良いでしょう。

すると不思議な事に、それはただの置物と化してしまったのです。

私は彼らを見ても何も感じず、愛しいとも何とも思わなくなってしまいました。

私は人間でも動物でも植物でも、自分の意に沿わない不規則な動きをするからこそ、愛おしいと思うのだ、という事を悟ったのです。

ついつい世話を焼き過ぎて逆に弱らせてしまったり、放って置いてもなぜか元気だったり、予想外の行動するからこそ愛おしく惹きつけられるのではないでしょうか。
たとえ、枯れても努力が無駄になっても、かけた時間は無駄では無いのです。
儚さや弱さこそが魅力なのです。


1999年にソニーから「アイボ」という子犬型のロボットが発売され、当初は入手困難なほど大人気だったものの、2006年に製造中止になりました。
人間とのコミュニケーションを通して学習し、飼い主の好み合うように成長するようプログラミングされていたように思います。
アイボの人気が思ったほど持続しなかったのは、やはり意のままに動く対象物に魅力を感じる人が少なかったからではないでしょうか。

映画「ブレードランナー2049」で、AIの3D美女が登場し、主人公と恋愛にも似た関係性を持つようになります。
彼女は持ち主の好みを学習するようにプログラミングされており、持ち主が嫌がるようなことは絶対言わないし、しないのです。

私だったら、超イケメンの自分の言う事をなんでも聞いてくれるロボットが開発されたとしても、結局は興ざめしてしまい、飽きてしまうと思うのです。

磁石のようにお互い引き寄せ合ったり、反発したりしながら、お互いを浸透させていくのがコミュニケーションなのですね。

今我が家の玄関には、多肉植物と共に、早春のこの時期にしか花を咲かせないヒヤシンスが並んでいます。
少しづつ硬いつぼみが開き、日々成長する姿を毎年楽しんでいます。

借金残額 令和5年2月現在 8,316,557円












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