インタラクティブコンテンツのシステムデザイン Vol.1

はじめに

仕事で『テクニカルディレクター』が脳内でパパッとやってしまってるところを他人に教えられるように言語化する、という試みです。

『こんなん書くまでもねーよ!』とか『浅ぇよ!』とかプロフェッショナルな方々からは言いたいことが色々あるでしょうが、まぁより深い議論に行くための一発目の下地なので大きな心で見てください。

ここで扱わないもの

テクノロジーベースのコンテンツデザイン/企画の作り方のようなものはここでは扱いません(そのうち書くかもしれないが・・・)。

1. 体験シナリオを作る

会社でやる案件の場合、『体験シナリオ』を作ります。何故か?
『体験』だけはみんな職能関係なく、企画/コンテンツの良し悪しや改善案/問題点を議論しあえるからです。みんなで色々議論しながら体験の骨子を作ります。カスタマージャーニーみたいなのが書ければ理想ですが、そんなレベルじゃなくても問題ありません。演出のメモ書きなどでも大丈夫です。この際、条件や意図なども書いておくと後々役に立ちます。
例えば2月1日からすみだ水族館で再演している『雪とクラゲ』の京都での時はこんな感じに書けます。当時は書かなかったので今さらっと書いてみました。

コンテンツの体験内容
・シーンは2つ。「雪」と「水」
・「水」はクラゲが浮かんで漂ってる映像
・「雪」はクラゲの妖精「エフィラ」と雪の結晶をモチーフに入れる
・「雪」のシーンでは床を歩くを轍(わだち)ができる
・「水」のシーンでは床を歩くと波紋が出る
備考
・丸っと空間全部を映像で埋めたい(没入感を高めるため)
・壁面と床面に投影
・床面ではユーザインタラクション重視、壁面はストーリー重視
・床面のみセンシング
・予算〇万
・備え付けの機材は〇〇〇、〇〇〇、〇〇〇
・施工可能期間は〇/〇〜〇/〇まで
・展示期間は〇/〇〜〇/〇まで

なかなかアバウトですが、これぐらいから叩き上げる必要がある場合も結構あります。

2. 入力/出力をピックアップする

次に『入出力』を洗い出します。
だいたい体験シナリオは1人か1グループに対して書かれることになるため、それを複数に体験可能なシステムを考える必要があります。今回のだと、以下の4つの出力(演出)が大きくありそうです。


・「水」映像(演出)
・「雪」映像(演出)
・「水」のときだけ出る、歩くと変わる波紋演出
・「雪」のときだけ出る、歩くと変わるわだち演出

最後の2つはインタラクションもあるので「入力」も必要、となります。なので「出力」4つに「入力」2つ必要になりそうです。

3. 図に起こす

(このレベルだと図に起こさないことも多々ありますが・・・)ユーザとシステムの挙動の関係がわかる図を作ります。書きそびれてるユーザの行動も書き入れます。また、『時間』も軸として入れましょう。どんなインタラクティブなシステムも基本は『時間』を基準に動いています。

我流でこの図を書いてたんですが、今見るとUX系で良く見るサービスブループリントに似てますね。
違う点としては大きく2つあります。

1つ目は、サービスブループリントでは『ユーザ』と『システム(サービス)』は1対1ですが、複数の『ユーザ』、つまり多対1のシステムを考える必要があるということ。これは複数の体験者が同時に入ったり、入れ替わりで体験できるようにする場合を考慮する必要があるためです。

2つ目は「ユーザ」以外に「オペレータ」を想定する必要がある場合があること。「システム」では責任問題に対応できなかったり、システムで一律で処理できない処理があったりする場合にイベント系だと「オペレータ」を配置することで体験性が飛躍的に向上したり、コストが下がったりします。
100万円かけて認識率90%の顔認識システム作るより、カメラからの映像を見て日給2万円のアルバイトが「人が来た」と思ったらキューが出せる仕組みのほうが確率高い、と言ったところですね。

まとめ

全然テクニカルディレクションまで行ってねぇじゃん!というツッコミが聞こえてきそうですが、ここまでがまず第一歩かな、と思います。今後出力と入力の話で機材を決めるフェーズの話をまとめて行こうと思います。

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