ふりかけ日記

「晩ご飯食べ終わりましたし、何か甘いもの食べたくないですか?」
「確かにちょっと甘いもの食べたいかも?でも最近食べ過ぎじゃない?」
「そんなことないです…」
「冷蔵庫に入れてたアイス、誰が食べたんだろうなぁ〜…?」
疑いの目を向けると分かりやすくぎこちない動きになっていたので、やはり私がいない間に食べたのだろう。
「盗み食いするような人に食べさせてあげるお菓子はありませ〜ん」
そう言ってからかっているとふりかけちゃんが突然ニヤニヤし出したので嫌な予感がして身構えていると
「でもマスターも、先週末私と出かける約束忘れていましたよね?」
と言われた。
「…」
返す言葉も無かったので黙るしかなくなっていると追い打ちをかけるように
「それと、マスターが夜こっそり私のプリン食べたの知ってるんですよ…?」
「コンビニ行ってくるけど、何か買ってきて欲しいものある?」
と満面の笑みで答えるしかなかった。
「アイスが良いです!」
「仕方ないなぁ…」
しばらくしてコンビニから帰ってきてチャイムを押すと中からドタバタと聞こえてきたので鍵を開けてくれるのを待っているとドアが勢いよく開き、ふりかけちゃんも飛び出してきたので予想外の出来事によろけかけたところを何とか堪えた。
「ちゃんと買ってきてくれました?」
「買ってきたよ」
と答えると無邪気にはしゃいでいたので今すぐに抱きしめたい欲求を堪えて平静を装いつつ
「寒いし、中に入ろうか」
と中に入ることを促した。
コタツに入り彼女にアイスを渡すとむすーっとした顔でこちらを見つめてきた。そう、ちょっとした仕返しとしてふりかけちゃんがあまり好きではないチョコミントのアイスを買ってきたのである。
「私がチョコミント嫌いなの知っててわざとやりましたよね…?」
とジト目でこちらを見てくるので素知らぬ顔をしながらチョコミントって歯磨き粉みたいな味だよね等と言いながら話題を変えているとそちらの話題に食いついてきたので他愛もない話に花を咲かせていると少し文句を言いつつもチョコミントのアイスを食べており、私も片付けが終わったので自分用に買ってきたふりかけちゃんの好物のバニラ味のアイスを食べようとアイスを持ってふりかけちゃんの隣に座ると
「何でマスターがバニラのアイス食べてるんですか…」
と聞こえてきたのでこっちも食べる?
と聞くと
「食べます!」
と頬を膨らませながら言うので渡してあげると満更でも無い様子で受け取ったものの少し気恥しかったのかちまちま食べているのを見て可愛いなとか思って見ていると
「何見てるんですか?あげませんよ?」
と言っているのを聞こえないふりをして見つめ続けていると恥ずかしさに耐えきれなくなったのか
「何でずっとこっち見てるんですか!」
と涙目で言われたので、彼女にその魅力について語っていると
「マスターのバカ…」
と耳まで真っ赤にして言ったので落ち着かせるためにも頭を撫でるついでにアホ毛を弄っていると
「もう!アホ毛に触らないでください!」
と言われたけれど、それでも触り続けていると
少し文句は言われたもののしばらくするとされるがままになってくれていたので堪能していた。
数分間そんなことをしていたら、突然
「明日の朝ごはん、私が作っても良いですか?」
と聞かれた。
「朝早く起きれるの?」
「私も早起きぐらい出来ます!」
「じゃあ、任せようかな」
「任せてください!マスターがびっくりするぐらい美味しい朝ごはんを作ってあげます!」
張り切った様子で答えてくれたので、任せることにしてその日はお互い寝ることにした。
翌朝、目が覚めて布団から出たくないな等と思いながら布団にくるまっていたところ、昨夜の約束を思い出して朝ごはん出来てるかな、と少し期待しつつリビングへ行くと、誰も居なかったのでもしかすると…?と思いながらふりかけちゃんに呼びかけても返事が無かったので寝室に入るとまだ寝ていた様で、どうやらアラームもセットしていたものの眠気が勝ってしまったようでマスターの方が先に起きちゃったよー?と言いながら揺すってみてもあとちょっとだけ…と言って一向に起きる気配が無いので一度部屋を出て顔を洗ったり歯を磨いたりしてもう一度見に行くとまだ寝ていたので寝顔をしばらく観察した後に頬をつついてみると焦点の合っていない瞳がこちらを見つめてきたので起きた?と聞くと意識が覚醒したのか飛び起きて
「寝坊しちゃいました…」
と言って落ち込んでいたものの、私が作った朝ごはんを食べて
「やっぱり朝はマスターが作ってくれた朝ごはんに限りますね!」
「私はふりかけちゃんが作ったご飯も食べてみたかったな〜」
「うっ…でも誰にでもミスはあるじゃないですか!マスターだってたまに朝寝坊してめちゃくちゃ焦ってるくせに!」
「まぁまぁそれは置いといて…今日は休みだけどどうする?何かしたいことある?」
「そうですね〜…じゃあマスターとお出かけしたいです!」
「じゃあそうしよっか!どこに行きたい?」
「新しい服を買いに行きたいです!」
「じゃあちょっと遠いけどデパート行こっか!」
「はい!」
そんな会話をして1日の予定を決めて、出かける準備をして出発し、電車に揺られること数十分、目的のデパートにたどり着いた。二人で洋服を見て、時折足を止めてこの服良いね等と言いながら店内をウロウロしていると、ふりかけちゃんが足を止めた。
「どうしたの?」
そう言って彼女の視線を辿ってみるとその先には彼女がかつてライブで披露した曲、グリーンライツ・セレナーデの衣装を彷彿とさせる洋服があった。
「その服が欲しいの?」
「いえ、別にそういうわけでは…」
「遠慮しなくていいよ!好きなの買って良いんだよ?」
「でも…」
「良いから良いから!」
「以前、マスター同じこと言ってレジで青ざめてたので…」
唐突に過去のやらかしを掘り返されて思わず足が止まった。以前も同じようなやり取りをした後にレジで金額を見て凍りついたことがあったのだ。
「だ、大丈夫…マスターもちゃんと貯金してるから…」
震えた声でそういうとふりかけちゃんも一応納得した様で、会計を済ませるためにレジへ向かい、思っていたより高い金額に内心怯えながら会計を済ませた。その後、様々な店を特に目的もなく見て歩いたり、喫茶店に入ったりして、帰宅するまでの間ずっと嬉しそうな様子で両手で大事そうに服の入った袋を抱えていたので喜んで貰えたのだろうか、などと思いながらソファに座っているとふりかけちゃんがこちらを向いて一言、
「ありがとう、マスター」
そう言った。
完全に不意打ちだったので自分の顔が赤くなっているのを何となく察していると
「もしかして、照れてるんですか?」
ニヤニヤしながら言ってきたので、恥ずかしさを堪えて
「ミクさんに喜んでもらえて良かったよ」
「さらっとそんなこと言わないでください…」
耳まで真っ赤に染めた彼女の頭を撫でてあげると満更でも無い様子でされるがままになっていたのでしばらく堪能していると恥ずかしさを堪えきれなくなったのか腕に頭突きをしてきたので手を止めると、そのまま膝の上に頭を置いてきたので
「ミ、ミクさん…?」
と問いかけるとしたり顔で
「仕返しです!足が痺れるまでは付き合ってもらいます!」
しばらくそのままでいるといつの間にかすーすーという寝息が聞こえてきた。頬を引っ張ってみても反応が無いので本当に寝てしまったようだ。
「仕方ないなぁ...」
そう呟いて彼女を起こさないようにしばらく静かにしていると30分程したところで目を覚ました。
「おはよ。もう遅いし晩御飯にしよっか!」

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