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なぜ「博」には点があるのに「専」には点が無いのか

2023.11.13に追記

こんにちは。

漢字といえば何を思い浮かべるでしょうか。

小学校のときの漢字テストでしょうか。

その時に、このような問題が出たとき、半分くらいの人はこのように思った経験があるでしょう。

「うーん。博っていうのは分かるんだけど、点があったっけな?」と。

僕もあります。

まぁ、見ての通り点はあるのですが、専は点がありません。

なぜなのでしょうか。


第一章 専は専、博は博ではない!?

早速ですが、専はもともと専ではありません。

僕の漢字系の記事ではお馴染み、旧字体が「専」にはあるためです。

「専」は元々「專」という漢字でした*。

ただ、「專」では、中部のパーツがややこしくなったものの、点の有無は関係ありませんね。

「博」も同じかというと、そうではなく、形声文字で「十」と「尃」から漢字ができています*。

また、「十」は多いという意味*です。そのため、幅広いという意味があるのですね。

そして、「尃」はどのような漢字なのかというと、「甫」と「寸」がくっついた形声文字*です。

ただ、「博」も形声文字*なので、「尃」は音として使われただけで、意味はあまり関係ありません。

ただ、気になるのは…

第二章 「専」と「尃」のなりたち

やはり、2つの漢字の成り立ちでしょう。

専(專)は象形文字*、つまり見えたものをそのまま模った文字です。

何を模っているのかというと、糸をまき受けている姿*だそうです。

*正確には「專」を経由

では、「尃」はというと「甫」と「寸」の形声文字です。

そして、「甫」はというと会意形声文字*です。

会意文字とは複数の漢字が組み合わさってできた漢字です。

ここでクイズです。「甫」は何と何が組み合わさってできたと思いますか?

終了!正解は「用」と「父」*です。

わかるかー。

「用」はまだしも、「父」ってどこを指しているのでしょうか。

*一番左の()内の漢字は(たぶん)存在しません。

目を歪ませれば見えなくもない…ですよね。

流石にこれでは納得いかないので、甲骨文字にしましょう。

*

うーん。足し算になっていませんね。では、時を進めて金文まで…じゃなくて、「甫」と「専」の上が似すぎていませんか?

点は単なる誤植なのでしょうか?

それはともかく、金文まで進めましょう。

*

おっ、やっと足し算が理解可能になりましたね。

では、誤植の件を含めて、篆文を見てみましょう。

第三章 篆文は共通点なし!?

時代は篆文の時代。

それぞれの漢字(「専」「尃」「甫」)の篆文を見てみましょう。

*

…「専」と「尃」の共通点が寸以外ありませんね…

篆文より先である隷書に進んでしまうと、もう今使っている漢字と非常に似ているものになってしまうので、篆文から隷書までの過程を見る必要があります。

第四章 理由

篆文から隷書までの過程を見る必要があります。と言ったものの、移行の過程を知る由もないため、推測するしかありません。

そこで、もう一度「専」「尃」「甫」の篆文を見ましょう。

*

この図では、「専」「尃」で一番異なっているのは一番上の交差している部分ですね。(「専」の中部の丸は「專」の虫のような部分を表しているものです。)

少し角度を変えれば殆ど同じく感じますが、この微妙な角度が点がつく原因では無いのでしょうか。

そもそも、用の篆文っておかしくないですか?

*非常に疑わしい

どのようにして上が繋がったのでしょう?

しかし、やはり篆文から隷書までの過程はわからないので、書きやすかったであろう、という推測しかできません。

この「欠けた『用』」が点ができた間接的な原因な気がしますが、僕の技量では到底わからないです。

では、「欠けた『用』」のことは一旦忘れておいて、下の図を見てください。

⚠想像図です。

このようになればそれなりに説明はつくんですけれど、事実はわかりません。

モヤモヤして終わってしまいましたが、何か新しいことが分かり次第、書き足します。

取り敢えず、今の結論としては、

「博」には点があるのに「専」には点が無いのは「父(手)」と「篆文と隷書の移行」のため

でした。

第五章? おまけ

結論を出してからですが、似たような字として「恵」や「穂」がありますよね。

これらはなぜ点が無いのでしょうか。

「穂」は「禾」と「恵」の会意文字*なので、「恵」だけ調べればいいわけですね。(やったー!)

「恵(惠)」は「叀」と「心」の会意文字*です。

そして、「叀」という文字はやはり糸巻きをかたどった漢字です。

「專」の手(寸)がなくなった漢字ということです。

参考文献* 小川環樹, 西田太一郎, 赤塚忠, 哲次阿辻, 武志釜谷, & 祐子木津 (Eds.). (2019). 角川新字源 (改訂新版3版). KADOKAWA.


2023.11.13追記

第六章 やっぱり誤字?

今まで色々なことを調べてみましたが、本と僕の力量では限界なので、他のウェブサイトを使って調べていきます。

https://zi.tools/という海外(台湾?)のウェブサイトには漢字の様々な読み、成り立ちなどが書いてあるためそちらを使います。

まずは「博」のなりたちから。

うん。読めません。

中国語っぽいのでGoogle翻訳を使います。

「チェイスも。 ESPNより。 ぐ、布も。 音も。」


どうやら、「說文解字」は漢文で書かれているようです。

ただ、読めません。

AIを使いましょう。

なるほど。

「十」は「𫭂(甲)」が変化したものという説もあります。

ともかく、肝心の「尃」が音符であることに変わりはありません。


続いて「尃」のなりたちです。

「布也。从寸。甫聲。」(布を意味する。寸から派生し、甫の音を持つ。)

と、ここで、上にとてもわかりやすい図があることに気づきました。

赤が意味・青が音を表しているそうです。

わかりやすい!

「博」の方はというと…

わかりやすい!!!

これで完結しますね。

ほうほう、「甫」は「屮」と「田」でできている、と。

前とは違いますね。

字の変化も掲載されています。

すると、唐の時代あたりから急に点が登場していますね。

やっぱり誤字なのでしょうか?


そういえば、「専」のなりたちは何でしょう?

この辞書によると、形声文字で、「叀」の音と「寸」の意味を持つそうです。

確かに、「叀」は「セン」と読むのであっていますね。

「」のなりたちは、「說文解字」によると、「小謹也。从幺省。从屮。屮、財見也。田象謹形。屮亦聲。凡叀之屬皆从叀。」
(小さく慎重であることを意味する。幺と省の要素から派生し、屮も含む。屮は財を見ることを意味し、田は慎重な形を象っている。屮はまた音も表す。叀に関連するすべてのものは叀から派生している。)

ただの象形文字ではなさそうです。

ただ、辞書によって漢字の扱いが異なるのは当たり前のことです。


誤字説を今のところは信じる必要がありそうです。

なんかは誤字説を推すために生まれたもののような感じがします。

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