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配信再リリース記念:早過ぎて遅すぎたPerfume!? ガールズシンセポップグループjellyfish TYOとは?(後編:2ndアルバム「jellyfish sensation」全曲レビュー)

 前回は、1998年リリースの1stアルバム「jellyfish」の全曲レビューでしたが、ある程度彼女達の音楽性やスタイルなどがおぼろげながら理解できたのではないかと思います。そこでふと思ったのですが、肝心のフロントウーマンの御三方をしっかり振り返っていなかったので、個人的な印象も含めて改めて紹介したいと思います。といいつつ、また公式より抜粋するわけですが・・・w

トモコ: メインボーカル&メインコンポーザー。歌謡曲とテクノポップに色濃く影響を受けた作風で、宅録により作曲・アレンジを手掛けた。歌謡曲職人に憧れ、アイドル歌手の作品に参加した経歴も。活動休止後はELEKTELやズンバコバヤシの作品にボーカルで参加、今回の活動復帰に至った。

ミエ: 多くの作品の作詞を手掛け、瑞々しい感性と豊かな言葉遣いでjellyfish TYOの世界観を形成。無垢な歌声で楽曲の女の子らしさを演出する一方、ライブではKORGのMS-20を操りクールなパフォーマンスを見せた。

サチコ: ミュージカルや有名テーマパークなどダンスエンターテイメント界出身の彼女は、jellyfish TYOでもダンス、ボーカル、ウクレレ、テルミン、パーカッションなど多彩なパフォーマンスでライブを華やかにする存在。

(出典:jellyfish TYO profile https://note.com/jellyfishtyo/n/ncec15009830d)

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jellyfishといえば、トモコさん(上記写真真ん中)。グループのサウンドアイコンとも言える彼女のウィスパーボイスと独特のエレガントなメロディラインを構築する作曲能力に、肌触りの良さを演出するアレンジ能力まで兼ね備える、どこから見てもセンターポジションのメインボーカルにして、個性的な面々をまとめ上げる気概も持った信念と行動力を持ち合わせたスーパーレディです。(お会いしましたが、めちゃくちゃいい人!)
 数多くの作詞を手掛けることでjellyfishの世界観をコントロールする影の功労者でありメンバーの中でも長身でスタイル抜群のクールビューティー、ミエさん(上記写真右)。上記のプロフィールにあるようにMS-20でノイズを撒き散らす胆力も兼ね備えており、グループの頭脳としてなくてはならない機能を果たしました。


 そしてグループきってのパフォーマー、サチコさん(上記写真左)。数多くの顔を持ち着ぐるみから独特のボイスによるコーラスから、テルミン、ドラム&パーカッション、そして本業ともいえるダンスに至るまで、主にライブにおいてクールでアンニュイになりがちなjellyfishを華やかに変身させる存在として個性的かつ不可欠な存在でした。

 そんな3名を中心に早稲田録芸研のOB達を中心としたクリエイター陣の切磋琢磨により生まれた良質なサウンドメイクにより、音源制作やテクノポップ&ニューウェーブバンドのミレニアムイベント「DRIVE TO 2000」への出演といった精力的なライブ活動をこなしていた1998年から2000年でしたが、その間にトモコさんは石崎智子として作編曲家活動へのチャレンジを始めます。1998年デビューの同期のテクノポップユニット「宇宙ヤング」のボーカル(後年歌人として名が知られることになる)笹公人を作詞に迎え、笹公人&石崎智子のコンビで何曲かの楽曲を手掛けています。


 2000年発売のRPGゲーム「砂のエンブレイス」のエンディングテーマである「魔女かもしれない」(歌:岡本ひかり)は哀愁トモコメロディが存分に活かされた名曲です。

 

 2001年には声優・徳永愛のアルバム「Missing Diamond」収録の「青い時代(とき)の神話」を提供。ガンダムの主題歌風を意識したというその哀愁のサビはまさにトモコメロディの真骨頂でした。

 時系列では少しはみ出てしまいましたが、そんな勢いに乗っていた2000年、jellyfishは順調に2ndアルバムをリリースすることになります。その名も「jellyfish sensation」。このいかにもムーブメントを巻き起こしてやるぞ!という信念を感じるタイトルのCDを、しつこくも大阪在住であったワタシはなかなか出会うのに苦労しまして、やっと見つけたのが梅田の阪神百貨店の中にあるCDショップ「BREEZE」でした。確かプノンペンモデルの2ndアルバム「PATCH WORK」とかと一緒に購入したと思います(組み合わせ・・・w)。
 で、やはり気になるのがジャケットなわけですが、これがなんと最もアップで写っているのがサチコさんじゃありませんか!そして裏面に写っているのがこれはjellyfish公式着ぐるみ? これはミンテルちゃんというらしくて、ライブではサチコさんが中の人となって演奏していたそうです。なお、ジャケットデザインは今を時めく装丁デザイナーの坂野公一。なんと今回のアルバムでも名曲の数々を生み出している増山龍太の世を忍ぶ仮の職場の元同僚だったことから、今回の起用に至ったということです。青春のノスタルジーを感じさせる素晴らしい表ジャケと、ミンテルちゃんのおかげで非現実感満載の裏ジャケのコントラストが面白いですね。

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あと、ミンテルちゃんって何かに似てるなあと思っていたのですが、これはなんというか、いわゆるアレですよ、Bang! Dreamのハロー、ハッピーワールド!のDJ、ミッシェルですよw 

実は20年近くも前に既にミッシェルの登場を予見しているとは・・・早過ぎたPerfumeならぬ早過ぎたミッシェルというべきでしょうか(だいぶ盛りましたw)。

 程よく脱線したところで、いよいよ2ndアルバム「jellyfish sensation」の全曲レビューに参りたいと思います。今回もCD全盛時代にふさわしい盛りだくさんの13曲です。2枚目にして格段にクオリティが向上した名曲揃いの名盤となっております。お楽しみ下さい。

◆「jellyfish sensation」

 (2000.5.12:happy new ear)
 http://reryo.blog98.fc2.com/blog-entry-397.html

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1.「jellyfish sensation」

 作詞:石垣三詠 作曲:石崎智子 編曲:増山龍太

 vocal・original version programming:石崎智子
 vocal・klaxon:山川佐智子
 chorus・KORG MS-20:石垣三詠
 programming:増山龍太
 produced by 増山龍太

 のっけから大騒ぎのオープニングナンバー。当時の勢いが感じられる疾走感溢れるダンスチューンですが、ポイントはなんといってもミエさんのMS-20のノイズ撒き散らしでしょう。とにかく延々と、延々と撒き散らして垂れ流します。その裏でこれもまた圧の強いスネアが効いたリズムトラックが支えます(増山氏お得意?のロングリバーブスネアも炸裂!)。中盤では「S・E・N・S・A・T・I・O・N」のボコーダー。これはYMOのかの有名なあの曲(T・E・C・H・N・O・P・O・L・I・S)の坂本ボイスの再構築だそうです。流石はとにかく東風を聴けと父親に叩き込まれた増山イズム全開ですね。そして忘れてはいけないトモコ&サチコのツインボーカル。ウ〜イェイイェイイェ〜♪のキラーフレーズを始めとしたGS風メロディのAメロで何事かと思いきや、Bメロの「アー」のサチココーラスで一気にjellyfishワールドに引き戻されます。この「アー」コーラスが抜群に良いです。この部分が彼女たちの手作り感、個性ですよね。賑やかなオリジナルアレンジを手がけたのはトモコさんですが、この楽曲ではミエさんもサチコさんも大活躍というところが、面白いのです。


2.「マーメイド」

 作詞:石垣三詠 作曲:石崎智子 編曲:ケンカツマタ
 コーラス編曲:石崎智子

 lead vocal・original version programming:石崎智子
 background vocal:石垣三詠
 background vocal:山川佐智子
 programming:ケンカツマタ
 produced by ケンカツマタ

 打って変わってウェットな質感で迫るロマンティックチューン。エレクトーンが活躍しそうなエレガントなキーボードプレイに無理やり乗っかってくるのはケンカツマタが操るサンプルボイス&ブレイクビーツ。当時はNAN Record主宰のヤタベシンイチとのモンドブレイクビーツユニットIDOL TAXIでテクノ界を賑わしていた彼は、前作ではジャケット写真やアートディレクション的な立場でしたが、本作ではアレンジにも参加しています。無理やりには乗っかっていますが、エレクトーン系のサウンドに絶妙にハマっていますので(特にスキャットとのマッチングが素晴らしい)、彼の起用は大成功と言えるでしょう。また、この楽曲はメロディが実に深みがあります。マイナーとメジャーを行き来する歌い始めから歌い終わりまで流れるように展開していきますので、聴けば聴くほど味が出てくるスルメのような楽曲ですね。


3.「bambi walk ーher incredible map」

 作詞:石垣三詠 作曲:イシガキアトム

 Rap & vocal:jellyfish
 rap direction・Prophet-5 bass・organ・sound assemblage contains elements from "Pussy Cat" by Idol Taxi (used courtesy of Nan Records)
:イシガキアトム(m.c.A・Tom)
 produced by イシガキアトム

 ライブで盛り上がれるような楽曲が多く収録されている本作において、まさかのラップに挑戦した新機軸の冒険ソング。クレジットにあるように、前曲のアレンジを手がけているケンカツマタのユニットIDOL TAXIの1stアルバム収録のミニマルモンド「Pussy Cat」を素材として(思いっきりリスペクトして)、シンセベースにスクラッチを駆使しながらイシガキアトムがHIP HOPならぬユル〜いHIP POPに仕上げています。

 3人がかわるがわる登場するラップもまさに絶妙な掛け合いで、ミエさんのおもちゃ箱をひっくり返したような歌詞を三者三様でライムする様子が楽しくて仕方ありません。頭の中を「ルーズソックス」という言葉がぐるぐる回って離れません。特に2周目「間違い電話の泣ける留守電〜♪」あたりのミエさんラップが可愛らしいですよね。サチコさんのスキップみたいにバック転決めた〜♪の爆発力も面白いし、いつもメインを張っているトモコさんがアンニュイで控えめなのもメリハリがついて正解でしょう。


4.「なつのうた」

 作詞・作曲・編曲:増山龍太 ストリングス編曲:三井ゆきこ

 vocal:石崎智子
 background vocal:石垣三詠
 background vocal:山川佐智子
 programming:増山龍太
 electric & acoustic guitars:増田秀生
 sampled bass:吉岡勲
 rap・additional lyrics:Matthew Forrest
 keyboards:三井ゆきこ
 produced by 増山龍太

 増山龍太が手掛けた夏の終わりをロマンティックに辿る美メロの名曲。まずは飯島真理1stアルバムの「ROSE」に登場するようなDX系エレピのイントロ一発でグッと引き込まれます。Aメロ(サビ)ではガリッとしたギターがリフを重ねる中、いつになくメロウなメロディでトモコさんがアンニュイな歌唱に徹しています。随所でテクノ的なSEフレーズを導入しています。基本Aメロ(サビ)→Bメロの繰り返しですが、定番の印象的なBメロのトニマン(Tony Mansfield)的ソナー音、幻想的な白玉パッドやAメロ(サビ)の歌い終わりのチープなシンセリフも四つ打ちのリズムを崩すことなく自然な入り方が巧みです。間奏ではアコギソロまで挿入してきてますますロマン度が高まりますが、やはりサビのシンセストリングスを加えることによる盛り上げ方が半端ではなくて、この辺りはキーボードと弦編曲の三井ゆきこの味付けが絶妙だったということでしょう。お気に入りは見事な転調後のラストのサビのコーラス「遠い夏は逝く〜♪」の(恐らく)ミエさんボイスですね。なんという透明感のあるストレートな声質でしょうか。「暗い冬は厭だ」「悲しい秋は厭だ」などのコーラスはトレモロっぽく震わせているのに、ここではスーッと入ってきます。蝉や波やスナップショットとかのエンディングは、しつこいと言われようがやはりこれなしでは終われないというか、夏への心残りを見事に表現仕切っていると思います。


5.「luv vibration 00」

 作詞:石垣三詠 作曲・編曲:イシガキアトム

 lead vocal・additional vocal arrangement:石崎智子
 background vocal:石垣三詠
 background vocal:山川佐智子
 programming・background vocal:イシガキアトム
 produced by イシガキアトム

 前作収録の「恋なんてくだらない」風の軽快なハウス調のダンサブルチューン。本作は歌詞もそうなのですが、しっとりウェットな世界観を表現するかのようにトモコさんのアンニュイな歌唱の楽曲が多いのですが、これもスピード感はあるもののそこはかとなく漂う寂寥感がたまりません。これもイカしたシンセベースが抜群に効いていますが、そのノリノリのテンポに乗りながらも、トモコさんとミエさん&サチコさんの合いの手コーラスの掛け合いはこの楽曲でもハマっています。


6.「Do you love me?」

 作詞・作曲・編曲:石崎智子

 lead vocal・programming:石崎智子
 background vocal・KORG MS-20:石垣三詠
 background vocal・theremin:山川佐智子
 produced by 石崎智子

 ますますアンニュイになっていくトモコさんですが、これはなかなか聴きどころの多いドラムンベース歌謡です。左右をふわふわと動き回る浮遊感のある白玉パッドが全体の空気感を形成し、一筋縄ではいかない女の子の気持ちを印象づけるかのようです。しかしサウンド面ではせわしないドラムンベースのリズムの上をMS-20による風の音ノイズとサチコさんのテルミンが電子ノイズが飛び回る、テクノポップユニットとしての本領発揮な一面も垣間見ることができます。


7.「満月の瞳」

 作詞:石垣三詠 作曲:清水太郎・石崎智子 編曲:清水太郎

 vocal:石崎智子
 vocal:石垣三詠
 programming:清水太郎
 produced by 清水太郎

 トモコさん&ミエさんの高校同級生コンビによる、清水太郎プロデュースのアブラカタブラなアラビアンテクノ歌謡。野暮ったさの残る歌メロから間奏に入ると細かく刻むシーケンスが入ってきて急に疾走感が出てくる部分がこの楽曲のポイントです。トモコさんによると、間奏部分のコーラスは既存の歌唱パートの切り貼りで組み立てられているということですが、全く違和感がなく流石に気づきませんでした。増山氏の坂本ボイス切り貼りといい、クリエイター陣の尋常でないこだわり仕事が各楽曲に散りばめられているところも、jellyfish楽曲の魅力なのです。


8.「égaré en les premier jours de l'été」

 作詞:石垣三詠 作曲・編曲:イシガキアトム

 chanteur:石垣三詠
 agogo de bois・castanettes・guiro:山川佐智子
 arrangement & traitement
 :イシガキアトム(Atom avec Swoon Électronique)
 produced by イシガキアトム

 三拍子ワルツのフレンチポップですが、この楽曲はミエさんソロなんですね。クレジットもフランス語を使用するこだわりぶりです。シンセ類はアトム氏が、パーカッション類はサチコさんがバックアップして、音色面や全体を包み込むリバーブ成分のおかげか、はたまた同じフレーズをミニマルに繰り返すためか、幻想的な世界に引きずり込まれていく感覚です。
 なお、この楽曲は2001年にリリースされた早瀬優香子の復活アルバム「Love your life」に「lost in early summer」というタイトルで収録されました。すなわち、「lost in early summer」はこの楽曲のカバーなんですね。

 こうして聴いてみるとやはり早瀬優香子の声はクセが凄い!(千鳥のノブ風に)


9.「jellyfish girl」

 作詞・作曲:石崎智子 編曲:ケンカツマタ
 コーラス編曲:石崎智子

 lead vocal・original version programming:石崎智子
 background vocal・tambourine:石垣三詠
 ukulele・maracas:山川佐智子
 programming:ケンカツマタ
 produced by ケンカツマタ

 ケンカツマタプロデュース楽曲その2。ここでも小品のような密室的ミディアムバラードに唐辛子をブッ込んでくるようなサンプリングの無理やり感が楽しいです。トモコさん曰く桑田佳祐風のいなたいメロディーで、トモコさんのキュートなウィスパー風ボーカルが効いた落ち着いた作風なのですが、カツマタ氏がIDOL TAXIよろしくサンプリング&スクラッチで大騒ぎを始めるので、全く気が抜けません。


10.「space☆gigolo」

 作詞:石垣三詠 作曲・編曲:石崎智子

 vocal:jellyfish
 programming:石崎智子
 vocal mix:増山龍太
 produced by 石崎智子

 ここから名曲が続きます。まずはテクノポップと銘打つグループの面目躍如なスペイシーサウンド全開のテクノ歌謡。ビチョビチョしたフレーズとピコピコしたフレーズの掛け合いにまずヤラレますし、コードワークも美しいPCMなピアノリフも王道、直線的なベースラインもまさにテクノで、そして何よりポップなメロディ、しかもトモコさん印の哀愁成分もサビで注入されているわけですから、良くないはずがありません。そして何と言ってもタイトル。「ジゴロ」なんて言葉久しぶりに耳にしました。当時でもそうだったのですから、現在ではもはや50代以上にしか伝わらない言葉からしれませんが、そこはあえて「ジゴロ」が面白い!また、ミエさんの歌詞の中で、「土星の輪の上 並んで座って アイスクリーム食べようよ」という部分、スゴく可愛らしくないですか?


11.「星の輝く夜に」

 作詞:石垣三詠 作曲・編曲:イシガキアトム

 lead vocal:石崎智子
 vocal:石垣三詠
 vocal on coda・rainstick・maracas・bongo・
 toy piano・"Mintel"performance:山川佐智子
 programming・vocoder・piano・Prophet-5:イシガキアトム
 produced by イシガキアトム

 そしてこれですよ。これが私が推すjellyfish最高の名曲。2000年に生まれた美しいエレクトリックバラードです。当時この楽曲を聴いて「スゴい楽曲を最後にもってきたなあ」と驚いたことを今でも思い出します。ギターループとエレガントなピアノによるイントロから、Aメロから何ともロマンティックなフレーズと、スペイシーなシンセが飛び交います。そしてサビのメロディの半音の上げ下げ具合が素晴らしい!しかもバラードなのに四つ打ち。こんなしっとりうっとりなメロディラインなのに、シーケンスによる程よい疾走感まで兼ね備えながら、キーボード弾きならではの柔らかいコードワーク&コーラスワークでじんわり俯瞰的に包み込むアトモスフィア・・・。全く非の打ち所がありません。この楽曲を生み出しただけでもイシガキアトムという名前は永遠にPOPS史に刻まれるべきなのですが・・。平成時代を揺るがす名曲爆誕といった感じで、当時はワタシだけがざわついていたのでした。というわけで、初めてjellyfishを聴く方にはまずこの名曲をオススメしたいです。


12.「snow white ("Secret Garden"Version)」

 作詞:石垣三詠 作曲・編曲:石崎智子

 vocal:渡辺倫子
 programming:石崎智子
 produced by 石崎智子・石垣三詠

 ここからはボーナストラック扱いということですが、まずはイントロダクション的なアナザーバージョンです。このような小品でも、チープなシンセサウンドで楽曲を装飾することを忘れてはいません。


13.「snow white
  ("Popmagic Meets Humming"Version)」

 作詞:石垣三詠 作曲・編曲:石崎智子

 vocal:渡辺倫子
 programming:石崎智子
 produced by 石崎智子・石垣三詠

 そしてこれがフルバージョンと言っても良い完全にトモコさん風スウィートなザ・テクノポップチューンです。なぜボーナストラックかというと、これは細川ふみえ(フーミン:当時業界を席巻した細川ふみえの渾名です。あらびき団優勝の奥歯ガタガタのコメディアンではありません)リスペクトにより作られた楽曲だからです。当時は小西康陽プロデュースによるテクノ歌謡「スキスキスー」でデビューしたグラビアアイドルの彼女ですが、トモコさんは恐らく彼女の可愛らしい声質に注目されたと思われます。

 今回のゲストボーカルである渡辺倫子さんも、まさにフーミンボイスのイミテーションとして起用されたということです。ちょっと語尾が跳ね上がる部分なんかは、まさにフーミンテイストですよね。そして肝心のサウンド面でもまずまさに雪が舞うかのようなじんわりした温かさをイメージさせる白玉シンセパッドが素晴らしいです。ピュンピュン音色もテクノポップマナーに忠実に準じています。まさにピュアでキュートなフレーバーを注ぎ込んだ渾身の名曲に仕上げられています。ボーナストラックとなっていますが、これが全く異物感がなくアルバムの本当のエンディングとして機能しているのは、やはりこの楽曲が純粋なテクノポップとしての名曲たる所以だからと思われるのです。


 上記のとおり紹介させていただきましたが、紛れもなくこの2ndアルバム「jellyfish sensation」は名盤にふさわしい完成度を誇っています。1stアルバムから遥かにクオリティも上がっていますので、是非1stアルバムを聴いた方にはその成長ぶりをじっくり堪能していただきたいと思います。

 さて、最後にその後のjellyfishについて少しばかり振り返りましょう。
 まず、前述しました早瀬優香子復活プロジェクトにより2001年にリリースされたアルバム「Love your life」には、ミエ&イシガキアトムの「lost in early summer」の他にも、トモコさん作編曲でシングルカットにもなった「sleepless」と、「雨、窓辺、声」の2曲が収録されています。

 そして2001年はもう1枚重要な作品、オムニバスアルバム「FUTURETRON SAMPLER」(リリース当時のjellyfishのインタビュー記事があります)があります。これは音楽ライター四方宏明が管理人のインターネット草創期の貴重な名テクノポップ紹介サイト「TECHNOPOP-ACADEMY」に集まったマニアやインディーズミュージシャン達が中心となり設立されたPOP ACADEMY RECORDSからリリースされた知る人ぞ知るアーティストが集められたオムニバスで、YMOのエロに振ったコピーバンド、Yセツ王や宇宙ヤング、Zunba Kobayashi(ex.宇宙ヤング、CYBORG 80's)、ELEKTELといったアーティストに加えて、jellyfishも「space⭐︎gigolo」の別ミックスと新曲「恋はジャスミン」(テクノポップの超名曲!)で参加しています(下記Mixcloudの19分過ぎからお聴きください)。


 また、同年、なんとクリエイターとしてjellyfishサウンドを支えてきたイシガキアトムと増山龍太が正式にメンバーとして参加。ここで遂に5人組となり、その後の3rdアルバムの制作やライブ活動に期待できると思っていたのですが・・・。

 2002年、コンピレーションアルバム「minty fresh japan compilation vol.3」に「every Color Is Beautiful」が収録されています。

ここで初めて、グループ名が "jellyfish TYO"となります。ここまであえて「TYO」を省略していたのはこのためです。この改名はいわゆるX JAPAN現象です。米国のパワーロック系バンド「jellyfish」が1990年にデビューし、シングル「Baby's Coming Back」で一躍日本でも有名となりました。そのおかげで彼女達日本のjellyfishも同名バンドということで混同され不遇をかこつ原因となったようですが、結成は偶然にも両バンド共1989年ということで、これはまさに偶然だったようです。そういう事情もあって、バンドも5人組となったことを機にjellyfish TYOと正式に改名となりました。ということで、今回の配信も「jellyfish TYO」名義となったということです。

 結局jellyfishとしての参加はZumba Kobayashi率いるサイバーテクノポップユニットCYBORG 80'sの1stアルバム「SWITCHED ON CYBORG」へのボーカル3名の参加を最後に自然消滅し、公式にはトモコさんの出産を機に活動休止ということになりましたが、その後もトモコさんは、Zunba Kobayashiと「ピンクのフラミンゴちゃん」の作曲者・永利裕志(とっしー)とのユニット、Cybershots!!や、ELEKTELのアルバム等でボーカル参加するなど、単発的には活動を目にしていました。

 それも近年さっぱり目にすることはなくなりましたが、このたびやっと子育ても落ち着いたということで、音楽活動を再開したということです。
 2019年はELEKTELのライブにゲストボーカル参加、そのライブで復活の狼煙を上げるjellyfish TYOのアウトテイク集「GOOD MORNING, jellyfish」を配布(未発表曲「夜間飛行」「Vacant Vacance」収録)。

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9月にはまさかの15年ぶりのPOP ACADEMY RECORDSオムニバス第2弾、80'sのニューウェーブな名曲のリメイク企画「FUTURETRON RECYCLER」にCybershots!!!としてMadonnaの「Into the Groove」のリメイクで参加、そのキュートでアンニュイな声質のボーカルで健在ぶりを見せつけます。

そして今回の配信にいたったというわけですね。

 というわけで、ざっとjellyfish TYOの歴史を全曲レビューを交えて振り返ってきたわけですが、当時は一ファンとしてただのリスナーであったワタシが本ブログのレビューをトモコさんに読んでいただいたことがきっかけで、この1年でまさかの活動再開&アルバム配信にたどり着くとは思いもしませんでしたし、その少しばかりのお手伝いをさせていただくことができたことは、本当に嬉しい限りです。女の子3人組として始まったこのグループは、メンバー自身も積極的に関わって作り上げた良質の楽曲を個性的なパフォーマンスで盛り上げたその活動スタイルは、PerfumeやTomato n' Pine、Negiccoといったアイドルらしからぬ良質の楽曲に支えられたガールズポップトリオの先鞭をつける存在であったと共に、スターボーやうしろ髪ひかれ隊、Qlairといった80年代〜90年代アイドルのテクノ歌謡、ガールポップ歌謡をも精神的に継承した、早すぎて遅すぎた存在として、貴重な立ち位置のグループであったことを、忘れないでいてほしいと思いまして、今回特集を組ませていただきました。皆様も是非、bandcampでお楽しみいただければと思います。
(注:なおSpotifyやApple music等のストリーミングサービスは、思い切ったサンプリング使用による著作権問題から断念したようです。90年代の同じようなサンプリングまみれの楽曲は同種の問題で配信されるのはなかなか難しそうですね。)


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