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「TECHNOLOGY POPS的」非英語圏オールタイムベストアルバム(参加してみました)前編(30位~21位)

 皆様、こちらではお久しぶりです。Twitterでは少ない頻度ですがつぶやいておりますし、テクノポップ耳(@technopop_mimi)のレビュアーとして、そして本家ブログ(reryo.blog98.fc2.com)の更新は行っておりますので通常運転しているわけですが、この別邸noteでは特別企画のアーカイブを残す場として機能させておりまして、思いついたら始めるというスタンスでございます。実はいくつかの企画は構想されており既に準備に取り掛かっているものもありますが、本業が忙しいのと予想以上に準備に時間がかかっているのと体力の衰え等々ありまして、なかなかこちらを起動するタイミングがつかめていないのが現状です。

 そこで、Twitter上ではタイミングよく𝑷𝒆𝒕𝒆𝒓さん(@zippu21)が「非英語圏オールタイムベストアルバム」なる壮大な企画を進められておりまして、これが1980年代の日本モノであると私の専門ですからおいそれとは乗れないですし(構想に数年かかりそうなので)、必ずしも専門とは言えなかった平成ベスト企画があれだけの膨大な時間がかかってしまった怖さもありまして、日本モノはなかなか難しいと思っていたところに(レイレイ・セフォーさん(@Rayray_safo)の「国内アニメソングベスト100」企画は喜んで乗りましたがw ※これもいずれはここで簡単に取り上げます)、気軽にノれそうな企画が流れ込んできましたので、場違いとは思いながら投票させていただいた次第です。

 非英語圏となれば、やはりワールドミュージック、または余り国籍に拘らないヘヴィメタルやプログレのようなロック系のジャンルやボーダーレスなジャズやクラシック、クラブやフロアを主戦場としたようなエレクトロやテクノ系のジャンル、クロスオーヴァーなイージーリスニング系等非常に幅広い音楽をそれぞれよく聴いておられる方がこぞって投票されると思いますし、音楽ライターやバイヤー、DJの方々はオールラウンダーとして、現在のようにサブスクで世界のあらゆる音楽にアクセス可能になった世代の方はマニア的なスペシャリストとして、深くディグされた作品をここぞとばかりに紹介する場として機能するでしょうから、そのラインナップは非常に多種多様なものになるかと思います。結局150名程度の我こそはという方々が投票されたようですので、ランキングというよりもラインナップが楽しみなところです。

 とかく私はといえば、このnoteをこれまで読んでいただいている方はご存知のように、日本のPOPS、比較的80年代〜90年代に特化し、さらにテクノポップやニューウェーブ周辺の電子楽器を効果的に使用したPOPSが主戦場ですから、海外モノに関しては英語圏・非英語圏問わず特定の浅瀬をお試し程度に這いずり回っている程度のものでして、ディグというものもしておりませんし、底の浅さは投票された方々の中でも1、2を争うのではないかと思いますが、いつもの便利な「TECHNOLOGY POPS的な視点から」の非英語圏オールタイムベストアルバムを30枚挙げさせていただきましたので、せっかくですから少しばかりの「がっつり」ではない「ふんわりした」解説をしてみたいと思います。専門外なので気楽なのです。なお、ここではいわゆるワールドミュージック的な作品は一切出てまいりませんので、そのあたりを期待されている(していないでしょうが)方は、別のマニアの方のレビューへ移動してください。それでは始めたいと思います。

30位:「Strange Life」 GAZNEVADA
    (イタリア:1988)

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1.「Sometimes (Somewhere, Someone)」
  Marco Bongiovanni/Ciro Pagano/Massimo Trevisi
2.「Strange Life」 Marco Bongiovanni/Ciro Pagano
3.「Thrill of the Night」 Marco Bongiovanni/Ciro Pagano/Massimo Trevisi
4.「Roses」 Marco Bongiovanni/Ciro Pagano
5.「Jimmy Boy」 Marco Bongiovanni/Ciro Pagano
6.「Sad Killer」 Marco Bongiovanni, Ciro Pagano & Alessandro Raffini
7.「Too Deep for Dealing」 Marco Bongiovanni/Ciro Pagano
8.「Bokassa」 Marco Bongiovanni, Ciro Pagano & Alessandro Raffini
9.「Growin' Up」 Marco Bongiovanni/Ciro Pagano

Producer:Guido Elmi
Vocals, Backing Vocals :Nicola Guiducci
Guitar, Backing Vocals :Ciro Pagano
Bass, Drums, Computer, Backing Vocals : Marco Bongiovanni

Vocals:Daniela Grifoni
Guitar,Percussion:Guido Elmi
Guitar:Maurizio Solieri
Guitar:Paolo Gianolio
Drums:Lele Melotti
Keyboards,Brass,Percussion,Backing Vocals,Arrangement:Rudy Trevisi
Computer, Sampler:Serse Mai
Backing Vocals :Antonella Pepe, Daniela Grifoni, David Serb, Elma Jones, Fawzia Salama, Frederick Johnson, Giulia X., Iscra Menarini, Natasha Write,
Mixed By  Mario Flores (A1, A2, B1〜B5), Maurizio Biancani (A3, A4)

 イタリアでは一定の人気を誇っていたシンセポップバンドであったGAZNEVADAですが、このバンドメンバーチェンジが多い上にメンバー自身がいくつもの名前を使い分けるものですから、なかなか正体が掴みにくいのです。一体誰が中心なのかもよくわからなかったのですが、1979年当初はベーシストであったChainsaw SallyがどうやらMarco Bongiovanniと名前を変えて最後まで楽曲面を支えていたようなので、彼が中心ということなのでしょう(Marco Nevadaとも名乗っているのでNevadaを冠しているということはバンドのシンボル的な存在なのかもしれません)。アルバムとしては5枚残していますが、1st「Gaznevada」(1979)はパンク、2nd「Sick Soundtrack」(1980)はアングラニューウェーブ、3rd「Psicopatico Party」(1983)で初めてシンセポップに移行します。恐らくこのアルバムが彼らのハイライトでして、最大のヒット曲「I.C. Love Affair」が収録されています。

 もうこの頃から既にギターのCiro Paganoの額の生え際が気になって仕方ありません・・・。この楽曲のヒットが認められたのか、翌84年には、イタリア国内におけるロサンゼルス五輪公式オリンピックテーマソング(?)として「Ticket To Los Angeles」がリリースされますが、実はこの楽曲が個人的にはGAZNEVADAの楽曲では最も気に入っております。コロッセオのステージで思いっきり当て振りで演奏(?)する彼らの勇姿がこちらです。

 見てください。この世界で最も忙しいGianni Cuoghiの立ちシモンズドラムを!そして相変わらずのモト冬樹ぶりを見せるCiro PaganoはRolandのMIDIギターコントローラーG-707を演奏し、Marco Bongiovanniに至ってはOberheim DMX(リズムマシン)を抱えて叩くのみ。当時のボーカルAlessandro RaffiniことBilly Bladeはボクシンググローブをはめながらの歌唱で、なんというか非常にお祭り気分を感じます。最後はみんな集まってエンヤコラサ、ドッコイサと言わんばかりに踊りながら終焉という、貴重な映像であると思います。

 この「Ticket To Los Angeles」が未収録の4thアルバム「Back To The Jungle」はポストニューウェーブらしくエレクトロファンク風味の作品となりましたが、ここでメインボーカルのBilly Bladeが脱退し、CiroとMarcoに新ボーカリストNicola Guiducciを迎えたトリオグループとして再編成され生まれた5thアルバムが1988年にリリースされます。それがこの「Strange Life」というわけですが、本作ではすっかり落ち着いてしまってダンサブルなエレポップAORなサウンドに変貌しています。しかしわかりやすいポップなメロディが健在であるのと、88年らしいタイトなスネアが主張していること、何よりも名曲「Jimmy Boy」ではラップに挑戦したりエモーショナルなギターソロも披露されるなど新境地へのチャレンジ精神を見せていることからも、音楽性の円熟ぶりが感じられる仕上がりということで、本作をギリギリランクインさせました。GAZNEVADAなら2ndか3rdだろうと思われるかもしれませんが、すべて削ぎ落とされてツルツルになったこのレイト80'sなサウンドも面白いのではないかと思いました。


29位:「Blue Planet」 Moskwa TV
    (西ドイツ:1987)

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1.「Moskwa Electronic」 Alexander Henninger/Andreas Tomalla
2.「Remember Russia」 John Watts
3.「Interface E」 Alexander Henninger 
4.「Submarine」 Axel D’Ham
5.「The Art Of Fahion」 Alexander Henninger/Jan Veil
6.「Interface F」 Alexander Henninger 
7.「Lenin」 Alexander Henninger 
8.「Tokyo Jam」 Axel D’Ham 
9.「The Shelter Of Love」 Alexander Henninger/Jan Veil 
10.「Interface G」 Alexander Henninger  
11.「Utopia」 Axel D’Ham 
12.「Brave New World」 Alexander Henninger/Jan Veil

Producer:Alexander Henninger, Westside
Vocals :Ion Javelin
all instruments :Alexander Henninger
all instruments :Talla 2XLC

bass:Ken Taylor
keyboards:Stephan Lupp
Mixed By Alexander Henninger

 ドイツなのにモスクワというややこしさを醸し出す、フランクフルト出身のテクノなグループ・Moskwa TVの2ndアルバムです。Andreas TomallaことTalla 2XLCAlexander Henninger、Ralf Henrich、Kurt Aderの4人のクリエイターユニットとしてスタートしたMoskwa TVは、ミドル80'sらしさ溢れるインストゥルメンタル・テクノポップを志向しており、1stアルバム「Dynamics & Discipline」1985)ではレゾナンスの効いたシンセベースと硬質な打ち込みドラムによるSF感覚溢れるテクノインストな楽曲が中心でした。しかしレコード会社の意向かどうかはわかりませんが、シングルカットされた「Generator 7/8」においてボーカリストIon Javelinをゲストに迎えたことが彼らの運命を一変させます。

 一躍代表曲となった「Generator 7/8」ですが、何と言いますかまあこれが劇薬でして、Ion Javelinのボーカル曲に味を占めたレコード会社は、Moskwa TVの次作は彼のボーカルをフィーチャーした歌モノ志向のアルバムを強く望むことになり、Talla 2XLCもその意向に同調すると、テクノインストを突き詰めるつもりであったRalf Henrich、Kurt Aderの2人は脱退し、プロデューサー兼エンジニア役のAlexander Henningerを含めたトリオ(実際にはJavelin&Tallaのデュオスタイル)に再編成され、2ndアルバム「Blue Planet」がリリースされたという経緯となります。青い惑星というくらいですから、今回は歌モノを織り交ぜながらもスペイシーな世界観で突き進むドイツらしい神経質なテクノポップで、やはり何と言ってもサンプラーによるレイト80's特有の加工されたスネアの音色が素晴らしいです。個人的に90年代以降のいわゆるTR-808/909系のリズムはどうもチープかつ軽くて肌に合わないのですが、この頃はまだPCM&サンプラーがリズム音色を席巻していた時代ですので、そのクッキリハッキリしたリズム構築は大好物なのです。そのようなわけで第29位にランクさせたというわけですね。
 やはりシングルカットされた「The Art of Fashion」が好みですね(下記の動画は12インチバージョン)。

 ところが、ますます歌モノに味を占めたのは良いのですが、いつのまにか最初はゲスト扱いであったIon Javelinの存在感が増して自身のバンドのように振る舞うようになってきたことに耐えられず、同年にはまずTalla 2XLCが脱退、次いでもはやグループに存在する意義もなくしたAlexander Henningerもグループを離れ、結果としてIon Javelinだけが残るというヤドカリ状態となったMoskwa TVは、Tokyoというロックバンドに在籍していたVolker Barberを相棒に迎え、3rdアルバム「Javelin」1991)をリリースすることになります。何と自分の名前をアルバムタイトルにするというこの厚顔無恥さ加減には、もはや敬服するほかありません(これがまた私好みのエレクトロポップなので困りますねw)しかし彼らは「Blue Planet」でも「Tokyo Jam」という楽曲が収録されていたり、この3rdアルバムでも「Life In Tokyo」(言わずと知れたJAPANのあの曲)のリメイクが入っていたりと、実は大の日本(東京)好き(?)であったりします。なのにバンド名はモスクワ。出身はドイツというややこしさ。そこが魅力なのです。


28位:「Legionare」 Michael Cretu
    (ルーマニア:1983)

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1.「Legionare」 Michael Cretu/Harald Steinhauer
2.「Total Normal」 Michael Cretu/Mario Killer
3.「Spiel Auf Zeit」 Michael Cretu/Mario Killer
4.「Frau Aus Stein」 Michael Cretu/Mario Killer
5.「Goldene Jahre」 Michael Cretu
6.「Zeitlose Reise」 Michael Cretu/Mario Killer
7.「Data-Alpha-4」 Michael Cretu/Mario Killer
8.「Kaeawanen」 Michael Cretu
9.「Der Planet Der Verlorenen Zeit」 Michael Cretu/Mario Killer

Producer:Michael Cretu
vocals・all instruments :Michael Cretu
guitar・sitar:Nilis Tuxen

bass:Ken Taylor
keyboards:Stephan Lupp
Mixed By Michael Cretu

 ルーマニアの首都・ブカレスト生まれのルーマニア×ドイツのハーフとして生まれたMihai Crețu(Michael Cretu)は、どちらかというと後のEnigmaとしての活動で名を挙げましたが、それ以前の80年代のソロシンガー活動でもしっかり実績を残しているアーティストです。ソロデビューは1978年リリースのシングル「Shadows Over My Head」です。YAMAHA CS-80を操るこのジャケットをご覧になってもわかるように、シンセサイザーを大胆に使用したポップソングをこの時代から志向している先進性がありました。

 具志堅用高ばりのパンチパーマ風カットとあまりにデカすぎるメガネ、そして口髭がトレードマークであったMichael Cretuでしたが、当初からシンセポップで食っていく意志を固めていたらしく、1979年には1stアルバム「Moon, Light & Flowers」をリリース、その後何故か3年間沈黙を保ちますが、空前のテクノポップブームを尻目にコツコツとレコーディングに励んだCretuは、1983年に待望の2ndアルバムである「Legionare」をリリースすることになります。これがほぼ自身のみで作り上げた孤高のシンセポップ作品でして、このストイックな制作スタイルとボーカリストとしてのアピール、そしてどこかヨーロピアン演歌っぽいメロディライン(東欧には得てしてこういうスタイルの楽曲が多い。しかし面白い。)が見事に融合したアルバムであると感じています。まだまだブレイク前夜の作品ですが、将来が予見できるクオリティということで、第28位とさせていただきました。

 ズンダカダッタ、ズンダカダ♪ このリズムは英米では出せないですよねw

 しかし彼の快進撃は突然やってまいります。1985年のシングル、その名も「Samurai」です。いきなりの日本推しなわけですが、下手にジャパネスクな音色を使うわけでなく、いなたいサックスや熱唱型で歌われるバタ臭いサビのメロディが日本の歌謡曲(しかし実にドラムが硬質でオケヒットも大胆に鳴らします)を想起させるという点で、彼がインスピレーションする「Samurai」ということなのでしょう。日本でもよく知られるこの楽曲、ギリシャで1位、スイスで2位、オーストリアで3位、スウェーデンで4位、イタリアで4位と実に5カ国でベスト10入りする第ヒット曲となったのでした(非英語圏オールタイムベストソングとかがあるのなら、これが入るかもしれませんねw)。

 そうなると当然3rdアルバムということで「Die Chinesische Mauer」(英語タイトルで「The Invisible Man」)がリリースされることになりますが、このアルバムは何というか、地味でした(「Mikado」というインスト曲も収録されています。どこまで日本が好きなんでしょう。)。
 その後は奥さんとなるSandraや、Hubert Kahらのプロデュース業や、いくつかのシングルリリースがあって、1988年のEnigmaの結成に至るというわけです。Enigmaに関してはもう他のマニアの方が説明してくれるでしょう。


27位:「Баланс」 Кофе
    (ソビエト連邦:1986)

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1.「Старт (Intro)」 Кофе
2.「Монумент (Monument)」 Кофе
3.「Принцесса (Princess)」 Кофе
4.「Зеро (Zero)」」 Кофе
5.「Компьютер (Computer)」 Кофе
6.「Буги-Шок (Boogie-Shock)」 Кофе
7.「Аристократка (Noble)」 Кофе
8.「Ошибка №135 (Mistake #135)」 Кофе
9.「Ломаные Пляски (Broken Dance)」 Кофе
10.「Эфир 2101 (Ether 2101)」 Кофе
11.「Баланс (Balance)」 Кофе
12.「Финиш (Coda)」 Кофе

Producer:Alexei Visnja
vocals・keyboards:Grigory Kobeshavidze
guitar・vocals:Edward Nesterenko
guitar・keyboards・sax:Igor Petrov
bass・vocals:Igor Kopylov
bass・vocals:Stanislav Tishakov
drums:Alexander Senin

Mixed By Alexei Visnja

 ソビエト連邦時代よりトランスジェンダーの名プロデューサー・Alexei Visnjaの庇護のもと、レニングラードのVisnjaのスタジオにて1stアルバム「Балет(BALLET)(1984)を制作した4人組のニューロマンティクス系バンドКофе。Coffeeという名のまだまだ粗さが残るこのバンドには、Телевизор(Television)というバンドに在籍していた2人のイゴール、Igor PetrovとIgor Kopylovが加入し、6人の大所帯となると、ここからPoliceやDuran Duran、Ultravox等に影響を受けたエレクトリック系ニューウェーブ路線をひた走ることとなります。1986年に生まれた2ndアルバム「Баланс (Balance)」は、リズムボックスやシンセサイザーを積極的に使用しつつ、ベースラインはニューロマンティクス由来の不気味さを漂わせることで、独特の湿っぽさといいますか、ネットリ感を味わえる作風となっています。そんなマニア受けしそうなКофеですが、このアルバムからヒット曲が生まれています。アルバム収録曲の「Зеро (Zero)」」はテレビ番組でも頻繁に放映されるなどレニングラードで人気を博し、1994年にはNatalia Sorokinaというシンガーがこの楽曲をカバー、現在でもYou Tube等でロシア人版「歌ってみた」でもたびたび取り上げられるなど、しっかりロシア人のDNAに刻み込まれた楽曲となっています。

 当時学生バンドであったКофеは、結局卒業後すぐに音楽性の違いから解散してしまいますが、前述の「Зеро (Zero)」」の楽曲力は根強いものがあり、彼らのアルバムも何度かの再発を経ると、2019年にまさかのGrigory KobeshavidzeStanislav TishakovAlexander Seninの3名にEugene Lazarenkoが加わった4名で再結成を果たしました。2020年には「Барон」「Невеста」「Изолятор」の3曲の新曲を発表するなど、精力的に活動を開始しています。サウンド的には今どきのエレクトロポップ&ロックに挑戦しています(流石に歳を重ねましたね・・)。


26位:「Figures」 Absolute Body Control
    (ベルギー:1983)

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1.「The Man I Wanna Be」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem
2.「Automatic I」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem
3.「Love At First Sight」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem
4.「Melting Away」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem
5.「5 Minutes」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem
6.「Figures」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem
7.「Give Me Your Hands」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem
8.「Terminus」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem
9.「Automatic II」 Dirk Ivens/Eric Van Wonterghem

Producer:Dirk Ivens・Eric Van Wonterghem
synthesizer・voice:Dirk Ivens
synthesizers:Eric Van Wonterghem

Mixed By Dirk Ivens・Eric Van Wonterghem

 EBM(エレクトロニック・ボディ・ミュージック)大国であるベルギーにおいて、早くからアシッドなシンセのミニマリズムを追求していたユニットがこのAbsolute Body Controlです。Dirk Ivensを中心としたトリオ編成であった彼らは地元で話題となったシングル「Is There An Exit?」でその名を知られることになりますが、その活動は至ってアンダーグラウンドであり、その名もBody Recordsという自主レーベルから次々とカセットテープ媒体によるアルバムをリリースしていきます。彼らの「Absolute Body Control」(1981)、「Numbers」(1982)に続く3本目のカセットアルバムがこの「Figures」(1983)です(この頃には相棒にEric Van Wonterghemを迎え、完全にデュオスタイルとなりました)。

 なんといっても本作において注目すべきはタイトルチューンである「Figures」でしょう。レゾナンスをいじられながらアシッドシーケンスが疾走する圧巻のイントロは当時はシンセポップの範疇に入れられていたと思いますが、このベースラインは後年にはEBMの基本ベースラインとして換骨奪胎され、同国におけるEBMマスターFRONT242らに受け継がれていくことを考えますと、いち早くEBM&インダストリアル(はたまたアシッドテクノにまで)を志向した先見性の塊のようなグループであったと言えるのではないでしょうか。

 現にDirk Ivensはその後次々とEBMグループに関係していくことになります。1984年にはKlinikを結成、90年代からはDiveやSonarといったEBMユニットで活動していくことになりましたので、必然的にAbsolute Body Controlは活動停止となりましたが、2010年に転機が訪れます。ベルギーのエレクトロニクスグループのコンピレーションである「Cold Wave and Minimal Electronics Vol.1」がリリースされると、オープニングナンバーに「Figures」が収録され話題を呼び、2011年にはアルバム「Shattered Illusion」をリリースして、その全く変わらない音数の少ないアシッドな音楽性を披露し健在ぶりをアピールすると、本年2021年にはミニアルバム「A New Dawn」をリリース、親父の貫禄を見せつける形でしぶとく活動中です。


25位:「STARTER」 STARTER
    (スイス:1981)

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1.「Lunapark」 Jet Harbour
2.「Is This Love?」 Francis Foss/Jet Harbour/Stephan Eicher
3.「Minijupe」 Francis Foss
4.「Baby」 Francis Foss
5.「Plastic」 Francis Foss
6.「Tanger」 Francis Foss/Jet Harbour/Stephan Eicher
7.「Version 1」 Jet Harbour
8.「Tarzan And Jane」 Francis Foss
9.「Machinedrum」 Jet Harbour
10.「Part Of You」 Francis Foss/Jet Harbour

Producer:Peter J. MacTaggart
synthesizer・vocals:Francis Foss
guitar・synthesizer・computer programming:Jet Harbour
sax・synthesizer:Claudine Chirac

Mixed By Peter J. MacTaggart

 世界的な空前のテクノポップブームに乗ってスイスの首都ベルンで結成されたSTARTERの1stアルバムは、いかにもパンク&ニューウェーブから流れてきたような音数の少ないスッカスカのサウンドですが、大胆にも全編リズムボックスを利用したリズム隊に多彩な音色を駆使したアナログシンセサイザーのフレーズは、どこかJohn Foxxの初ソロアルバム「Metamatic」風味すら感じさせる潔さでした。しかしあの語尾下がりボイスにはならないところが非英語圏ということで(しかしながらほとんど英語で歌っているわけですが・・)、ボーカルのFrancis Fossは実に躍動的で、何でそんなに動きたがるのかと突っ込みたくなるくらいに操り人形みたいなせわしない振り付けで不安定な音程と共に歌い上げます。

 向かって左側でKORG MS-20を操るのが当時のFossの相棒、写真家でもあるJet Harbour。右側でRolandのシンセを演奏するのが紅一点のサックス奏者でもあるClaudine Chiracの3人組。所狭しの一畳ダンスをかますFossと、革ジャンと野暮ったい青ヒゲのHarbour、そしてヘアバンドにツルッツルの肌が素敵なChiracという好対照な3人が織りなすシンプルイズベストなどこか牧歌的なテクノポップは、今思い起こせば実にアルプスっぽいとも言えるのではないでしょうか。この映像の「Lunapark」「Minijupe」はこのアルバムのベストトラックと言えなくもないですが、個人的に気に入っているのはリズムボックスだけで1曲作ってしまったその名も「Machinedrum」と最後のシャウトへのエコーのかかり具合が絶妙な最もロックなラストナンバー(Chiracのサックスも聴ける)「Part Of You」です。

 さて、このデビューアルバム以降のSTARTERですが、いかにも人気が出そうであったClaudine Chiracはほどなく脱退し、ニューウェーブサックス奏者としてソロに転向、「Nautilus」「Alle Meine Entelein」の2枚のシングルを残しています。特に完全にアホの子な不安定ボーカルを披露する「Alle Meine Entelein」はSTARTER時代の面影はありません。

 残されたSTARTERはというと、なぜか4年の沈黙の後、1985年にシングル「Victim」をリリースしますが、この頃にはトレンドに乗ってダンサブルなエレポップに転身していました。鼻から抜けたような声のボーカルは健在でした。

その後「Night By Night」をもってJet Harbourは脱退、Fossは相棒をR. R. Kellerに交代し1987年に「...'Cause I Love You」(イタロディスコ〜ユーロビート化:ちょっとカッコイイ)と立て続けにエレポップ路線のシングルをリリースしていきますが、もはや初期の独特のスッカスカの味わいは薄れてしまいました。このスッカスカ具合に引っ掛かりがありましたのとパフォーマンスにインパクトがありましたので、第25位ということになりました。



24位:「Strangers In The Night」 Peter Baumann
    (西ドイツ:1983)

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1.「Strangers In The Night」
  Bert Kaempfert/Charles Singleton/Eddie Snyder
2.「Metro Man」 Eli Holland/Peter Baumann
3.「King Of The Jungle」
  Eli Holland/Larry Gottlieb/Marc Blatte/Peter Baumann
4.「Be Mine」 Eli Holland/Peter Baumann
5.「Time Machine」 Chris Ianuzzi/Peter Baumann/Eli Holland
6.「Taxi」 Larry Gottlieb/Marc Blatte/Peter Baumann
7.「Cash」 Peter Baumann
8.「Glass House」 Eli Holland/Peter Baumann
9.「Ground Zero」 Eli Holland/Larry Gottlieb/Marc Blatte/Peter Baumann
10.「Welcome」 Peter Baumann

Producer:Peter Baumann・Robert Clifford
backing vocals・synthesizer【16 Voice Computer Synthesizer・
Polymoog・ Moog Source・PPG 360 Wave Computer・
Yamaha Synthesizer】・piano:Peter Baumann
lead Vocals・harmony Vocals:Eli Holland
guitar:Ritchie Fliegler
drums【Simmons】:Rich Teeter
synthesizer【Prophet5・Polymoog・Roland Vocoder Plus】:Bruce Brody

Mixed By Robert Clifford

Peter Baumannといえば言わずと知れたクラウト・ロックの至宝でありニューエイジ&アンビエントミュージックの祖先ともいえるTangerine Dreamのオリジナルメンバーとして、1970年代に大活躍したドイツのシンセサイザー奏者です。1971年の結成から77年までTangerine Dreamに在籍し、離脱後はソロに転向、「Romance 76」(1976)、「Trans Harmonic Nights」(1979)の2枚のアルバムはTangerine路線の延長線上にある優れたシンセサイザーインストゥルメンタル作品として一定の評価を得ていました。しかしここからが彼の面白いところで、80年代に入ってテクノポップブームに当てられたのか、若気の至りというには歳を取りすぎているようにも思えますし、魔が差したとしか思えないのですが、いきなり歌モノニューウェーブに方向転換し、3rdアルバム「Repeat Repeat」では決して上手くはない歌を自身で歌いながらフロントに立つという漢気を見せることになります。

 ドイツ人だからかわかりませんが、顔が怖いですw
 テーマが「Repeat」だからかわかりませんが、延々とリピーリピー♪と歌い続けますので、メロディとして弱かったのが効いてしまい、また従来のイメージからリスナーがなかなか払拭できず戸惑いを覚えてしまったがために、この突然の路線変更は当時はなかなか受け入れられなかったようでした。しかしこの3rdアルバムを聴いてみますと、随所でBaumannらしいシンセフレーズを忍ばせているので、どうしてもそれらを楽しみにしてしまうため、まあタチが悪いったらありゃしないわけです。そんなこんなで1983年には飽きもせず歌モノ路線第2弾のアルバムを制作していくわけですが、先行シングルカットとなったのが、あのFrank Sinatraの名曲「Strangers In The Night」のカバーです。

 この美しいメロディとフルオーケストレーションの名曲がこんな感じにリメイクされました。

 完全にSF映画みたいになっちゃってるじゃないですか。あれ?こんな曲だったっけ?というくらい変わってしまっているのですが、これは秀逸なリメイクであると思います。チープと思われるかもしれませんが、そこが良いのです。途中からはBaumann面目躍如の素晴らしいシンセサイザーソロが炸裂しますし。ところでやけにBaumannのルックスが変わったなあと思っていたら、歌を歌っているのはEli Hollandでした。そう、Baumannは前作の評判を気にしたのか潔く歌からは身を引いて、このアルバムではバッキングに徹しているのです。こうなると彼は強いです。まあメロディは他人に任せているとはいえお世辞にも非凡とは言えませんが、PPG 360 Wave Computerというレアなシンセサイザー(PPG WAVE 2.0以前の機種ですね。Tangerine Dreamがよく使用していました。)を駆使して「Strangers In The Night」や「Welcome」の間奏で必要以上に長くソロを弾きまくるBaumannこそが本来の姿と言えるのではと思っています。「Strangers In The Night」のリメイクからコンセプトを積み上げたようなアルバムですが、近未来感も出てシンセサウンドもチープながらも充実、ここまで全面的にシモンズを叩きまくっている作品も珍しく、80年代ならではのシンセポップ作品ということで第24位です。


23位:「Suspence」 Azul Y Negro
    (スペイン:1984)

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1.「Suspense」 Carlos García Vaso/Joaquin Montoya
2.「Funky Punky Girl」 Carlos García Vaso/Marianne Forrest
3.「Sunny Day」 Joaquin Montoya/Julian Ruiz/Marianne Forrest
4.「Jibaro」 Carlos García Vaso
5.「Herzanfall (Infarto)」 Joaquin Montoya/Julian Ruiz/Marianne Forrest
6.「Hitchcock Makes Me Happy」
  Joaquin Montoya/Julian Ruiz/Marianne Forrest
7.「Es Hora De Bailar」 Carlos García Vaso/Marianne Forrest
8.「El Hombre Lobo」 Joaquin Montoya/Julian Ruiz/Marianne Forrest
9.「Agua De Luna」 Carlos García Vaso

Producer:Julian Ruiz
performance(synthesizers):Carlos García Vaso
performance(synthesizers・vocals):Joaquin Montoya

Mixed By Luis Fernández Soria

 人呼んで「スペインのYMO」と称されるテクノポップデュオ・Azul Y Negro。常にカメラ目線で金髪のコワモテなCarlos García Vasoと、人の良さそうな髭面でいつもラフな格好の研究者肌なJoaquin Montoyaという対照的な2人が、ステージ一面に多数のシンセサイザーを並べて弾きまくって歌うという、インストグループっぽいのですが結構歌う場面も多い歌モノグループなのです。アルバム「La Edad De Los Colores」(1981)でデビューすると、1982年の3rdシングル「Me Estoy Volviendo Loco」が本国でスマッシュヒットとなりその名が知られるようになります。

 あれ?この当時はVasoがラフなジャンパー(しかも茶髪剃り込み)でMontoyaがYシャツにネクタイ(ピン留めしてない)ですね。まだまだ初々しい感じの頃です。
 で、2ndアルバム「La Noche」(1982)がリリースされる頃には、すっかりテクノポップに染まってしまいまして、「Technovision」というあからさまなタイトルや「Fu-Man-Chu」なんていう高橋幸宏の歌い方みたいなタイトルの楽曲もあったりして、なかなかの傑作に仕上がっています。リードチューン「Con Los Dedos De Una Mano」の能天気なフレーズはこのアルバムのハイライトと言えます。

 ここに来てVasoの鬱陶しいキャラクターが表面化してきましたw 何でいつもこんなに余裕がないんでしょうか?
 結局「Me Estoy Volviendo Loco」がヒットしたことで、Azul Y Negroは3枚目にしてベストアルバムがリリースされることになります。3rdアルバム「DIGITAL」(1983:早くもスペイン語をやめました)は、1stと2ndの編集盤という扱いですが、入門編としては最適でしょう。という一区切りがありまして、翌84年にリリースされたのが4thアルバム「Suspence」です。本作はそれまでの集大成的な「DIGITAL」とその後の高価なサンプラー&シンセサイザーを豪奢に使い尽くした「Mercado Común」(1985)、「Babel」(1986)までの過渡期的なアルバムで、ゴリゴリになり過ぎず、しかしながらニューロマ&ニューウェーブ風味も取り入れた新機軸のバランスが上手くとれているサウンドに仕上がっていると思います。フェイバリットはキャッチーで明るいメロディと美しいシンセブラス&高速シーケンスが魅力の「Hitchcock Makes Me Happy」、そして荒々しいギミックに熱いボーカル&コクのあるベースライン、そしておもむろに飛び出すドラムマシンの連打が素晴らしい「El Hombre Lobo」です。

 もうVaso大好きw とにかく顔芸とタメがすごいw
 これはTV番組用のパフォーマンスのようですが、ちなみに別バージョンもありまして、こちらは2人でドラマ仕立てです。演技派ですね。

ちょっと!後ろのドラムの人のクセがスゴい!w
正直に申しまして、この楽曲とパフォーマンスで第23位に選びました。スペイン侮りがたしです。楽しい!


22位:「Всё, Что Ты Хочешь!!!」 Технология
    (ソビエト連邦:1991)

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1.「Нажми На Кнопку (Press the button)」 Roman Ryabtsev
2.「Всё, Что Ты Хочешь (Anything You Want)」
  Leonid Velichkovsky/Технология
3.「Странные Танцы (Strange Dances)」 Roman Ryabtsev
4.「Холодный След (Cold Trail)」 Leonid Velichkovsky/Технология
5.「CТ-112」 Leonid Velichkovsky/Roman Ryabtsev
6.「Один (One)」 Leonid Velichkovsky/Дмитрий Тризна
7.「Set Me Free」 Roman Ryabtsev
8.「Песни Ни О Чём (Songs About Nothing)」 Roman Ryabtsev
9.「Шутник (Joker)」 Leonid Velichkovsky/Roman Ryabtsev
10.「Полчаса (Half an hour)」 Roman Ryabtsev

Producer:Yuri Aizenshpis
vocals:Vladimir Nechitailo
keyboards・vocals・computer・guitar:Roman Ryabtsev
keyboards・computer・backing vocals:Leonid Velichkovsky
keyboards・percussion:Andrey Kokhaev

guitar:Alexander Vengerov
Mixed By Alexander Efimov・Alexey Tribunsky・Vadim Fishman・Vsevolod Ustinov

 やはりソ連(ロシア)はテルミン博士を生んだ国ですから電子楽器を使用した音楽が好きなんですよ。その気になれば自国でシンセサイザーも作ってしまいますしね。Polivoks(ソ連版Moogと呼ばれています)とか。なので、そういったエレクトロニクスなジャンルには敏感な国ということと、元来のダークウェイヴ志向の国民性が関係しているのかどうかはわかりませんが、Depeche Modeの楽曲はどうにもこうにもロシア人の心の琴線に触れるみたいで、80年代後半にそっくりそのままの4人組グループが現れました。Биоконструктор(Bioconstructor:ビオコンストルクトル)と名乗るこのデペッシュもどきのバンドについては、実はもう少し上位にランクしておりますので後ほど取り上げますが、90年代に突入した途端に声はDave Gahanなのにルックスが野暮ったいボーカリストAlexander Yakovlevを残して、他の3名(Andrey Kokhaev、Roman Ryabtsev、Leonid Velichkovsky)がボーカリストにБиоконструкторのテクニカルサポートとして裏方を務めていたVladimir Nechitailoを抜擢し、新バンドТехнология(テフノロギヤ)を結成することになります。Technologyを意味するこのバンドですが、手始めとして1stアルバム「Всё, Что Ты Хочешь!!!」をリリースすることになり、そのオープニングナンバーとして流れてきたのがこの彼らの代表曲となるこの楽曲、「Нажми На Кнопку (Press the button)」 です。

 Depeche Modeやないか!w
 そう、別バンドになってもやってることは変わらないという、どこまでDepeche Mode好きなのかというТехнологияなわけですが、いなたいギターのフレーズやインダストリアルなSE、レゾナンスの効いたシンセベースの音作り、リズムパターン、全てが「Violator」の音。もうここまで来ると感心するしかありません。まあメロディはロシアン歌謡風味満載ですが・・・。まあファッションや髪型まで似せてくるそのリスペクトぶりは本当に微笑ましいのですが、90年代が主戦場ということで次第に90年代らしいキックの効いたリズムで疾走感が増していきます。

 しかし彼らはなかなかの人気バンドに成長いたしまして、その後「Рано Или Поздно」(1993)、「Это Война」(1996)とアルバムを制作した後、一旦活動休止するも復活、現在もなお活動し続けている長寿バンドなのです。長寿バンドなのですが、実はボーカルのNechitailo以外のБиоконструктор組の3人は既に脱退しておりまして、若手2人を従えてТехнологияの名前を繋いています。

ルックスのDepeche風味はさすがに後退いたしましたね。


21位:「VISITORS」 VISITORS
    (フランス:1981)

画像10

1.「V-I-S-I-T-O-R-S '81」
  Bernard Lignac/Claude Lemoine/Jean-Pierre Massiera
2.「Everybody Now!」 Bernard Lignac/Bernard Torelli/Marc Attali
3.「A-E-I-E-O」 Bernard Lignac/Bernard Torelli/Patrick Despagne
4.「Reveille Toi-Svegliati-Get Up!」
  Bernard Lignac/Bernard Torelli/Guy Battarel/Jean-Pierre Massiera
5.「Mental Slavery」
  Bernard Lignac/Jean-Pierre Massiera/Marc Attali/Naceur Mekkaoui
6.「Joyo Can You Hear (Part 1)」 Guy Battarel/Jean-Pierre Massiera
7.「Joyo Can You Hear (Part 2)」
  Bernard Lignac/Guy Battarel/Marc Attali/Naceur Mekkaoui
8.「Don't Squeeze!」 Bernard Lignac/Guy Battarel/Naceur Mekkaoui
9.「Try」 Bernard Lignac/Marc Attali

Producer:Claude Lemoine・Jean-Pierre Massiera
vocals:Bernard Lignac
guitar:Patrice Helleringer
bass:Rosaire Riccobono
drums:Donald Rieubon
keyboards:Zeus B. Held

vocals:Patrick Attali
vocals:Jessy Joyce
Mixed By Jean-Pierre Massiera・Pierre Bucco・Thierry Rogen

 フランスといえばファッショナブルでオシャレな街、Serge GainsbourgやJane Birkin、Clémentineらのフレンチポップやシャンソンを思い浮かべる方も多いと思いますし、古くは新古典主義のClaude DebussyやMaurice Ravel 、Erik Satie等ののロマンティックなクラシック音楽家、新しいところではやはりDaft Punkの印象が強いと思われますが、個人的にはフランス人はマッドなアーティストの宝庫というイメージなのです。それもこれもJean-Pierre Massieraが悪いのですが、1970年代から活躍する風変わりなプロデューサー兼エンジニアの彼は、サイケデリックロック、コズミックディスコ&スペースロックの申し子として、常に怪しげでマニアックな作品を手掛け続けてきました。このVISITORSも彼の怪しい仕事の1つで、1974年に宇宙人ジャケも麗しい「VISITORS」というアルバムをリリースしていますが、こちらはサウンドというよりはパフォーマンス(ボイスであったりコーラスであったり)で宇宙観を醸し出していた作品で、Massiera自らボーカルで参加する大所帯といいますか名うてのミュージシャンを寄せ集めで作られた企画盤という風情でした。

 そんな一発屋と思われたVISITORSでしたが、何故か80年代に入ってから蘇ります。Jean-Pierre Massieraはフランス出身ながらイタリアやロシアでウケていた銀塗りスキンヘッドの宇宙人ルックスなスペースロックバンドROCKETSのプロデューサーであったClaude Lemoineと意気投合、このVISITORSプロジェクトをさらにコンセプチュアルなエレクトロスペースロック仕様に進化させ、1981年に再びセルフタイトルによるアルバム「VISITORS」をリリースします(こちらが第21位の作品です)。セルフタイトルを2度続けるバンドなんて初めて見ましたw
 この第2期VISITORSは、5人組のノーマルなバンドスタイルですが、全員が白服コスチューム(しかも股間に三角の股張りが付いている恥ずかしいユニフォーム)を身に纏い、振り付けはカクカク、しかし個性はバラバラ、ボーカルのBernard Lignacは声と顔を歪めながらおどろおどろしく呪詛のように歌い、イケメンギタリストのPatrice Helleringerは妙な美意識を捨てきれず、ベースのRosaire Riccobono(現在はROCKETSのメンバーとして活動)は濃いルックスながら最も躍動感のある体の柔らかさを見せ、60年代初頭から活躍するベテランドラマーのDonald Rieubonは何故かメインの歌い手としてオプティミズムなスティックさばきを披露、そしてOberheim 4 Voiceを操るZeus B. Held(この人が最も売れました)はソナー音からソロフレーズまで大活躍、このまとまりのなさが非常に魅力的です。言うなればフランスのC-C-B?(こちらの方が随分時代が早いですが)80年代初頭の大名曲「V-I-S-I-T-O-R-S '81」は映像と共にお楽しみください。

 なお、Claude Lemoineが関わっているのはこの曲のみですので、この1曲目以降の楽曲は、比較的コズミックロック寄りでMassiera色が強いです。しかしながらこういう一歩間違えばコミックバンドになりかねないギリギリの線を狙ったコンセプチュアルバンドを生み出せたのも1980年初頭らしさと言うべきなのかもしれません。こういう人を食ったコンセプトワークは、実は後年のDAFT PUNKにも息づいているのではないかと思っています(あくまで個人的な見解ですが)。J.P.Massiera→DAFT PUNK説、いかがでしょう?


 はい、やはり長くなってしまいましたw
 1回で終わらせようとしたのですが、どうしてもこういう書き方しかできませんので、今シリーズも3回に分けたいと思います。次回は20位〜11位です。メジャーなアーティストがたくさん出てきますので、お楽しみに!

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