大江千里

「大江千里 in 80's BEST20」クロスレビュー(後編・終)

 昨日から始めました大江千里の80年代〜ベストソング20のクロスレビューも本日が後半戦にしてあっという間の最終回となります。結果的に好みの差が分かれるランキングとなっておりますが、だからこその思い入れがレビューの端々に見え隠れしていてなかなか興味深い印象を受けます。その辺りは本日のベスト10カウントダウンでますます顕著になってくるかもしれませんし、予想外の方向へ話が進んでいくかもしれませんが、兎にも角にも本日は10位〜1位まで両者共に挙げていきながら、大江千里の魅力を語っていきたいと思います。それでは本日もお楽しみください。


〜インタールード〜

@tpopsreryo:
昨日実施したjunnoviさんとの対談式レビュー企画。「大江千里 in 80's ベスト20」も後半戦となってしまいました。昨日は完全に闇を抱えた青春の代弁者扱いにしてしまいましたが、本日はいよいよ2人のベスト10のカウントダウンです。よろしくお願いします。

@junnovi:
オーゲー、センセ。2日連続になっちゃいましたが、今夜もよろしくお願いしますw じゃ、昨日に続いて私から紹介しますけど、オーゲー?

@tpopsreryo:
オッケーです。楽しみにしております!

@junnovi:
センセと昨日から始めた80年代限定の大江千里ベスト20選は、当初考えもよらなかった大江千里の意外な論点が炙り出されて、自分を顧みる契機になりそうです。彼の音楽に何を求めるのか、単なる音楽的志向が合致しただけでは説明できないものでした。それは大江千里をリアルタイムに体感してきた人においてこそ思い抱く事項で、後追いとか追認とかで把捉できるような性質のものではないことでした。そういった意味では、今回どういった20曲を選ぶかで自分の若かりし日々の姿が映し出されるという構図にもなるわけで、昨夜から恥ずかしい思いを感じています。大江千里という音楽体験は、そのためとても個人的な体験であり、下手すると語るに落ちるという羽目にもなり得ますが、自分の中での大江千里の一つの総括をセンセとのやり取りを通じて果たせるかも知れないという思いで、今日も自分を曝け出そう、感情過多なコメントを沢山残そうと思うのでした。


junnovi第10位:「Bedtime Stories」

 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
(12inch「Bedtime Stories」収録:1986年)

@junnovi:
12インチシングルの持つ特別さ。アルバムと同等の扱い。ジャケットの仕様も、歌詞冊子のデザインも、そして何よりもサウンドのダイナミックさも。思い切った厚くて重い音も、切れ味のあるクリアな音も、ワイドレンジでハイファイなものだから、どうしても注目してしまう。制作する側も、予算を沢山使ってリリースしたいという意気込みが曲にもデザイン仕様にも反映されて期待がイヤが上でも膨らんでしまう。X'masといえば外国の曲とかマツトーヤ(松任谷由実)の曲くらいしかなかったあの頃、12インチシングルで発売するその意気込み。誰が言いだしっぺなのかは知らないけれど、快哉を叫びたくなるほどでした。あとこの曲にはインストゥルメンタルのバージョンもあって、それが同じ12インチシングルの中に収められていて、この曲はそういった意味でインストとセットで評価しなければ私の中では落ち着きが悪いです。2個イチで評価したいところです。クワイアボーイズのイノセントなコーラスも情感たっぷりなストリングスも曲の後半に向けて盛り上げていきますが、やはりインストでちゃんと事後処理をして綺麗に収まりたいのです。ただ、昨日のセンセのコメントじゃないけれど、嘗てほど好きじゃなくなってる自分に気が付きますね。チョット寂しいような気もするけれど。

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@tpopsreryo:
好きだったもんね~その曲w ここで来るんですね。12インチをバラードで勝負というのが彼らしいというか、角松みたいにExtended mixじゃないのも潔いというかね。メロディは本当にストレートで熱唱というかね、彼にしては珍しいタイプの曲かもしれない。

@junnovi:
そう12インチなのに、エクステンディドパワークラブミックスみたいな滅茶苦茶ド派手に長く引き伸ばしたのとは違って、あくまで新曲で、バラードで、冗長じゃない普通の構成で勝負したってところが、良かったんです。

@tpopsreryo:
7インチでも良いサイズの長さなのにね。でもそこにインストの存在感があるんだと思う。今ならシングルCDサイズだと思うけど、当時は3曲入れよう思ったら12インチだもんね。どうしてもインストを入れたかったんだと思うね。今でこそ当たり前に入ってるけど当時は珍しかったし。

@junnovi:
そうやねん。そしてそのインストも、単に歌を抜いてカラオケにしただけとか、便利な機材でチョチョイと簡単に作ったんじゃなく、ちゃんと別枠で作っている丁寧さが良かったんよね。懐かしいなぁ~。


tpopsreryo第10位:「バンドをつくろう」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「乳房」収録:1985年)

@tpopsreryo:
演奏は若手バックバンドが担当した初々しいプレイながら編曲家のせいか音が清水信之そのもの。キーボードの1人は若き日の松本晃彦。特に間奏のマリンバ風のソロを散りばめたエレガントなプレイにはEPICらしいお洒落感が満載。

@junnovi:
お~!まさに「乳房」やね!「乳房」を聴いた当初、こういう楽曲こそが当時の時代のど真ん中で、キャンパスライフの自由な空気をメジャーシーンに送り込んできたんだよね。この曲はセンセの言うマリンバソロもいいし、その前のスネアの独特な乱れ打ちも好きでしたわ。

@tpopsreryo:
2周目のAメロとBメロの間に間奏を入れてくる手法も良く使われているよね。これは清水信之の手グセかもしれないけど、効果的なんだよね。特にこの曲はBメロがちょっと不思議なフレーズをしているから、その間奏からのつながり方が気持ちいいというか何というか。

@junnovi:
なんかさ、2番の途中で歌を止めて、間奏を入れたりするの、土屋昌巳もやってるよね。悪くない。そういう一呼吸を送っていうのって、ある余裕がないとできないものね。そういう豊かな感じを、音楽を通じてリスナーに沢山届けて欲しいね。

@tpopsreryo:
2番の途中と一風変わったシンセのフレーズを入れてくるのはGRASS VALLEYの本田(恭之)先生だけどねw あとヒャダインなんかは2番でAメロとBメロを入れ替えるっていうのはよくやってるね。ちょっとしたことだけど、「ひとひねり」だけでも実に効果的なんですよね。

@junnovi:
本田・・・。GRASS VALLEYは何か動きはないのでしょうか・・・? ヒャダインはそんなことやってるんやね。そういうことって、自分の楽曲をチョット引き離さないとできないよね。靖幸とかには絶対にできない芸当。靖幸は引き寄せるだけしかないから。


junnovi第9位:「REAL」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「未成年」収録:1985年)

@junnovi:
「未成年」のOPを飾る名曲。若い疾走感が曲全体に漲りながらも、どこかしら薄暗いトーンも覆っていて、時に見せる陽光は弱くてスッキリしない。それでも潔いスネアの音、高速ビームの様なシンセサウンド、そして何より曲後半になって俄然存在感を増すハンドクラップ! それもリズムを刻むのではなく、タタタタという連打の多用。右へ左へ。それがどういう手法であれ、すべて直截で一緒にのってしまう。でも歌いたい歌かというとそれはなく、専ら聴く曲。良くできた作品。今でも聴いたら満足感が得られる手ごたえのある曲。

@tpopsreryo:
来ましたね。これはね、う~ん今はパス。お察し下さいw

@junnovi:
重々承知でございますよ、センセw 私の言い分はほぼ言っちゃいましたけど、本当に良くできた楽曲です。


tpopsreryo第9位:「もう一度X'mas」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「未成年」収録:1985年)

@tpopsreryo:
お得意のクリスマスソング3。エレドラ乱れ打ちやテープの逆回転音等を挿入した派手目なサウンドで比較的若々しく明るい曲調。ギターソロからのCメロも秀逸。それにしてもクリスマスとなると仕掛けが多いんだよなこの人w

@junnovi:
大江千里のクリスマスへの執着はセンセの言うとおり相当なものだよね。だって『乳房』のOP、12インチ、「ゆめみるモダンクリスマス」(5thアルバム「AVEC」収録)そしてこの曲。その後の大江千里からしてみたら相当音数が多くてせわしないけれど、このジャンプしまくってる感じが若くてパッションしてるw

@tpopsreryo:
「未成年」の頃ってシモンズ全盛時代だったから清水もこれでもかって使い倒してるのね。この曲なんか相当乱れ打ってるよw 前述したけどCメロがほんと好きでね。あんなに大胆に無理矢理高音に持っていくとか、なんて自虐的なんだってねw

@junnovi:
ゲラゲラ。「デリンジャー」(刀根麻理子)をはじめ、エレドラってどっか人を暴走させる魔力を持っているよねw とても重要!!www


junnovi第8位:「回転ちがいの夏休み」

 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
(アルバム「OLYMPIC」収録:1987年)

@junnovi:
大江千里の性向には似つかわしくない楽曲なのですが、好きなんですよね。アルバム「OLYMPIC」のOPを飾る力強いナンバー。Bメロの哀感、サビの突き抜けたサニー感、良いバランスで混じっていて、このアルバムを一気に駆け抜けていくだけの魅力に満ち溢れています。ここから「gloria」までがひとまとまりの個性を現わすに十分な魅力をたたえています。この曲調は、「POWER」を起源として、「回転ちがいの夏休み」、「GLORY DAYS」、「魚になりたい」に受け継がれることになります。どうも好みの系列なんやね。この系列と、あとは悲愴感のある抑制的なスローテンポの曲の系列が、大江千里に期待している個性ってことなんだなって今頃になって気が付きました。

@tpopsreryo:
ワタシにはこの路線が受け入れ難かったんですねw 闇深き青春の代弁者なのに何無理してんだってなったわけですよ。遂に開き直ったかって。それは冗談としてブラスとパワードラム、いわゆるロックナンバーが余り似合わないと思っていたのです。清水シンセの滲み方が好きだったから。

@junnovi:
やろうなぁ。冗談じゃなく、その通りやと思うわ。無理してるもん何か。性に合わないことをやってる感あるもんね。それでも突き進むプロ根性があって、それに乗っかろうとする私がいるのも事実で、そういうファンも多かったと思うわ。因果な話やね。

@tpopsreryo:
ただ冗談抜きにしてこの曲調で新たなファン層をつかんだと思うよ。結局こういう元気ソングみんな好きだもん。闇思考の崇拝者なんて気持ち悪いからさw 千里クンってあんなにウジウジしてたのにこんなにカラッとした曲も歌えるのね。楽しい~って感じになったんじゃないかなw

@junnovi:
あ~バカにしてる~w でも無理してる痛々しさは正直みんな分かってたんじゃないかな。学生時分では全く箸にも棒にもかからなかったけれど、社会人になっていろんな溝をお金で埋めたら何とか形になったという極北が「おねがい天国」だと私は思ってるから。

@tpopsreryo:
いや、ただね、88年まではほんとカラッとし過ぎてて喉が渇く感じだったんですよ。でも89年の「おねがい天国」で清水信之も帰ってきて、毒気が抜けたように爽やかサウンドになっちゃって。でも以前の彼には戻れないっていうかね。それが大人になったってことなのかもしれないね。

@junnovi:
そう。ただ彼を否定する訳じゃないけれど、やっぱり大人になって、心理的なものまでも、お金で埋めたんやと思うよ。嫌な言い方になるけど。でもそれって殆どの大人がやってること。そしてそういう経験を一度しちゃったら最後、もうイノセントなことをしてもNGなのです。そういったある意味、潔癖であることにこだわり、けがれることに過剰なまでに反応する姿勢が思春期の特性で、それを売りにしている彼の場合、どうしても付いてまわることであり、その後の彼の音楽的な変遷を考えるうえで看過できないと思う。しつこいけど。そこが、音楽鑑賞の一線を越えて骨となり肉となり血となったリスナーにその後待っている「通過儀礼」なんだと思う。しつこいけどw


tpopsreryo第8位:「ロマンス」

 詞・曲:大江千里 編:小室哲哉
(5thシングル「ロマンス」収録:1984年)


@tpopsreryo:

TMデビュー当時の小室哲哉が手掛けた他者アレンジ作品。かなり挑戦的なサウンドで、コーラスは完全にTM、リズムマシンは暴れ回る大江千里にとっては異質な楽曲。ある意味「未成年」以降の清水路線を予見させるエレクトロ度満載の仕上がり。マシナリーさを演出するバスドラ連打、そしてヤケクソなくらい前のめりなイントロのシンセの入れ方、乱れ飛ぶエレトリックタムも狂気の沙汰。テンション高めな転調は小室メロディの醍醐味だけど、物凄く生き急いでる感が出ていてすぁしないったらありゃしないw

@junnovi:
それにしても、思えばセンセが選んで当たり前の曲だけれど、全くノーマークだったわw 「未成年」と「乳房」でTOP10はひしめき合うってばかり思ってたから。

@tpopsreryo:
もう長い付き合いなんだから、大体どんな曲が来るか想像つくでしょ? 幅広く見えて好みはほぼ1点集中なんだからw
(下の動画はTV用のファンクバージョン。これも良い。)


junnovi第7位:「塩屋」

 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
(アルバム「OLYMPIC」収録:1987年)

@junnovi:
須磨の海沿いを走る私鉄(山陽電鉄)の1つの駅に着目しているローカルソングってことは語る必要がないほど有名な曲ですね。その後大きくなって塩屋駅に行ったことがありますが、思ってたんと違うなと思ったのを覚えています。それはいいとして、この曲は1つずつ下がっていくベースラインと、時に暗くやがて自由に奏でるピアノの伴奏が何より魅力で好きなのです。あとはAメロの上に伸びていくところが素晴らしく、数ある大江千里の曲の中でトップランクに好きで、このAメロだけを口ずさんでしまうほどです。あとサビの「♪(朝のひか~りが~包み込んだ)すべ~てに~」のところのギターのフワンフワンしたところが、青白く冷めた早朝の空気を上手く表現しているようでいいなぁって思うのです。まるで印象派の絵画の様で。大人げないこと言う後半の歌詞もリアルで、却って気に入っているところです。

@tpopsreryo:
この曲は入ると思ってたw 何年か前仕事で須磨に行こうとして寝過ごして塩屋まで行ってしまったよw 海沿いでホームが狭くてなんか取り残された気分になったなあ。どうでもいいけどw この頃はアップテンポとバラードのメリハリが物凄く効いているような気がしますね。

@junnovi:
もうね、この辺りになってくると、順位は付けられないんだけど無理して付けてる感じです。それにしても塩屋駅って。。。自分もそんな感じでした。。。

@tpopsreryo:
あの駅で目覚めたのはなんか運命的だったよ。これがかの有名な「塩屋」か!ってw 順位付けは難しいけどどうしてもランキングしてしまう悲しい性なんですよ。もう少し頑張ろうw


tpopsreryo第7位:「A MOONLIGHT EPISODE」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「未成年」収録:1985年)

@tpopsreryo:
シンセ度著しいマイナーチューン。Aメロがとにかく素晴らしい。エレドラで刻むリズムと定期的に挿入されるハンドクラップに、琴系の音色やエレクトロラテン風味も織り交ぜながらの不思議空間。熱の籠ったギターソロも激しくエレポップとして完成度の高い楽曲。

@junnovi:
きたね~。どっかの陰のあるアイドルが歌ってても全く違和感のない当時のプロの仕事の仕上げっぷり満載。それにしてもセンセの言うとおり、シンセ度が高くて、どこを切り取っても1つや2つの音で終わらせてないよね。音楽的素材が十分に盛り込んでて本気度が半端ない。あと、最後のリフレインに入る前に、堰き止めた土砂が軽く崩れていくようなエレドラのフィルインがあるやん? あれ気になる。

@tpopsreryo:
お聴きのとおりこれもエレドラ叩きまくりなんだけど、その部分はエレドラじゃないね。琴系のシンセサウンドかな。ほら、「REAL」の間奏でビョンビョン鳴ってるヤツみたいなアレですわ。

@junnovi:
あ、琴やw すいませんw これ面白いよね~。今更ながら「未成年」ちゃんと聴き直さなきゃな~。なんせ「未成年」は、私の方の思いが強くて楽曲にまでちゃんと手が届いていないのです・・・。


junnovi第6位:「贅沢なペイン」

 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
(ベストアルバム「Sloppy Joe」収録:1989年)

@junnovi:
この曲は元々のアルバム「OLYMPIC」に収められている方ではなく、歌い直している「Sloppy Joe」が良いです。もうね理屈じゃなくて、そっちが良いんです。オリジナルテイクはどこか荒削りで、作った本人なのに曲を歌いこなしていない所があるように思えて、聴き飛ばしてしまうのだけれど、「Sloppy Joe」の方はこの曲の持つ、トニックな肌触りをジャストに表現しているようで好きなのです。訥々と何かに考えを巡らせながら歩みを進めるような曲調はモノトーンで、淡口なアレンジも相まって何もかもがさらっと流れ去ってしまって、一体何にこだわっていたのか分からないような仕上がりです。それでもこの曲の終わりあたりに音量を上げるギターの音が好きで、その抑制の利いた演奏は、「OLYMPIC」よりも「Sloppy Joe」の方が強くて、好みのテイストです。大江千里ファンは多いと思いますけれど、この曲をベスト10に入れる人はそんなに多くないのではないでしょうか。ただ今回の20曲を改めて見直してるんだけれど、このタイプの楽曲はこの曲以外全く選んでいない。何でこの曲だけが好きなんだろう・・・。ん~やっぱり、歌が終わった後に展開されるギターとハンドクラップとスネアのストイックな演奏が好きなんだろうな。

@tpopsreryo:
この曲がここに来るんだなあ。タイプとしてはこれまでの闇を抱えた千里さんだよね。後半徐々に走り出すようにテンポを上げていく感じは確かに上手な演出だと思いますね。地味な印象に見えて存在感は確かという不思議な曲かなあ個人的には。

@junnovi:
フォローしてくれて却って恐縮です。アリガト。ホント地味やんね。何でこの曲だけ好きなんだろうって何回思ったろう。それなのに繰り返し聴いてしまう。歌詞も特に何のシンパシーも感じないしね。やっぱりエンディングが好きという一点なんだろうなって結論になった。


tpopsreryo第6位:「コスモポリタン」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「乳房」収録:1985年)

@tpopsreryo:
メッセージ色の強いミディアムバラード。この曲だけ使用されたフェアライトCMIのオペレートは、キリングタイムのMa*Toの隠れ仕事(注:当時のTweetにMa*Toさんご本人に「すっかり忘れてた」とコメントをいただきましたw)。不思議サンプリングで貢献しています。また、強烈なスネアが実に良いし、残響音の深い重厚なサウンドにあってサビのチープなおっとっとシンセがキュート。

@junnovi:
この曲は実を言うとずっとずっと好きじゃなくて、何でこんなのをシングルカットするんだろうって、全く理解できなかった。今日(リマスターBOXセット)「MY GLORY DAYS Senri Premium」で聴き直して、ええ曲やんかって20年以上の時を経て価値を知った曲です。

@tpopsreryo:
ワタシも最初は地味だなあと思っていたんだけど、聴けば聴く程懐かしくなってねw まあ今でも説教臭いなあと思っているのは確かだけど、もう闇深き青春の代弁者としての彼を受け入れたからね。それでいいのだw

@junnovi:
「闇深き青春の代弁者」!w 昨日のやり取りがなかったら、あまりピンとこなかったよ~。その通り。それにしてもあのリマスター企画は良かったよね。あんな感じでGRASS VALLEYの全アルバムリマスターで再発してほしいです!!

@tpopsreryo:
やはりリマスターというのは大事でね。特に彼のようにサウンド面でも卓越したものを残していた作品というのは甦るので。特にソニーのリマスター企画は音も良くて満足してます。GRASS VALLEYは30周年の2017年が勝負。きっかけさえあればURBAN DANCEみたいに大成功するはずなのに。(注:しかし2017年は何事もなく過ぎ去っていくのでした・・でしたが、2019年に奇跡が起こりましたw)

@junnovi:
ホントにね。「GRASS VALLEY」「MOON VOICE」「STYLE」は絶対にリマスターしてもらわないと困るんです。音が細すぎるんです。絶対に聴き損ねてる音があるはずだから。重要ですw


junnovi第5位:「魚になりたい」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「redmonkey yellowfish」収録:1989年)

@junnovi:
OPのギュゥーンと跳ね上がるギターの音、ゴキゲンなブラスセクション、似たような楽曲が「POWER」以降沢山作られることになりますが、一番小慣れて楽曲の消化具合が最も良い、優等生的な曲。日本語をどうメロディに乗せるかも、面白いけれども無理のない仕上がりで、印象的。しかも曲の緩急のつけ方もすっかりわきまえたもので、安心して聴くことができます。全体の構成も綺麗にまとまって、まさに優等生。かつて「gloria」では東京に憧れる姿が初々しかったものですが、ここでは恵比寿が舞台。あっという間に都会の人になった感じです。ファルセットのフェイクも何言ってるのかちっとも分からへんけど、曲のアクセントには丁度良い感じです。いよいよモラトリアムな学生生活から卒業して、晴れやかな社会人デビュー。

@tpopsreryo:
いかにギターが歪もうとも上品さは隠せないというか、このエレピサウンドといい、あぁ清水信之だなあという印象です。ブラスもシンセだよね。これもやはり89年の終末感を感じる一抹の寂しさというか郷愁を感じますねえ。「redmonkey yellowfish」はもう1度聴き直そうかな。

@junnovi:
確かにこうして振り返ると「redmonkey yellowfish」までを含めて見てないと分からないことってある気がするね。ホントにしつこくて悪いんだけど、お金の使い方も分かってこういう音楽作れるようになったよって、役職上がって再度名刺交換するような感じ。

@tpopsreryo:
お金の使い方にこだわるんだなあw 「OLYMPIC」からの躁状態(もちろん時々鬱を垣間見せる)が続いて、ふっと我に返った状態が「redmonkey yellowfish」て感じもするけどw なんかいろいろなカルマを捨て去って解脱したかのような瑞々しさというか。

@junnovi:
そう。だって青春の時をリア充じゃないけど、そう上手にやりこなして振り返る暇なんてなかったっていうタマじゃないだろうし、それを見事にスムーズにサンシャインにバカンスかもねむってなるには、そこにお金というツールが必要だろうなって思ってしまう。真面目な話。やっぱりね「POWER」とか「OLYMPIC」の「回転違いの夏休み」ではまだ感じないんだけれど、「魚になりたい」くらいになると、そこはかとなくお金のニオイがするねん。分からへん?って私だけか。これってホンマに90年代への流れでは看過できないんだけどなぁ・・。

@tpopsreryo:
分からんわ~w ワタシにとっては「OLYMPIC」「1234」で肉ばっか出て来てもうお腹一杯ってなった時に文字通り「redmonkey yellowfish」でやっと魚が出て来た~って感じかな。意味分からないなw

@junnovi:
もういいッ!www プンスカプンスカ。もとい。単なる音楽的手法の向上だけじゃ片づけられない、大きな変容があったに違いないって勘ぐっちゃうのがいけないのかもね。うん。そうかも。

tpopsreryo第5位:「SEXUALITY」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「未成年」収録:1985年)

@tpopsreryo:
この曲はギターとベースの絡み方が絶妙です。イントロの何気ないシンセリフ、間奏の電子的浮遊感、間奏明けのBメロの気の効いたベースにアウトロでの生とシンセのベースの掛け合いと聴き所も多彩。とにかくプログラマブルなノリが素晴らしい。

@junnovi:
「未成年」ではOPの「REAL」で思いっ切りパンチを喰らわせて、その後はズンズンと目くるめく音世界に引きずり込む感じが強いです。どれも音楽的な趣向が豊かで確実な制作をしたんだって思います。過去の記憶が遠のく今、改めてニュートラルに聴ける気がするよ。そういう意味では、センセにとってはこのアルバムのA面はまさに「完璧」やん!

@tpopsreryo:
と思うやろ~w でもワタシ「真冬のランドリエ」は好きじゃないねん。彼のアルバムの4曲目って地味なんですよ。まあ一休みって感覚もあるかもしれないけど、そういうのが好きな方もいるのもわかった上で、「未成年」が10点になれないのはそれと、最後の曲w

@junnovi:
ん~、それは「エ」があるから?w あとは「BLUE」(小川美潮4thアルバム「檸檬の月」収録)な「♮」ねw あれはどういう意図なんだろうね・・・。「gloria」とか「フレンド」とかとは明らかに異質なもの。

@tpopsreryo:
え?あのランドリエってコインランドリーの話じゃないよね?w
「♮」はね、あのアルバムのきらびやかで甘酸っぱい青春の物語を、「全部嘘だよーん」ってひっくり返したような曲なんだよ。夢オチ。淋しいとかツライとか結局鬱屈した闇を抱えた人間の妄想という怖い曲なんだよw

@junnovi:
これはセンセ「BLUE」よりももっともっと深い闇かも知れない。残酷な曲。元に戻る。A面で行って、B面の終わりで♮で元に戻る・・・。メタファーにしては直截で非情。そしてこのチクタクチクタクと1秒よりも早く刻むこの音は何? 何のつもり? 怖い。本当に陰惨で怖い。

@tpopsreryo:
夢オチなんだから、真夜中で起きてしまって結局孤独な夜の中での静寂ということなんですかねw もうハイスクール奇面組の最終回が夢オチだったのと同様の衝撃ですよ。実は本人も「あんな青春を送ってないからああいう甘酸っぱい歌を歌ってるんです」って村上龍に答えてたくらいだもんw

@junnovi:
村上龍www 今日一番笑ったかも!w それにしてもイヤやわ。夢オチって。何なんこのストーブの上のやかんの湯気の生活感と寂寥感。尋常じゃない。そしてチクタク。殺されそうやわ。

@tpopsreryo:
スゴくポップな「未成年」というアルバム。ヒット曲も収録して甘酸っぱさ全開でわいわい騒いで感動して。そして最後ドスーンと落とされる。そしてリスナーは一様にして死んだ目をして聴き終えるんだよ。罪深いわ~。これぞ闇からの使者やわw

@junnovi:
未成年の恋愛の、後先考えない残酷な仕打ちみたいなもんかな。このチクタク、ホンマに怖いって。何のつもり? デッドエンドへのカウントダウン?「AVEC」全曲持って来ても、太刀打ちできない恐ろしさと圧倒的な闇がある。


junnovi第4位:「きみと生きたい」

 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
(アルバム「AVEC」収録:1986年)

@junnovi:
綺麗に整然としたピアノ前奏がリリシズム豊かに響いて、「未成年」とも「乳房」とも違う感触を感じずにいられなかったことを今でも思い出します。そして何かに傷ついた心に浸み込むメロディラインと歌詞の世界に慰められ、憧れたものでした。実は、この落ち着きというか抑制のきいたこの曲を聴くと2つの思い出が頭をよぎるねん。
1つは自分に「乳房」を貸してくれた子と、この曲の構成について楽しいやり取りをしました。「♪きみという夕映えを痛むくらい抱きしめたら~、これからもう歩けな~い 君な~しじゃ、い~きてゆけない~」という部分をサビとするかBメロとするか、「♪君にあえてからホントの孤独が優しさにあると知ったよ~ 君にあえなくて夢中で生きたら僕は前よりなくしてばか~りいる~」はサビなのかサビの奥に控えていた大サビなのかで、楽しく盛り上がったのでした。
もう一つの思い出は、バイトで親しくなった(つもりw)の女の子にデートしようと誘ったら、「私はそういうつもりじゃない。」なんてフラれて、その帰り道に生まれて初めてのヤケ酒を飲んだのだけど、その間延々と頭の中を流れてたのがこの曲だったこと。曲がサビの部分に差し掛かるとひどく胸がきしみ、何度も涙があふれてヒーヒーとため息とも鳴き声ともつかない音を立てて泣いてましたw ひとしきり泣きつづけ、やがて気持ちが落ち着いてから、フラフラなまま家に帰ったら、その態が余りにみっともなかったのか、日頃まともに会話も交わさない父親にひどくバカにされて踏んだり蹴ったりだったのを思い出しますw 「大江千里の描く世界とは、遠く離れてしまったなぁ、情けないなぁ、俺は何をしてんだろう」と落ち込んだのでしたが、今となってはどこがなんでしょうね~。
そんな些細なことに、ひどく拘泥したことを甘酸っぱく思い出します。なのでこの曲は思い出が色々とあって、客観的な評価をすることが中々できないのです。まさに私の骨となり肉となり血となっている楽曲なのです。とはいってもとても滋味豊かな楽曲だと思います。少し綺麗すぎるとも思わなくもないですけれど。

@tpopsreryo:
長く曝け出しましたねw そしてやっと「AVEC」から来たね~。てっきり無視されてるのかと思ったよ。この曲は大江千里自身にとっても大切な曲らしいから、聴き手側にもそれぞれの思い出によって身にしみる部分があるってことか。こういうのを名曲と言うのだろうなあ。

@junnovi:
「AVEC」』は重要です。本質ですからw 「去りゆく青春」の冷え切ったピアノがあろうと、マリアじゃなかろうと、AVECでおわろうと、この曲はね。


tpopsreryo第4位:「17℃」

 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
(アルバム「AVEC」収録:1986年)

@tpopsreryo:
イントロからしてその冷ややかなシンセベースのシーケンスに引き込まれる。音数の少なさの中ギターが際立ちますが、洞窟音響的なリズムの音からして虚ろで鬱屈した感覚。まさに闇深き青春。サビのコーラスもエレドラのばらまき具合もどこか冷めた視線で。

@junnovi:
何かすごい符合っぷりやねw この曲を聴くと、吉川晃司のあの曲を思い出すんですわw レイーンダンスが。新譜で発売された当初、この小刻みなベースラインを必死で学校の机で叩いて憂さ晴らしをしてましたw 今回の私の20曲には入ってませんけど、良いですよね。

@tpopsreryo:
メロディラインがね、暗いのw かっこいいイントロでワクワクしながらAメロで俯いちゃって、Bメロで哀愁に満ちて、サビで明るく転調と思いきや、結局マイナーに孤独を歌ってるw 救いのない引きこもりっぷり。やはり彼はこうでなくっちゃw

@junnovi:
このエレドラの暗さ、好きやで。ダークで、クールやん。それよりも今は「♮」やわw


junnovi第3位:「JANUARY」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「乳房」収録:1985年)

@junnovi:
大江千里の最もコアな甘酸っぱい空気感を曲イッパイに充満させた名曲。今回挙げた20曲の中でも一番口ずさんだ曲かも知れない。歌詞のどこを切り取っても、青春の想いが溢れだしてきそうなほどに何度も何度も反芻し、自分の経験と重ね合わせました。その後「サンタクロースがやってくる」は「♪ンフフ~」とか歌わなくなったんだけれど、メロディラインの強さと美しさで、この「JANUARY」と「フレンド」は歌い続けることになります。どちらの曲も煮え切らない未練タラタラな歌詞内容ではあるのだけれど、それが未練であることを理解するには、相当な時間を要したのでした。恥ずかしい・・・。でも名曲であることには変わりはなく、好きな曲であることには変わりはなく、それこそ早くからこの曲を知れてよかったなと思いますね。
アレンジの妙は「フレンド」の方が神々しさや大局的な雰囲気まで醸し出しているために上にあると思うのだけれど、この「JANUARY」のサビへつなぐBメロの切なさはたまりません。とても短いのですが、とても好きなメロディです。そこに乗せられた言葉もそれぞれに光り輝いていて、大江千里の真骨頂がここにあると言ってもよいほどです。って書いたけれど、「♮」の衝撃を受け止めてしまった今、真骨頂なんて何だか違う気もしてきてる・・・。ん~あれはすごいな。すごすぎる。

@tpopsreryo:
この曲も入ると思ってましたよ~。ワタシも1月生まれでね、当然思い入れも少しはあるのですが他の曲と比較するとやっぱり地味でして。メロディラインは確かに彼の真骨頂と言えるかもです。彼はストレートな表現をメロディとして遠慮しない部分に長けていると思うので。

@junnovi:
そう。重要な曲だからね。それにしても「さましたチャイに砂糖も入れない」ようなシーンを実際に経験したかったです~。楽しそうだよね~。チャイだよチャイ。

@tpopsreryo:
この時期の彼にしては幸せそうな曲だよね。「乳房」のほかの曲は悲しそうな曲ばかりでね。「愛するということ」に至っては「きみはもっと激しく絶望しろ~!」「少しも救えないぃぃぃぃ~↑!」だからねw

@junnovi:
そうそう。「乳房」は確かに暗いトーンだよね。その「絶望しろ~!」って、この人何のつもりなんだろって、大人ってそういうもんなんかなって本気で思ったほどでしたw 今までひた隠してきた呪いをとうとう口から吐露した感じやね。悪魔になった瞬間やね。

@tpopsreryo:
やっと本性現したか!っていうねw 前作の最後で悪魔のような終わり方をしてから、本作から次作にかけてその闇から抜け出せずにいる。そしてそれこそが彼の本質であって、そんな彼がワタシは好きなんですよw


tpopsreryo第3位:「彼女によろしく」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「乳房」収録:1985年)

@tpopsreryo:
これもイントロ一発の楽曲で音数の少なさの中での攻撃的なリズムと冷ややか過ぎるシンセリフに寒気を感じます。間奏では琴系音色のシンセソロが弾けますが、最後リフ前のテクニカルなシンセベースソロ(&ニューウェーブギター)が圧巻の一言。

@junnovi:
う~センセの選曲は本当に一貫してるなぁ。感服します。感情最優先のワタシとはえらい違いですw この曲も大概聞いてきたけど、センセの言うシンセの「寒気」は良く判らない。よろしくって言っていながら暗いんだけど、サンタのモコモコの余韻があって気にならなかった。

@tpopsreryo:
最初のイントロの音だよ。これぞTHE シリアスって音でね。好きなんだよね。主張してる音で。音数少なくて全体的にヒンヤリしたリバーブがかかってて、そのクールな空気感が大好きなんだけど、細かいギミック音がいろいろ入ってて、これもリマスターでかなり評価を上げた曲です。

@junnovi:
ああこの音ね。この音は当時発売されたCDでは本当に細い細い弱々しい音だったよね。あとそのあとにあるスネアの右左で攻撃的に触れるところももっと曖昧だったよね。なるほど。サビのところのハイハットも何かに追われてるようで。で、なんでこれが「よろしく」なんだ?

@tpopsreryo:
結局この曲も彼女をよろしくって言って自分は背を向けて孤独にウジウジっていう、もうどうしようもないヤツだな! あの「未成年」のきらびやかな青春はどこへ行ったんだ! あ、あれ夢か・・・っていう。なんて罪深い「♮」w

@junnovi:
嗚呼、どうかわたしを解き放ってください。お慈悲を。「♮」という激しい戦慄を覚えずにいられない楽曲から、「絶望しろぉ~」とか「救えないぃ~」とかからも解き放ってください。

@tpopsreryo:
その場所から離れるんだ! とりあえず第2位へ行くんだ!ww  ちなみに「絶望しろ~」はランクに入ってないからw

@junnovi:
ゲラゲラ。アリガトセンセw とにかく「♮」の強力な磁場に心神喪失になりそうでした。いや~スゴイです。スゴすぎです。今まで大江千里の一体何を聴いてきたんだろうって思うほどに。大きな「修正」を突き付けられてます。


junnovi第2位:「Rain」

 詞・曲:大江千里 編:大村雅朗
(アルバム「1234」収録:1988年)

@junnovi:
アルバム「1234」が出た当時、この曲がそこまで良い曲だという思いは全然ありませんでした。同級生がこのアルバムを絶賛しているのを、心のどこかで「それは違う。大江千里のベストは「乳房」だよ。」と思ってたほど。この「1234」というアルバムは、「AVEC」よりも暗くて、扱いが難しいと思ってたので、私が大江千里の求めるものとは結構距離があるなととらえてチョット敬遠してました。今回のベスト20曲を選ぶにあたってもそうだけれど、実はその後も聴き続ける曲が多くて、好きなアルバムになっていくのです。
自分の身に起きる様々なことを、親や学校の先生が教えてくれた通りに考えるのではなく、自分の心に引き寄せて考えるようになると、生きることが急に難しくなりました。自分の気持ちもワントーンで表現することはできないことを知りました。この曲の素晴らしさは何と言ってもサビのメロディラインの力強さでしょう。描いている世界は悲しいのですが、感情をしっかりとメロディに乗せて表出しているところに秀逸さを感じずにいられません。「行かないで 行かないで そ~言うよ~おお~」という部分は「行かないで」をたたみかけるように連呼するので強烈な印象を残します。良いですね。多分大江千里だからこそ作れる楽曲でしょう。実に好きな曲です。この曲、カラオケで何回か歌ったことがあるのだけれど、本当に難しい。この曲の世界をちゃんと歌い切れなくて、どうも地味で野暮な仕上がりになってしまうのです。あと歌うと言えば、多くのミュージシャンがこの曲をカバーしてますね。驚きです。どこがそこまで彼らの琴線に触れたのかは知らないのだけれど、おそらく、たたみかけるような切ないサビのメロディラインなのでしょうね。

@tpopsreryo:
名曲の誉れ高い曲が来ましたね~。なんという過剰なリバーブなんだw このパワー全開の山木(秀夫)ドラムと荒ぶるストリングスが豪快に展開するのですが、ポイントはBメロからサビ前の転調でガラッと空気が変わるところですね。ここは本当に美しい。

@junnovi:
そっか!転調か!それで空気が一気に変わるんだ! その開放感なんだね。それはセンセのコメントにもある通りOPにも同じ構図があるよね。晴れたのかなって思ってたんだけれど、サビではまだ雨降ってたんで、アレそうだったのって思ったものでした。


tpopsreryo第2位:「ふたつの宿題」

 詞・曲:大江千里 編:大村憲司
(アルバム「Pleasure」収録:1984年)

@tpopsreryo:
ブレイク前に生み出された珠玉のバラード。シャボン玉のように夢見心地なメルヘンサウンドはこの時代のシンセ&ギターのポルタメントでなければ作り出せない。これぞ甘酸っぱい青春。これぞ闇を抱える前のモラトリアムな青春群像。

@junnovi:
闇、闇、闇w センセの言うとおりこのギターの、心の襞に入り込んでいく感じは中々なくて、私の第18位の時に書いたエピソードの前提には、このふんわりとした柔らかい空気感に浸って、苛立ちを中和したかったんだろうと思います。良い曲やんね。ホントのイノセント。

@tpopsreryo:
そうそう、この曲はイノセントなんですよ。まだ社会の何たるかを知らない学生特有のモラトリアムな感覚。2ndまではそういった雰囲気の作品群だったんだけど、正確には「未成年」の9曲目まではそうだったんだけど。そしてそこからいきなりダークサイドに落とされていくのでしたw

@junnovi:
そこに何があったんだろう。大人になるにあたって何か「踏み絵」みたいなものを経験したんでしょうか。とにかく彼のキャリアをひっくり返して、またその後の歩みにも圧倒的な支配力をみせる「♮」はエポックメイキングな曲なんやね。その個性はその後も何度も現れる・・。


junnovi第1位:「フレンド」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「乳房」収録:1985年)

@junnovi:
大江千里の楽曲には、スローテンポで素晴らしいメロディラインを持つものが何曲もあるのだけれど、その中でも私にとっては最高ランクの曲。OPの神々しい天啓を受けたようなコラールにも似た響きが、悲しいほどにすがすがしい若い日々の思いが落ち着く場所を指し示しているかようで、何度も身を正す気持ちになったものでした。この素晴らしいOPもその後に始まる大江千里の歌も、どこか微かなスモークがかかっているようで、この曲での大江千里の歌唱は「流されそうな、街のすみで」というところで、熱感のない絶唱のような願いの極致に至り、自身の恋愛の在り方の澪標のようになったほど。何度も何度も口ずさみ、曲の素晴らしさ、詞の素晴らしさ、アレンジの美しさ、音像の広がりを味わい続けました。そういう意味では、繰り返しになるけれども、自分の人生と完全に重なり合って、まさに自分の骨や身となっている曲の1つであり、どうしても大江千里を語る上で、最重要な曲になっています。この曲と「JANUARY」の2曲だけで充分「乳房」は最高ランクのアルバムになるほど。
そういえば、昨日コメントしたとおり、このアルバムを当時紹介してくれた彼女とは、その後お互いに進む道が違ってしまって疎遠になり、終わりを迎えたわけだけど、その後もここにある未練イッパイな男を演じることを良しとする日々を送ります。未練であるという自覚もなく、自分に酔った日々を送るわけですね。ああ何と痛々しく愚かな・・・。でも今でもそのメンタリティはキライじゃないです。あと蛇足ながら「You belong to me.」はまさに受験英熟語の1つで、この曲で覚えたようなものでした。

@tpopsreryo:
この曲はね、実は自分も思い出深い曲なんです。当時はまだ盛岡に住んでた頃なんだけど、ちょうどこちら(大阪)への転校が決まった時期の曲なんだよね。いろいろな別れが錯綜した冬、北国だから空からは美しく雪が舞い降りて来て・・・で、この曲が町の中で響いてるという。ノスタルジー。

@junnovi:
美しいね。純粋に美しい。人生ってかなしいのぅ。闇である必要はないと思うけれど、かなしいものだなって思うわ。この日本という土地は、どうもさみしいものを昔から持っているような気がする。日本の文化の重要なファクターやないかと思うんよね。

@tpopsreryo:
「乳房」はね、この「フレンド」で救われるんですよ。この神々しいサウンドに祈ることによって。雪が舞い降りる空に祈るんです。救いの曲なんですよ。その前に「絶望しろ」とか「救えない」とか言っててもこの曲で結局救われる。逆に「未成年」では谷底に突き落とされるわけw

@junnovi:
そうです。この「フレンド」の祈りは、未来への誓いであり、救いへの無垢な願いであり、相手への無償の愛であり、強いのです。邪まで斜に構えて安直なまでに闇と悪魔に同化するのでは、青春は儚くさみしすぎますから。


tpopsreryo第1位:「REAL」

 詞・曲:大江千里 編:清水信之
(アルバム「未成年」収録:1985年)

@tpopsreryo:
TECHNOLOGY POPSを語る上でも重要な楽曲の1つ。ワタシにとって大江千里とはこの曲以外にはあり得ない。直線的で軽快なベースライン、正確に刻むハンドクラップ、アタックの強いキレ重視のシンセリフ、どれをとっても清水信之の成せる業。Aメロの現実感のないシンセパッドも、ベンドを効かせたシンセ琴も、青春の1ページとして甦ってきます。歌詞などはどうでもよくて、その音だけで1985年というテクノロジーが飛躍的に進化した音楽を楽しめた時代にタイムスリップできるというこの幸福たるや。あの頃、YMOが1983年に散開してその周辺ばかり聴いていた中坊にとって、そんなタイプの音楽を探していたのだけど田舎暮しで情報量が少なかった中、ラジオから流れて来たのがこの曲。完全にテクノ。大江千里の存在を知ったのは当然初めてで、ガツンと衝撃を受けたわけです。別にYMO周辺とかじゃなくていいんだ、ソレ系の音楽が紹介されている雑誌のお薦めバンドじゃなくてもいいんだという。1人のアーティストを追うよりも自分の好きな音が聴ける曲を追えば良いというリスナーとしての基本姿勢をこの曲との運命的な出会いにより学んだわけです。アーティストにこだわらない姿勢、ジャンルにこだわらない姿勢、これは現在も自身のリスナー人生の根幹を成しています。それがこの「REAL」。今でも全く色褪せない、愛聴している世紀のエレクトロポップミュージックです。

@junnovi:
私のランキングでは第9位でしたが、センセは間違いなく第1位だろうから、コメントはお互いに先送りにしましたねw 名曲ですね。才能とタイミングの妙がなした。私のコメントにもある通り、歌う曲ではなく聴く曲とありますが、大江千里には珍しく専ら聴く曲なんです。センセにしては珍しく140字以内に収めませんでしたね。決して私みたいに感情過多な過剰さはなく、的確で素晴らしいレビューです!このタタタタとクレッシェンドするハンドクラップ、大好きですわ。

@tpopsreryo:
やはりね、思い入れが他の曲とは全然違うんです。多分1位と2位以下とでは雲泥の差くらいダントツなんですよ。あのイントロからAメロの入り方なんかは今でも清水信之のベストワークの1つだと思うしね。この曲に出会わなかったら普通にYMOオタクで終わってたかもしれないもん。

@junnovi:
確かにそんな感じやね。だって第2位が「ふたつの宿題」だもんね。違い過ぎるよ。イノセントが主な理由だなんて、第1位に比べて選出理由が弱すぎるもの。対して私はもう「贅沢なペイン」あたりからは順位なしっていっても良いくらいに拮抗してます。

@tpopsreryo:
自分は2位から15位くらいまでは一塊って感じですかね。1位だけ飛び抜けてる。もうこれは崇拝といっても良いくらいだよ。「REAL」教だよw でも歌詞は嫌いなの。ていうかそれでもこの曲ですらまともに歌詞読んだことなかったのw

@junnovi:
センセの言ってる意味、判る気がする。これだけ大江千里の言葉に影響を受けてる私も「REAL」は歌詞が殆ど入ってこないもんね。これって珍しいです。それはこうやってレビューして判ったことだけど、楽曲のアレンジが相当秀逸だからなんだろうなってね。

@tpopsreryo:
清水信之と大村雅朗という2大天才アレンジャーが熱烈にバックアップしていたからね。初期の大村憲司も忘れてはいけないけど。つくづく編曲家に恵まれてるなとも思う。ただそれらも彼の大胆にも潔いメロディ構築があってこそ。大江千里の才能も当然認めるべきでしょう。

@junnovi:
そうやね。全く異論はないです。私は大村雅朗が特に気に入ってるけれど、大江千里は周りの才能のある人に本当に恵まれたと思う。それを聴ける幸せよ。


〜エンディング〜

@tpopsreryo:
というわけで大江千里 in 80's BEST20のランキングはこれで終了したわけですが、最後にまとめとしては、もうワタシにとっては「闇深き青春の代弁者」というフレーズが気に入ってますので、その異名を送りたいと思います。

@junnovi:
長い時間、ありがとうございました。とても有意義でした。それにしても、ランキングを終えた後に、まさかこんな地平に立つことになるとは思ってもみませんでしたが、センセはそれを想像していたのでしょうか・・・。

@tpopsreryo:
大江千里の「闇」というのは1つのテーマにしようかな、と言うのは実はありましたw ただそれがあの曲によってあらぬ方向へ増幅していったのは予想外でした。想像以上に楽しかったですね、あの展開はw

@junnovi:
そっか~。その「闇」の部分は大江千里が楽曲を紡ぎ続ける原動力になっていたのかも知れないね。悲しみも寂しさも侘しさも苦しみも。やり切れない、持って行き場のない思いをそのまま歌に込めて作ったんだと。心100%の真剣勝負だからリスナーも自分の人生を投影できた。

@tpopsreryo:
特に「未成年」以降の作品に潜む陰の部分が非常に気になって仕方なくて、決して華やかなだけではない青春の1ページをちぎりとっては聴き手の琴線に触れる形で楽曲にしてしまう、そういったセンスに長けている稀有なアーティストと言えるでしょう。

@junnovi:
私はその部分は薄々感じていたと思いますが、気にしないようにして来たように今になって感じるところです。新譜として聴いていた当時から、悪魔のような冷徹な言葉は引っかかってはいたけれど、そういう闇の部分はライブやら音楽番組やらで見る陽気な姿で判らなかったです。

@tpopsreryo:
若さ溢れるイノセントな「WAKU WAKU」「Pleasure」、心の闇を存分に曝け出す鬱屈した「乳房」「AVEC」、むやみな明るさと硬派を気取った「OLYMPIC」「1234」、全てを悟り解脱した「red monkey~」、そして甘酸っぱい青春物語が儚い夢だった「未成年」。

@junnovi:
驚きと戸惑いでイッパイな状態ですけれど、こうしてみると自分自身が大江千里の音楽に求めていたものは、センセの言う「心の闇」の部分と重なるとも言えます。イノセントだけでは物足りず、解脱したのでは住む世界が違い過ぎ、虚勢を張っては共鳴するという構図です。女性ファンと男性ファンとでは、大江千里の音楽に対する受け止め方は全く違うものになるのかも知れません。これは重要な論点じゃないでしょうか。異性としてみる大江千里は、才能溢れ、スポットライトを浴びながら、弱さも見せられる新しいタイプのスターだったのでしょう。

@tpopsreryo:
そうですね、彼はデビュー当時は王子様と呼ばれてたみたいなので、音楽的な才能を持ったかわいいアーティスト登場といったイメージだったんでしょう。そしてあられもない青春を歌にできるイノセントなイメージ。でもそんなことは実際ない。彼は小さい頃から音楽オタクなんだから。特に「未成年」はラストの「♮」がそれまでの青春物語を夢オチにしてしまうという新解釈(?)も登場して、なんとも奥深い名盤であることを再認識しただけでも今回の企画の意味はあったと思います。特に内輪だけですけどw

@junnovi:
この重い曲を当時どのように受け止められたのでしょう。「十人十色ッ!」とカラフルに歌った後で、この陰鬱で絶望的なトーンをどう受け止めたのでしょう。とても戸惑ったんじゃないでしょうか。製作者側も大真面目に作ってたのが良く判りますし、真正面から受け止めますよね。

@tpopsreryo:
でも本人のコメントを見るとあの曲は「REAL」の歌詞と一緒に思いつきであっという間に完成させたってありましたよ。怖いわ、思いつきであんな曲書くなんてw

@junnovi:
えええっ!? それは! ふと「♪別れはいつもついてくる~ しあわせのうしろをついてくる~」っていう名曲がありますけど、それよりも業が根深いんじゃないんでしょうか。怖くなってきました、ホントに。冗談じゃなくて、ホントに。どうして「REAL」と一緒に作れるの?

@tpopsreryo:
要するに自動筆記的にあの曲を書いていたということですね。そういうところに無意識に「闇」が露出してるわけですよ。漏れてる!漏れてるよ!闇が!ってねw

@junnovi:
ひいぃ~! チョット暫く「♮」聴けそうにないです。ついさっきも聴いたところですけど。怖かった・・・。

@tpopsreryo:
そんな大江千里も今はジャズピアニストとしての道を歩んでいるようですが、またいつの日かPOPSの世界に立ち寄ってくれることを願いたいです。だって牧野由依に提供した「スケッチブックを持ったまま」(清水信之編曲!)も名曲だったじゃないですか。あんな素晴らしいメロディを書ける彼の帰還を気長に待ちたいです。

@junnovi:
元々声が弱そうな感じだったけど、どうも歌うのはしんどいのかな。でもセンセのいう「スケッチブックを持ったまま」は本当に久しぶりに大江千里楽曲で感動したのを覚えてますね。稀代のメロディメーカーであることには間違いないですから。で、その後、闇はどうなったのかなぁ。

@tpopsreryo:
多分彼は歌わないと闇の部分は発現しないのではないかなあ。やはり歌ってなんぼのところはあると思う。本人が歌うことで光も闇もメロディと歌詞に凝縮させることができるのでは。そういうアーティストは本当の実力派ですよね。

@junnovi:
確かにそう思う。「こっちは人生賭けてんだよッ!」っていう感じ。凄みというか、覚悟が違うというか、いや、そうしなくてはいけないという、カタルシスなのかも知れない。むずかしい・・・。

@tpopsreryo:
というわけで話は尽きませんが、大江千里 in 80's BEST20、とりとめもなくこれでお開きとさせていただきます。今回のランキング及びコメントはあくまで個人的な印象ということだけお断りさせていただき締めの言葉とさせていただきます。

@junnovi:
今回は無理言ってセンセに付き合ってもらいました。忙しいところ本当にありがとうございました。最後は私ばかりが想定外の展開にアワアワしてしまいましたが、センセも多少は得るものがあれば幸いです。ありがとうございました。楽しかったです。


「大江千里 in 80's BEST20」クロスレビュー
10位〜1位 結果

      junnovi       tpopsreryo
第1位  「フレンド」      「REAL」
第2位 「Rain」        「ふたつの宿題」
第3位 「JANUARY」       「彼女によろしく」
第4位 「きみと生きたい」   「17℃」
第5位 「魚になりたい」    「SEXUALITY」
第6位 「贅沢なペイン」    「コスモポリタン」
第7位 「塩屋」        「A MOONLIGHT EPISODE」
第8位 「回転ちがいの夏休み  「ロマンス」
第9位 「REAL」       「もう一度X'mas」
第10位  「Bedtime Stories」   「バンドをつくろう」


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