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なんらかのレビュー

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本・漫画・映画などのレビュー置き場
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「普通」じゃないのは、自由じゃない:『自分で名付ける』レビュー

「普通」じゃないのは、自由じゃない:『自分で名付ける』レビュー

例によって、めちゃくちゃ個人的な思い入れをこめた、長い前置きから始める。

結婚のメリットを結婚した人に尋ねると「弱ったときに誰かいてくれたら嬉しいじゃん」「家に帰ったとき誰かいてくれたら嬉しいじゃん」「ずっと独りだと思ったら怖くて」「孤独死はしたくない」等の返事がかえってくることがほとんどだが、それらの返答に1回も納得できたことがない。だって、一緒に暮らすってことがしたいなら、別に同棲でもできる

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「暗いところを見ようとしない人」も、悪を支えてしまう:『テスカトリポカ』

「暗いところを見ようとしない人」も、悪を支えてしまう:『テスカトリポカ』

第165回(2021年上半期)直木賞受賞作の『テスカトリポカ』、

このツイートを読んで気になって、

(まあちょっと「超異常暴力小説」と謳うのはどうかなと思ったりもするんですが)

試し読みしたらまーーー引き込まれて引き込まれて、結局電子で買って読んじゃいました。

560ページと、なかなかボリュームがある本なんですが、読みだしたら止められず、家事も仕事もほっぽって2日で読み終えました。今年読ん

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教育プログラムや現物支給より、現金給付がいいのはなぜか?:隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働

教育プログラムや現物支給より、現金給付がいいのはなぜか?:隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働

『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』 を読んでいます。

まだ全部読み終わっていないので(というか全部読み終わるかどうかはわからないので)、巻末の日本語版編集部の解説をまとめさせていただいてこの本で語られていることの大枠を紹介しますと、こんな感じです。

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・今日の世界には、「1970年代までは順調だった労働時間の減少が止まってしまった(国によっては上昇

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認知の歪みは、加害者だけのものか?:「『小児性愛』という病―それは、愛ではない」

認知の歪みは、加害者だけのものか?:「『小児性愛』という病―それは、愛ではない」

ハヤカワ五味さんのツイートでこの本を知りました。

かなりショッキングな話も出てくるのですが、最近疑問に思っていたことの答えが書いてあったり、とてもおすすめなので(3時間くらいで一気読みしました)、すごく長くなってしまいましたが…内容をまとめてみました。今後さらに書き足すかもしれませんが一旦力尽きたところで公開してみます…。

著者の斉藤章佳さんは、東京都豊島区の大森榎本クリニックに所属されている

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ダメ出しされると死にたくなるあなたへ:『アダルト・チャイルドが自分と向きあう本』

ダメ出しされると死にたくなるあなたへ:『アダルト・チャイルドが自分と向きあう本』

※この記事、私の「膿出し」みたいな記事ですごい長いです。1万字以上あります。ワークに私が回答してるところは必要に応じて飛ばしつつお読みいただけると…読みやすいかと…。それでも長いので、時々タイの地獄寺の写真を挟むことにしますね。

頭では人格否定じゃないとわかっている。それでも、ダメ出しされるとこの世の終わりのようにつらい。先日、『ジェーン・スー生活は踊る』というラジオ番組に、以下のような相談が寄

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私たちは、どのように切り捨てられているのか:『女帝 小池百合子』

私たちは、どのように切り捨てられているのか:『女帝 小池百合子』

私はこの本の執筆にかかった約三年半の歳月の中で、早川さん(※けそ注:小池百合子氏がエジプト留学中に同居していた方の仮名)だけでなく、多くの人に会った。百名を超えるだろう。何度も回を重ねて会って頂いた方もある。面会の約七割強には編集者が同道している。八割は録音をした。また録音が許されぬ場合はノートを取った。それも許されなかった場合は、面会後にメモを取っている。 録音のテープ起こしは、すべて私自身で行

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里親制度から見えてくる、「親になる」こと、育てること:里親になると決めました。

里親制度から見えてくる、「親になる」こと、育てること:里親になると決めました。

最近、里親制度のことが気になってるので、里親になることを希望している方のコミックエッセイを読みました。

里親になりたい!と思ってからの具体的なプロセスが細かく描かれてて、とってもいい漫画でした!子供の幸せを第一に考えられてるのは素晴らしいんだけど、里親になるのってほんっっとに大変なんだな〜!!

が!子供がほしいけど(体調や年齢のことなどで)自身で産まないことを考えてる人や、つらい不妊治療に悩ん

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選択肢が増えたら、呼吸はもっと楽になる:『逃げるは恥だが役に立つ』第11巻

選択肢が増えたら、呼吸はもっと楽になる:『逃げるは恥だが役に立つ』第11巻

この間、「つぶやき」でも触れましたが
『逃げ恥』の最終・11巻には
心に残るところがたくさんありました~。

(前書いたっけ?恋愛漫画だけど
 みくりさんと百合ちゃんが
 抱き合ってる表紙が
 最終巻なのも、素敵だなー)

中学生くらいの「必読漫画」にしたら
みんなもっと気持ち楽に・人に優しく
生きられるんじゃないかと思ったり…。

ということで、印象的だったシーンをご紹介します!

ちょっとネタ

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恋や愛に悩む者よ、親との関係を振り返るのじゃ:なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか

恋や愛に悩む者よ、親との関係を振り返るのじゃ:なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか

恋愛について考えるとき、親との関係を考えることは絶対避けて通れない(だから親との関係について丁寧に描いている物語は名作が多い)、って話を最近しょっちゅうしてます。

で、久しぶりに二村ヒトシさんの『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』を読んでたら、刺さるところが多すぎてうおーとなってついに泣いたりしてしまったので(私は泣きすぎなので、私が泣いたからといって説得力出にくいのだが…し

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私たちは違う国に生きているけど、それでも一緒にいることはできる:『違国日記』

私たちは違う国に生きているけど、それでも一緒にいることはできる:『違国日記』

やっぱり、この漫画に救われた記憶が色合わせないうちにレビューを書いておきたいと思いました。
思い入れのある漫画なので長文になっちゃいそうですが…。

ざっくりとしたストーリー----
高代槙生(こうだい・まきお)は
35歳の少女小説家。

群れることを好まず、ひとりの時間を大切にしていたが、姉夫婦が交通事故で亡くなり、その娘である15歳の朝(あさ)を引き取ることにする。

亡くなった姉は生前、

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お金がなくても生きていけるよ、頼るのさえちゃんとできればね:『しょぼい起業で生きていく』レビュー

お金がなくても生きていけるよ、頼るのさえちゃんとできればね:『しょぼい起業で生きていく』レビュー

著者のえらいてんちょうさんは、「朝起きるのが苦手だったため、はじめから就職活動をせず、なんの経験も計画もないまま、しょぼく起業」(プロフィールより)した方とのことで、いろんな生き方を提示してもらえるのは希望になる、とは思った。

完全同意ではないけど、参考になるところはたくさんある本。

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目次第1章 もう、嫌な仕事をするのはやめよう
第2章 「しょぼい起業」をはじめてみよう
第3章 「しょ

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結婚したら、恋愛は封印しなくちゃいけないんだろうか?:『1122』

結婚したら、恋愛は封印しなくちゃいけないんだろうか?:『1122』

いい夫婦の日ですね…。

そして、渡辺ペコさん『1122』6巻発売日…ということで

あらすじいちことおとやは、結婚7年目の30代の夫婦。

好みも考え方も近く、なんでも話し合える仲のいい夫婦だが、セックスだけは、しない。

ある出来事をきっかけに、「家庭にセックスを持ち込まない」ことにしたから。

いちこは、おとやの不倫をルール付きで認めており、おとやは第3木曜日だけ既婚者の「恋人」

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その敵は、永遠に、絶対に、あなたの敵なのか?:『進撃の巨人』

その敵は、永遠に、絶対に、あなたの敵なのか?:『進撃の巨人』

(ややネタバレありですので、今更ですが、未読の方はご注意ください)

絵がうまいに越したことはないが、それよりも大切なのは漫画力だと痛感させられる作品。

新しい方の巻はストーリーが複雑になってきて読む速度が下がったが、3日で全巻(29巻)読んでしまったよ…。

複雑で読みにくいとはいえ、メッセージについて考えると後半こそとても大事だと思う。国にしてもSNSにしても敵対ばっかりが目につく今こそ、読

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一人を見つめるとき、世界が広がっていくその不思議さよ:母ではなくて、親になる

一人を見つめるとき、世界が広がっていくその不思議さよ:母ではなくて、親になる

山崎ナオコーラさんの文章が好きだ。
シンプルなのにとても変わっているから。
たぶん変わっている(というか未来を生きている?)のは彼女の「考え方」で、それをよくこんなにみんなにわかるようなシンプルな表現に落とし込めるな、といつも感動する。

また、抑制のきいた文章だと思うのに、常に「社会」というか「世界」というかに目を向けて、情熱的に生きているところもよい(情熱的でない部分について、正直に書かれてい

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