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#映画レビュー

加害者が加害者になるまで:映画『ヒメアノ~ル』の感想

加害者が加害者になるまで:映画『ヒメアノ~ル』の感想

TBSラジオ『アフター6ジャンクション』でおすすめされてるのを聴いてからずーっとずーっと観たかった作品が、ようやくNetflixに来たので視聴。最初はラブコメに見せかけて、後半容赦ない暴力まみれになっていく、ノワール映画。

一部の点を除いて(←それについても後述します)すごーくすごーくよかった!

ということで、感想をば。
※多少ネタバレになっちゃうところもあるので、ご注意ください。

==

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映画『JOKER』について、何も言えなくなっちゃったけれど、せめてその理由くらいは書いておこうと思う

映画『JOKER』について、何も言えなくなっちゃったけれど、せめてその理由くらいは書いておこうと思う

アメコミ映画のステレオタイプは、「なんか演出が激しくて、中身自体は薄っぺらい」みたいなものじゃないかと思うけれど、少なくとも昨今の映画はそんな大味なものではない、と思う(真面目に観たのは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』と『デッドプール』くらいだけれども)。『JOKER』は、その味の「繊細さ」がずば抜けている。

ざっくりストーリー母に「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」と言われて育ったア

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私は、もう祈ることを信じられない:『天気の子』

私は、もう祈ることを信じられない:『天気の子』

(いまさらですけれども
 ややネタバレありなので注意)

恋人の推薦を受けて一緒に観に行ったが、
彼ほど熱くなれなかった。
私は今回が初見ということもあると思うけど
(彼は1回見て、町山智浩さん&宇多丸さんの評を聴いて今回2回目)。

端的な感想絵は好き。好きなキャラクターもいる。
好きなシーンもある。
音楽と練り上げられるカタルシス、最高。
が、ヒーローとヒロインの(特にヒーロー)の成長、相手が

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『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』のぶつ切りの感想

『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』のぶつ切りの感想

職場の大変文化的な先輩(たまたま一緒になった外部イベントの帰りの電車で、ガルシア・マルケスの話をして親しくなった←※ただし私がまともに読んだ作品は少ない)が「いいらしい」と仰っていたので、観た。

正直に話すと、

60%くらい寝ていた。

最近はっきりと自覚したが、私はドキュメンタリーを映画館で観るのに向いていない。どんなに興味深いテーマでも、絶対に寝る。

(ただでさえ集中力がないのに、3時間

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裏切られてもむせび泣いても、香取慎吾は前を向く:『凪待ち』レビュー

裏切られてもむせび泣いても、香取慎吾は前を向く:『凪待ち』レビュー

AERAの記事を読んで気になっていたのだけど、アトロクの映画評を聴いて、もうこれは行くっきゃないな、と。アトロクの映画評がよすぎて、それにすごく引っ張られた観方になってしまったけど、でも聴いてから行けたことに満足している。そうじゃなきゃ見逃してしまうポイントがたくさんあったと思うから。

断片的に感想をまとめておく(どちらかというと、既に観た方向けかも)。

主演の香取慎吾について・宇多丸さんも話

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レビューというにはあまりに断片的な『ウィーアーリトルゾンビーズ』鑑賞メモ

レビューというにはあまりに断片的な『ウィーアーリトルゾンビーズ』鑑賞メモ

恋人も漫画を描く人なので、恋人と映画を観た後感想を話し合うと非常に考えが深まる。話し合ったことやその後考えたことのメモ。ネタバレがあると思うので、それが気になる方は注意されたし。

・一言で言うと、「好きなところもあるけど惜しい感じ」。

最初に好きなところを書いておく。

◇独特のふわふわした感じ、これは完全に監督の武器だなと思う。「彼らが住んでるのは現実世界に見えるんだけどファンタジーだよ」、

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不気味ちゃんを見て、やっぱり好意を返されたいと思った:愛がなんだ

不気味ちゃんを見て、やっぱり好意を返されたいと思った:愛がなんだ

観終わって、いろんな思い出が雹のように降り注いでふらふらになっていたが、よくよく考えるといろんな思い出が降り注ぐのはこの映画を観たあとの反応としてちょっとストレートじゃないな、と気づいた。

なぜか。

※ネタバレしちゃう部分もあると思うのでご注意。ネタバレしてから観たって素晴らしさはちっとも減らない映画だとは思うけど。

(主人公のテルコが自分でも言ってたけど)もはや彼女の気持ちは恋とか愛とかに

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「障害のことを忘れてしまった」というポーズについて:ナイトクルージング

「障害のことを忘れてしまった」というポーズについて:ナイトクルージング

昨日、恋人と映画『ナイトクルージング』を観に行った。宇多丸さんのラジオ「アフター6ジャンクション」で勧められていて、気になっていた映画だ。
 
生まれつき全盲の加藤秀幸さんがSF映画を製作する様子を、加藤さんの友人で映像ディレクターの佐々木誠さんがドキュメンタリーとして記録したのがこの映画。昨日はたまたま舞台挨拶も聞くことができてそこで知ったのだけど、佐々木さんに「視覚障害者が出てくる面白い映画を

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いっぱいの肉体と本物の感情:岬の兄妹

いっぱいの肉体と本物の感情:岬の兄妹

この映画を、口に入れるものにたとえるならばなんだろうなあ、と考えていた。強いていうなら、鶏胸肉か。この白いのは、管か、血管なんだろうか。このぶつぶつのあるところに、羽が生えていたのか。目の前いっぱいに、むちむちと広がる肉。そういう、生き物の雰囲気。血の気配。おそろしくてコミカルな、あの感じ。味で言えば、ヤギ乳みたい。立ち上る獣の香り。いつまでもしつこく口の中に残る。

映画.comより、映画のあら

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無理して愛してくれ、それだけが本当の愛だ:『万引き家族』

無理して愛してくれ、それだけが本当の愛だ:『万引き家族』

亡くなった母がスマートフォンに残した、彼女の両親のたくさんの写真を見て、私は思った。

彼女にとって一番大切だったのは、子どもじゃなくて親だったのだな。

ショックだった。

それは、たぶん、母が亡くなったことよりも。

しかし、当然だろう、とも思っている。
私は、自分がぼんやりする時間をとることを、重い体で家事をする母の手伝いをすることよりも優先した。祖父母は違う。
おいしいものは、必ず先に人に

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