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わかったか、わからないか、わからないのに永遠に

きょうは、山崎ナオコーラさんの『ここに消えない会話がある』の中の一節を紹介します。


「わかりました」と広田は言った。「わかりました」とよく言ってしまう。言われることもある。
「わかりました」で会話が終わるのは、妙だ。「わかりました。ではこうしたらどうですか?」「わかりました。じゃあ諦めます」「わかりました。でもお願いします」。本当は、その後に何かが続く科白のはずだ。しかし、続かないのである。わかり合えないことを認識しあったかのように「わかりました」と言い合って、終了するのだ。


私は山崎ナオコーラさんの小説が好きだ。たぶん、当たり前のことを当たり前で終わらせないからだと思う。立ち止まって考えたり、真逆のことをやってみてそのものの形を確かめようとしたり。
「わかる」という言葉は不思議な言葉で、よくこの言葉について考える。私の放った言葉を、相手が私の望むように解釈してくれたかなんて、一生わからない。でも相手は「わかった」って、言う。なぜか、断言する。私だって、断言する。それも頻繁に。ほんと、不思議だ。

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