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宇多丸さんに学ぶ、映画における、いい演技とは?いい演出とは?

さて、今日は、「けそが選ぶ!私の人生に影響を与えたラジオ番組」第一位の、「ライムスター宇多丸のウィークエンドシャッフル(2018年3月に終了)」と、その意志&メインパーソナリティーを継ぐ番組「アフター6ジャンクション」の話を書こうと思います。

これらの番組については書きたいことがたくさんあるのですが、まずは目玉コーナー「映画評論」の話からしましょうか。

過言でもなんでもなく、宇多丸さんの映画評論を聴くようになってから、映画を観る楽しみが50000000000倍くらいになりました。

映画を観る楽しみが50000000000倍になった理由①:
「演技」「カメラワーク」「舞台づくり」等について、何が効果的で何がそうでないのか、非常に具体的に教えてくれるところ

今まで、映画って「ストーリーが好き」とか、「このレトロフューチャーっぽい町並みが好き」とか、「ここでこの曲がかかるところが好き」くらいの感想しか持てずに観ていました。

それが悪いわけではないと思うのですが、宇多丸さんの評論を聴けば聴くほど、注目すべきポイントが頭の中に蓄積されていって、細かいところを観るのがもっと面白くなりました。

例えば演技について、宇多丸さんの評を聴いて、「その役がどんなキャラクターなのか、周りのキャラクターとどんな関係性を持っているのか、言葉による説明だけでなく、身振り・行動やたたずまいから、厚みをもって伝えられるのがいい演技なのかな」と思うようになりました。

あるいは舞台設定や小道具、カメラワークなんかについて。観る者に、怖い/優しい/新しい印象を与えているのは、画面中の何なのか?宇多丸さんが話していたポイントを他の映画にも当てはめながら観るとすごく面白いのです。

こういう、様々な工夫は、小説にしろ漫画にしろ、ストーリーを創る人なら、自分が創るものにも活かせると思います(実際に、宇多丸さんの番組を聴いている映画監督や漫画家さんが大勢いるとのこと)。

宇多丸さんの映画評論は、TBSラジオの公式サイトで何本か文字起こしされてるので、いくつか引用してみたいと思います。
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『太陽』評(2016年4月30日放送)より
※けそ注:新人類「ノクス」と、旧人類「キュリオ」を巡る物語。「優れている」とされる「ノクス」の性質の描写について。

みんな大好き鶴見辰吾さんと、みんな大好き高橋和也さんがプールで泳ぐシーンで。細かいところなんだけど、ふたりとも息継ぎをしていないんですよね。クロールする時に。そういうところで、人間離れしたノクスの何かおかしい感じっていうか、何か人間離れした、こういう細かい演出の積み重ねでちゃんとリアリティーを出しているあたり、上手いなと思いますね。



『葛城事件』評(2016年7月30日放送)

これは本作を見た誰もが圧倒されること間違いなしの、三浦友和さん演じる葛城家のお父さん。まさにもう、「ザ・団塊の世代」って感じの、ウザ〜いオヤジイズムがですね、この家族のネジを少しずつ少しずつ狂わせていった元凶だっていうのは明らかで、そういう描き方はしているわけですよ。で、実際にこのお父さんと通り魔事件を起こしてしまう次男っていうのはお互いに憎み合っているというか、いちばん嫌い合っているんだけど、同時に2人の言動の方向性ってすげー似ているんですよね。「お前ら、似てるよ」って。あと、言動だけじゃなくてたとえば、家族も飲むものだろうに、パックから牛乳を直接飲むあの無神経さとか。「おいおい、うつってんぞ、それ次男に。お前から!」っていうことですよね。


『凪待ち』評(2019年7月5日放送)より

これ、3人とかいたら、1人にしかピントが合ってなくて。で、ピント送りで、奥の人物にピントが合って、また手前の人にピントが合って……というような、いわゆるピント送りというカメラワークが多用されている。〔中略〕このピント送りが多用される画面づくりによって、その場にいる人たち、たしかに会話はしているんだけど、あるいは家族なんだけど、心が噛み合っていない、実は心がバラバラのところにある、それぞれ実際には心は孤立している、っていうことを、その画面から強く印象付けられました。

で、これは逆に言うとですね、画面の中に映っている人たちが、同じ一線に並んで、全員にピントが合う!っていう瞬間が、終盤にあるんですね。


※全部邦画になってしまったのは、抜粋した私(けそ)の好みで、宇多丸さんはもっと幅広く評論してます。宇多丸さんが評論する映画はガチャガチャで決めており、宇多丸さんの好みとは関係なく評論する映画が決まるためです。一応、宇多丸さんが課金することでガチャガチャをやり直せることになってますが(それでも抽選なので、やり直した結果また同じ映画が当たるときがある)。
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さらに宇多丸さんの映画評論のすごいところは、上記に挙げたようなものがうまくいっていない映画も、どこがいけないのか?徹底的に、面白く、話してくれるところです。(つまらない映画に限らず、宇多丸さんの映画評の方が映画そのものより面白いときが結構ある)

宇多丸さんがおすすめしている映画は基本的に外れがないので、この番組を聴いて観に行くことにした映画はほとんどが面白いのですが、フラっと観に行った映画がつまらなかったときやいまいちツボに入らなかったとき、「どうしてつまらなかったんだろう?」「その中でも好きだったところはないかな?」と宇多丸さんの評を思い出して考えることができるようになり、1本の映画から得られるものが爆広がりしました。

(映画を観る楽しみが50000000000倍になった理由②は、また今度書きます)

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