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その敵は、永遠に、絶対に、あなたの敵なのか?:『進撃の巨人』

(ややネタバレありですので、今更ですが、未読の方はご注意ください)


絵がうまいに越したことはないが、それよりも大切なのは漫画力だと痛感させられる作品。

新しい方の巻はストーリーが複雑になってきて読む速度が下がったが、3日で全巻(29巻)読んでしまったよ…。

複雑で読みにくいとはいえ、メッセージについて考えると後半こそとても大事だと思う。国にしてもSNSにしても敵対ばっかりが目につく今こそ、読む意味がとてもあると思う。

「敵」にも普段の生活があること、味方と敵で完全な線引きをすることは本当はできないこと、集団としてしか認識していない相手(個人として向き合ってない相手)は教育によって簡単に憎めるようになること、上に立つ人は個人より人類のことを考えねばならないときがあるのか…?ということ…等、物語に載せて届けられるメッセージは、つるつると体の奥底に落ちてくる。

シーンとかセリフとかで、ずん、と胸に残るところ、たくさんあった。例えば、以下など。

□コニーが故郷の村に帰ったとき、屋根の上にいた、どこか見覚えのある顔をした巨人が、彼に「オカエイ」と言うところ

親が、自分が知っていた姿とまったく違う姿になってしまう経験って、する人が多いと思う(認知症とか)。巨人が生まれる構造の悲しさと、親がずっと昔の姿でいられない悲しさと、二重に胸が押しつぶされた。

□アルミンのセリフ 

良い人か…
それは…その言い方は僕はあまり好きじゃないんだ
だってそれって…
自分にとって都合が良い人のことをそう呼んでいるだけのような気がするから
すべての人にとって都合が良い人なんていないと思う
誰かの役に立っても他の誰かにとっては悪い人になっているかもしれないし

「いい人」について最近よく考えている。
私の上司は誰にでも本当に優しい方なんだけど、その優しさを返そうとしてくれる人でもそうでない人でも、かけてる時間が一緒のように、私には見える。時間は有限なのに、それってちょっと切ない。
かつての私は博愛主義者だったけど、最近は堂々と贔屓しようという気持ち。

□ガビとカヤのやり取り

ガビ「だから…!!100年前あんた達の先祖が犯した罪の大きさが問題なの!!」
カヤ「…100年前って …じゃあ 今生きている私達は…一体何の罪を犯しているの?」
ガビ「…ついこの間だって…私の街を蹂躙した…」
カヤ「…私のお母さんが殺されたのは4年前だから…その罪じゃない」
ガビ「…だから!!先祖が世界中の人を虐殺したからだって!!」
カヤ「お母さんは誰も殺していない!!」

LINEで知らない韓国人とチャットできるというアプリがあり使ったことがある(翻訳が自動で入る)。向こうが「セックスしたことある?」と聞いてきたので(まあそういうアプリなんだろう)、真面目に答えなかったら、突然相手は「独島は韓国の領土だ!」等のメッセージを送ってき始めた。
いつも不思議なんだけど、私は国とか民族同士の問題をそんなに自分ごととしてとらえられない。それに対して怒りをぼうぼうと燃やせない。
でも怒ってる人は、どうしたらいいんだろう。
どちらが正しいかとか、誰に判断してもらったらわかるんだろう。口論したいと思ってる相手がもう死んでたら、誰に話したらいいんだろう。

---ここからはおまけ--

・ギャグセンスが独特すぎる。めちゃめちゃシリアスなシーンで突然ボケてくるので、読んでる側としては笑っていいのかわからぬ。特にハンジさんの、エレン中二病いじりがひどい。

・キャラだと、ジャンとハンジさんが好き。サシャが敬語だった理由を知ってから、サシャも好きだなと思った(食いしん坊なとこもいい)。アルミンとライナーは、好きよりもっと深いような気持ち。ずるいところに親近感を感じるからだと思う。



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