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『青野くんに触りたいから死にたい』の、印象的なシーンベスト3

椎名うみさんと押見修造さんの対談がめちゃめちゃおもしろくて(漫画を描く人が読んだら学ぶところがとても多いと思うし、読み手としても一層深く読めるヒントがもりもり)、もっと多くの人に『青野くんを触りたいから死にたい』を読んでもらって椎名さんをハイパーお金持ちにしたい!という気持ちが高まったので、印象的なシーンランキングを開催します。

※私は、よいクリエイターはみんなハイパーお金持ちになる世の中にしたいです。ちなみに押見修造さんにも同じことを思ってますが(すごい漫画を描く人…)、まだ読めてない作品が多いので今回は椎名さんにフォーカスします。

前にも『青野くん』の感想について書いたのですが、シーンをがっつり示したら、もっと『青野くん』の素晴らしさが届く人が増えるに違いない!と思い、再挑戦することにしました。

【注意】
『青野くんに触りたいから死にたい』は、幽霊の青野くんと人間の優里ちゃんのラブストーリー?です。怖いところはとても怖く、エロいところはとてもエロい。

この記事では怖いところも紹介するので、苦手な方は気をつけてください!

第3位

わたしの匂いだ!!(1巻)

『青野くん』が只者でない、と確信したのはこのシーンです。
本当は2位だなとおもうのですが、前書いた感想シーンでも触れたこともあり、導入にしたい気持ちもあり、3位にしました。

引用した最終ページの2コマめ、優里ちゃんが泣いているところ、このコマの次は並の漫画家だったら「なんで…」とか「青野くん…」とか、そんな台詞を入れると思うんです。

そこで、「わたしの匂いだ!!」です。

誰かと初めて手をつないだとき、抱き合ったとき、一般的に最初に感じるのって「あったかい」とかだと思うんですね。つまり、自分じゃない、という感じ。「あ、この人はたしかに存在している…(今までは私の妄想の中で朧気にしか存在してなかったのに…)」という感覚、というか。

初めてこんなに至近距離に入ったのに、感じるのは「わたし」の匂いであること、この漫画の悲しみを象徴してるシーンだなと思います。

第2位

青野くんと優里ちゃんのセックスシーン(4巻)

前述の対談でも取り上げられていたシーンです。

幽霊の青野くんと人間の優里ちゃんがセックスするのは、やっぱり並大抵のことじゃなくて…ここに至るまでにとても切ないやり取りがあります(そして二人が行為に至った経緯が、また切ない…)。
なので始まったとき、私は涙でぐっしょぐしょでした。

そこからの、

セックスシーンで、歯がこんなふうに描かれた漫画がかつてあったでしょうか。

前述の対談では、それまで客観的な視点だったのがこの歯のコマでいきなり主観になるという指摘を押見さんがされたりしてるんですが、私は数ある体の部位の中で「歯」が選ばれた、ということが、やっぱり気になります。

ふつう、セックスシーンで強調されるのって、湿気とか温度とか柔らかさとかだと思うんです(下着の描写は、その気配を感じますね)。

そこに、人間の部品だけど、あったかくもなく、硬い壁みたいな「歯」。

下の汗だくの優里ちゃんの顔のコマと、この歯のコマ、色でいったら赤と青くらいの開きがあって、この緩急がすごくおもしろいなーと思いました。ちょっと骨を連想させる感じもしますよね。生死の対比もにおっているような。

あとは、こんなに記号みたいに描かれてる「歯」、実際は死んだ人の本人確認に使われたりする。一つの絵で、「普遍」と「オリジナル」の対比がされてるって意味でも、面白いよな…と思って読みました。


第1位

黒青野くんの顔(3巻)




ちょっと、心の準備をしますね…。



すーはー



すーはー


はい…







こええええええええ




この顔が怖すぎて、私実は3巻の該当箇所に近いところ、買ってからほとんど開けてません。
たぶん、この記事も、今後あんまり開くことはないと思います(考えるだけで怖いから)。

幽霊の青野くんはときどきモードが変わってしまうことがあって、そのモードになると生前の青野くんのキャラクターとはまったく別人になります(これを優里たちは「黒青野くん」と呼んでいる。「西東京市」みたいな不思議な言葉ですね)。

無表情も怖いですけど、一番怖いのって「なぜか笑ってる」顔ですよね。なんでか考えてたんですが、「怖い」ことを分解すると「わからない」ことで、その「わからなさ」が深いから、じゃないかな…と思います。

笑顔は共通言語ってよく言われるけど、全然そんなことないじゃん…という絶望からくる怖さというか。

漫画って映画とは違って自分でページをめくるので、ホラー漫画を読むのにはすごく勇気がいりますね。というのを、『青野くん』で私は学びました。

(ちなみに前述の対談では「怖い」にはもう一つ種類がある話もされていて、ほえーー!!となりました)

【特別賞】
これ前にも書いた気がするんですが、不登校の美桜ちゃんの家に優里ちゃんがプリントを届けに行くシーン(=二人が初めて会うシーン)、全体的に好きですね。(1巻)

美桜はホラー映画が好きなんですけど人間は苦手、って女の子で、連絡なしに訪問してきた優里に彼女が驚くところから二人の時間が始まるんですが…

(まあまあ冷静なおばあちゃんのすごさ)

そのあと、二人でどら焼きを食べるんですけど、これたぶん意識的にそうされてると思うんですけど、

スカーフが重なってることによって優里は巨大なおたまじゃくしを食べてるようにしか見えません。

(終わったあとの二人が礼儀正しくてまたおかしい)

あと、美桜が、友達になった優里が遊びに来るのを楽しみにしてるところ、この描写が、めちゃめちゃ好きです。(2巻)


おばあちゃんがカルピスはおもてなしと思ってるとことかも…いいですよね…。

(要するに美桜ちゃんが好き)

(というか、メインの登場人物はなんかもうみんな好きだな…)

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