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コンテンツ月記(令和三年、水無月)

読んだもの、観たものを、書きなぐりのメモで記録します(完読できてないものも、書きたいことがあったらメモします。

すでに長めのレビューを書いてるものは、基本的に除いてます(…と言いながら、ここで書いてる感想も割と長いんだけど)。

==評価基準(特に記載したいときだけ)==
\(^o^)/ 乾杯。愛。最高の毒なり薬。
φ(..) 特別賞(今後思い出すだろうシーン有等)
==ココカラ==

■マンガ

ピンポン(1~5巻)\(^o^)/

実写版の映画をむかーし観たことがあって、ペコの台詞が面白いってこととARATAかっこいいってことしか覚えてなかったけど…笑、今漫画で読むと全然印象が違うな…。
運と才能と努力、人間同士の影響力、がんばった人だけがたどり着ける場所を描いた物語だった。

キャラクターがみんな魅力的なんだけど、中国でエリートとしての居場所を失い背水の陣でもがく「文革」、努力の鬼「佐久間」、常勝のプレッシャーと孤独に戦う王者「ドラゴン」が特に好き。

「努力をしたからと言って、誰よりも時間をかけてるからと言って、一番上手になれるとは限らない」「かつて才能をもたはやされた者でもそれが永遠に続くとは限らない」「誰もが憧れるてっぺんにいる人にだって、その人・その立場なりの孤独と苦しさがある」などなど…、私が吹奏楽部で学んだ世の中の残酷な真実の数々がヒリヒリと描かれててあちこちで胸が痛んだ。最終巻の落としどころが大好きだった。

そしてやっぱり、松本大洋の漫画表現って唯一無二だ。

帯に「274cmをとびかう140km/h」って書いてあったんだけど、こういう風に空間を強調した売り文句をあえて取り上げていること、読むと納得。手で持てる大きさの単行本なのに、卓球台がすごーーく広く感じるんだよね。

漫画を貸してくれた恋人は「コマごとのポイントが、読んでいる人の目を左右に大きく動かすように計算されて描かれてるからじゃないかな。あと構図が劇的だから」と言ってた。
え、そこにカメラ置くの?って描き方とか、妙に細かいコマ割り急に持ってきたりとか、工夫が山盛りなんだよな。楽しくてかっこいい絵。独特の言葉遣いと相まって、この人にしかつくれない世界が立ち上がってる。

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侍女の物語(グラフィックノベル版)φ(..)

小説版読みたいーとずっと思いながら読めず…恋人が図書館で借りてきていたこちらを読む。

ギレアデ共和国の侍女オブフレッドは、司令官の子を産むための存在だ。監視の目に怯える彼女だが、ある日、交流が禁じられている司令官の部屋に招かれる。
(Amazonのあらすじより引用)

ということで、女の自由が堂々と奪われた世界の話。

あらすじだけ聞いたときは、「最初からそういう世界って設定なのかな?」って思ってたんだけど、そうじゃなかった。
それまでは女性も働いて暮らしていた世界のルールが突然変わっちゃう話だった。女性たちは解雇され、女性名義の口座を持つことが許されなくなる。(女性がどうしようもなくうろたえても、夫は「大したことじゃない」って軽くいなすのがますます絶望的だった)
子を産む係りに指定された者たちは、同じ服を着ることを強いられ、自由な会話をすることも許されない。
(その中でも、なんとか同志と繋がろうとする女性たちのたくましさ…)
昔の女たちはもっとひどい目に遭ってたんだから、今はよっぽどましなんだから、と何度も刷り込まれる…。

ディストピア小説のはずなのに、日本の状況とリンクするところが多すぎて泣く。「オブフレッド」って名前の秘密が明かされたときとかさ…。

役割に応じて決められた衣装、絵がある物語ならではの美しさで、グラフィックノベルの表現が活きててよかった。

AmazonだとKindleでもえらい高額だけど…ほんとにこの値段なのか…?

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ライチ☆光クラブ

工場の煙に覆われた螢光町の片隅にある、「光クラブ」と名づけられた少年たちの秘密基地。その場所で、ある崇高なる目的のために作られた「機械」が目を覚ました。「機械」の正体とは――!? 80年代、伝説の劇団「東京グランギニョル」の舞台を、鬼才・古屋兎丸がマンガ化した衝撃作。
(Amazonのあらすじより)

アングラ劇(なのかな?)、ずーっと観てみたいと思ってるんだけど、ずっと観られずにいて、まずはマンガを読んでみる。古屋兎丸が描いたというのも気になって。

エログロ満載で目を覆いたくなるけど、やっぱり美しくてどうしても観ちゃった映画、園子温監督の『奇妙なサーカス』を思い出す雰囲気があった。

↓これ。だいぶえぐられるので元気な時に観たほうがいいとは思う。

(これを描くとややネタバレになっちゃうかもしれないけど…)
少年たちにとっての『まどか☆マギカ』みたいな面のある展開で、やや意外だった。

「心を持たない機械が人との交流を通してだんだん心を学習していく」という流れはよくあるけれど、この機械の動力が「ライチ」(楊貴妃が愛した食べ物で、美の象徴)なのが面白かった。あと、世界で一番美しくて残酷な遊び(だと私が思うこと)をモチーフにしたくだりもあってよかった(どんな遊びなのか知りたい方はここを読んでください)。よくこんな遊び思いつくよな…。

古屋兎丸の漫画ってそんなに読んでるわけじゃないけど、この劇を観て刺激を受けたことが『女子高生に殺されたい』に繋がったりしているのだろうな。

しかし、美少女に背負わされるもの、いつも重すぎると思う。

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■映画

なぜ君は総理大臣になれないのか\(^o^)/

Netflixで観る。

政治について、組織について考えさせられる映画でとてもよかった。

自らの理想を決して手放すことなく逆風に立ち向かう政治家、小川淳也。政界の荒波にもまれながら臆することなく奮闘を続ける男の17年間に迫るドキュメンタリー。
(Netflixのあらすじより引用)

タイトルから、「『総理大臣におれはなる!』的なことをずっと豪語している理想主義の若手を追うドキュメンタリーなのか?」と思っていたけれどそうではなかった。たしかに小川さんは、「政治は、国民のほうを向いたものであるべき」という理想をずっと持ち続けるけれど、それだけではやっていないこともよくわかっている。だから観ていてつらかった。今の日本の政界、こういう真っ直ぐな人が自分の志を曲げずにトップに立つのが難しい世界なのだ…。きつかったな…。

たとえば、外側から見ていると「党内の派閥争いとかバカバカしいよ!ちゃんと戦うべきものと戦ってくれー」と思うけど、誰かのチームに入らないと、党内の重要ポストに就けない。それは、発言力がないのとほぼ同じことなのだと。かといって無所属を選んだら、ますます議会内での発言力が減る。政策の勉強会等にも参加できなくなる。なるほど…。

総務省を32歳でやめて出馬した小川さん。
「省庁の中では、昨日やったことをまた明日も繰り返すばかり。本来旗振りは大臣がすべきだけど、大臣は実際は外部の顧問みたいな存在で、事務次官が社長みたいなもの。実際に一番権力を持っているのは省庁OB。このままではダメだと思った、政治から変える必要があると思った」と話す。

こんなに志を持っている小川さんだけど、家族は彼の活動を苦い思いで見つめている。例えば、小川さんのお連れ合い。選挙活動をサポートするため、幼い子供たちを義実家に預けなければならない。「子供たちの未来を良くするためだとは思うけど…でも今だって大切だし…バランスが難しい」と話す。
成長した娘さんたちも、路上でチラシを配ったり、投票呼びかけの電話をかけたりと選挙活動を手伝うようになる。でも小学生のときは、父親の顔のポスターが学校の近くに貼られているのが嫌だったという。「政治家にはなりたくない。政治家の妻にも」と話すお二人。いろいろなことを勘案して民進党を離党し、希望の党に入って出馬することにした小川さんと一緒に街頭を回るお嬢さんたちが、街の人に厳しい声をかけられるのを観てほんとにつらかった。みんながやってる選挙活動じゃ、小川さんの思いは伝わらないんだよな。でも、小川さんが心を込めて話せるような場所に来てくれる人は、そもそも小川さんを支持してるわけで…。むむむ。

(代々政治家の家計、というような)後ろ盾がない人は、家族を巻き込み、自分の生活を犠牲にしないと政治家になれないのっておかしいよ…。

「政治家って、悪い職業のイメージが強いですから」と話し、自他ともに「政治家向いてないかも」と感じながらも、歯を食いしばって、それでもなんとか社会をよくしたいと頑張る小川さん。気持ちが入った言葉に、何度も涙が出そうになった。

どうすれば、政治に興味ない人や政治は変わらないと思ってる人に、「人間の心を持って働いてる人もいるんだよ、期待できる政治家だっているんだよ」って、届けられるんだろうっていつも考えているんだけど(私の払った税金を、一部の特権階級だけが得する構造のために使われたくない!社会がどんどん壊されていくのに耐えられないんだよー)これを観てもらったら、少し感じてもらえるところがあると思う。どうしたら観てもらえるのかなあ…。中学の公民の時間とかに、流したらいいと思うんだけどな。


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