リス詩人会

文芸創作など。最近やってないので過去作品置き場です。肩にリスを乗せて詩を朗読していた仲…

リス詩人会

文芸創作など。最近やってないので過去作品置き場です。肩にリスを乗せて詩を朗読していた仲間たちは美しい思い出を胸にそれぞれ別の道を歩き始めました。名刺代わりにどうぞ。

最近の記事

簡単に作れる手のひらサイズ8ページ本

材料は100均と世界堂で仕入れました。 まずは消しゴムはんこですが素材と彫刻刀を100均で仕入れました。絵心ないですが工作はそれなりに得意なのでリスの画像を見ながら描いて彫りました。 A4用紙を折りたたんで8ページ本を作るフォーマットないかなと検索したらあったのでそれを使ってPDFデータを作成。本文はツイッターで話題のマイクロノベルに自分で書いたやつがあったので6作品を選びました。 紙は世界堂で買った印刷できる良い紙を使用してます。良い紙はまとまった数でしか売ってないの

      • ガラス瓶の中に森(2321文字)

         東の森を抜けた先には別の町がある。年に一度の夏祭りにだけ行商がやってきて、ガラス細工の置物や綺麗な景色が描かれた絵を売っていた。とても値段が高く手が届かないにしても、見ているだけで外の世界と繋がっている気がした。  いつからか行商は来なくなった。そういえば行商から商品を購入した人を知らない。貧しい人ばかりの町で行商は商売などする気はなく、集めた宝物を見せびらかしたかったのかもしれない。  日々の生活は忙しく、人々は外の世界など忘れて暮らしていた。それぞれ守る物があって、その

        • 社会小説化計画(3612文字)

           俺の通っていた小説講座は優秀な人ばかりで中でも卓越した才能を持ち俺を嫉妬させたのが天才チンパンジーのオルソン君と人工知能NNー1127の二名で彼らの文章には不思議な力があって「ぐりとぐら」を一字一句写経しただけでも読者に野性的だったり未来っぽい印象を与えることができた。彼らの外見や社会的地位が読者に先入観を持たせているのではなくフェロモンや電磁波が読者の脳を刺激して作品に魅力を与えていた。これを中身で勝負していないと批判するのは簡単であるが実際に彼らを前にしたとき前述の能力

        簡単に作れる手のひらサイズ8ページ本

          光を求めて(3394文字)

           こんなところから抜け出して美味いものでも食いに行こうよ、とでも言いたげな須藤の顔を無視して俺は懐中電灯の明かりを消す。背の高い木々に囲まれて月明かりも届かないため何も見えなくなる。  一般的に幽霊は夜に現れるとされる。しかし暗闇の中では存在を認識しようがない。声が聞こえるとか寒気がするとか、そういう能力を持っている幽霊もあるのかもしれない。まだ須藤は死んでから間もないからか、俺に付いて回ることしかできないらしく、光に触れると透けた体が浮かび上がる。立体映像みたいだ。  

          光を求めて(3394文字)

          迷子のキリン(3446文字)

           キャラクターとして成功しやすい動物はネコウサギネズミあたりが主であるけど逆にキャラクターとして成功しにくい動物は何かと考えた結果に挙げられたのがキリン。  キリンは高い場所に生えている木々の葉を食べるために首がとても長く背が高いため視点も高く足下は見えていないけれど遠くまで見渡せるし円の中心から弧を描いた範囲なら地面に生えた背の低い草なども食べられる。  キリンの特性をキャラクターとしてデフォルメした場合とても長い首と高い身長ゆえに他のキャラクターと別格になりやすい。ネコな

          迷子のキリン(3446文字)

          愛は幻(3399文字)

           職員室へ向かう小松綾香の足取りは重くも軽くもなかった。スカートの折れ目みたいに一定の間隔で右足と左足を動かした。同時に左腕と右腕が前後に揺れた。ボリュームがあってツヤのない黒髪は束ねるわけでもなく肩にかかっていた。ブレザーに縫い込まれた名門女子校を意味するワッペンは学校の外では威厳を示すものの、校内では珍しいものではなかった。彼女の表情からは何も読み取れない。しかし学校という空間で毎日顔を合わせるクラスメートや教師なら小松綾香の気分を想像することができた。面倒な用事があって

          愛は幻(3399文字)

          時間配分と付き合う人と住む場所(3354文字)

           父からの電話を無視する。着信履歴に気付いてから、どうせ大した用事ではないと思う。緊急を要するならばメールで何があったか伝えるはずだ。   先日、久しぶりに父から電話があって、焼き肉を食べに行かないかと誘われた。僕は実家の近くにあるアパートに住んでいて、普段はあまり良いものを食べているとは言えないので、ご馳走してもらえるなら嬉しいのだけど、用事があって外出中であったために断った。それほど大切な用事というわけではなく、数日前に予定を空けといてくれと頼まれたなら調整できた。  悪

          時間配分と付き合う人と住む場所(3354文字)

          スペシャルサンクス(3441文字)

           割と深刻に悩んではいるのだけど、いつでも呼べば来る友達というのが、ろくでもない奴らばかりになってしまった。  詐欺まがいの商売をしているとか、何らかの反社会的な集団に属しているとか、そういう種類のロクデナシというわけではなく、とにかく自分の世界から出てこないタイプである。  例えば友人Aはネットゲームの世界で日夜冒険の日々に明け暮れており、友人Bは動画投稿サイトで動画を投稿したり動画を閲覧したり、友人Cは漫画家を目指していたが半ば諦めて定職に就くわけでもない。それぞれ実家住

          スペシャルサンクス(3441文字)

          機械少年 (6354文字)

           機械には感情がある。機嫌が良ければ文句も言わずに働いてくれるし、調子の悪いときは頑なに動いてくれないこともある。  決められた仕事の他に余計なことをせず、例えばダイエット中の人間にお菓子をプレゼントするようなことがない。  しかしジョージ・フランクリンの開発した改造バーコード読み取りマシンは違った。真夜中に甲高い機械音を鳴らし続けフランクリン一家全員を目覚めさせた。長男のゴードンは怒りのあまり、弟の発明品を叩き壊してしまった。ジョージは悲しさのあまり泣きながら朝を迎えた。彼

          機械少年 (6354文字)

          帰還者 (4828文字)

           頭が冴えてきた。あの宇宙船から降りて、どれだけの時間が経っただろう。カレンダーを見ると今日は4月14日。もう2週間か。  地元の研究施設に戻ってからも仕事に没頭してそれ以外のことは考えられなかった。そうしないと正気が保てないと思ったのだ。 「やあジョージ。休息も取らずに大丈夫かい?」  職場の相棒が声をかける。 「トマス。心配してくれてありがとう」  ジョージは不自然さのない作り笑顔で答える。そして忙しそうなそぶりを見せて、相手に気遣わせ、会話を長続きさせようとしない。  

          帰還者 (4828文字)

          昔の仲間 (2275文字)

           きっかけはコータローからの連絡だった。 「こんど同期を集めて宴会をするんだけどアンナも呼ぼうと思って」  以前、私とコータローは同じところに勤めていた。私は既に転職していたが、コータローは同じ仕事を続けている。  人に言えない職業というわけではないけれど、ここにその職業名を書くと先入観を持たれてしまう気がするので書かない。特殊な仕事だった。同期は家族のようであり、同じ罪を背負った仲間のように結びつきが強かった。彼らの下を離れて普通の仕事に就くことが裏切りであるかと思わせるほ

          昔の仲間 (2275文字)