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応募が集まる求人広告の書き方をHRセールスのプロ人材に聞いてみた——Traimmuセールスマネージャー・松岡良次インタビュー

「人が足りない…」「いい人いませんか?」——ライターという仕事柄、経営者の方や採用担当の方と頻繁にお会いするのですが、そのたびにこの話題になります。中小企業、スタートアップなら何となく想像がつきますが、誰もが知る大企業であっても、採用には困っているのだそうです。

とはいえ、最近は採用方法も多様化してきています。大手求人サイトを利用したマス採用以外にも、めぼしい人材にダイレクトでアタックする「スカウト採用」や、社員からの紹介でアプローチを行うリ「ファラル採用」など、ありとあらゆる手段で社員候補と接触できる時代になりました。

ツールも増えてきているので、自社で求人広告を書くケースも増えています。弊社Traimmuも、自社で運営している長期インターン採用に特化した求人媒体「InfrA」で、各部署の担当者が求人原稿を書きます。登録学生の数が急速に増えていることもあり、優秀な学生にアプローチしようと必死です。

僕も、その例外ではありません。現在は広報PRも任されているので、広報インターンの採用を任されています。とはいえ学生時代からライターをしていましたし、ましてやタイトルや見出しは得意分野。「2日もあれば、超優秀な学生から連絡が来るだろう」と思っていましたが…


求人広告を書いてみて分かったのですが、いわゆるメディア記事と求人広告では、書き方が全く違うのです。飾った言葉を並べても、なかなか刺さらない。とはいえ他社の応募を見てみると「そんなにかっこよくないのでは?」と感じる求人広告でも、応募が殺到していることも。この違いは、どこからきているのでしょうか…。

そこで今回は、弊社のセールスマネージャー松岡に、採用につながる求人広告の書き方について話を聞いてみました。松岡は人材業界7年目。大手からスタートアップに転職しており、業界について詳しい頼りになる社員です。他社の求人広告を代理で作成し、秒速で応募を集めることもしばしば。「1週間で10応募」なんてこともしょっちゅうです。

松岡は「母集団のための応募広告を作成しているのではなく、事業発展につながる求人広告作成を意識している」とよく話しています。書いて終わりじゃない、事業発展につながる求人広告について、インタビューしました。

応募が集まる求人広告のコツ「ポジション・待遇・ミッション」

—— 松岡さん、求人広告に「書き方のコツ」ってあるんですか?

松岡:結論から言うと、あります。多分お聞きしたいのは、「母集団を集める」求人広告の書き方ですよね。長期インターンを採用したいのであれば、学生にはクリエイティブ系の職種が人気なので、「営業」ではなく「企画営業」と書いてみる。

また授業がある分、出勤日数の確保が難しい。出勤日数を「週2日から」、もしくは「土日勤務可」にしてあげると、募集が集まります。週3日以上になると学生が日程を調整する必要がありますが、土日を含めて良いのなら、指定された条件のまま応募できるのです。

—— なるほどですね…。「営業」を「セールス」と表記するだけでも、印象が変わりそうです。

松岡:もちろん、そうした側面もあります。「営業」というだけで、「厳しい」といった先入観を持ってしまう学生もいるので。

—— 中途採用に効果的な求人広告の書き方はありますか?

松岡:「ポジション・待遇・ミッション」の3つを必ず明記することですね。ポジションとはつまり、「どのような役割を任せるか」です。「未経験の方も管理職候補の対象です」と書くだけで、応募が大幅に増えます。

待遇とは、「年次有給休暇10日」といった、いわゆる衛生条件です。ワークライフバランスを気にする方が多いので、働きやすさを前面に押し出すこともよくあります。

最後のミッションは、文字通りです。「なんのためにやるのか?」が明確だと、応募しやすくなります。

また「こんな私でもエンジニアになれました!」といったコピーがあると、それだけで応募が増えますね。

—— 仕事内容は同じでも、求人広告の書き方次第で応募率は変わりますか?

松岡:もちろんです。求人広告を書くライターによって、応募率が全然違います。特定の業界・仕事に詳しい人であれば、「どのような切り口がウケるのか?」が分かるので、引っ張りだこですよ。昔はライターが指名制だったので、特定のひとりに仕事が集中することがよくありました。

仕事内容を「具体的に」書くべき理由

—— 僕が書いた求人広告を見てほしいです。InfrAのスカウト機能を利用して1名採用できたのですが、応募はあまり集まりませんでした。

松岡:内容を見てみますね…。

なるほどです。必須項目の部分ですが、「長期インターンを通じて『自分を成長させたい』という想いを持っていること」では、表現がふわっとしていると思います。

松岡:学生の視点に立てば、「自分に合っている」と思うから、応募するわけです。たとえば、デザイナーなら「アイコンや挿絵など簡素なイラスト制作ができる」「Sketch・Illustratorなどのデザインツール使用経験」といったように、より具体性を持たせてあげたほうがいい。具体化すると「自分のことだ!」と思ってくれます。

また、仕事内容はもう少し具体的に書いたほうがいいと思いますね。

—— なぜでしょうか?

松岡:求人広告において重要なことは、大きく「魅力付け」と「不安払拭」の2つです。不安払拭の方法として、「どのような仕事内容なのか」と「誰と一緒に働くのか」を明確にすることが挙げられます。

先日、InfrAを通じてインターンに参加した学生さんに話を聞いたところ、「仕事内容が詳細に書かれてあったので、応募しました」とおっしゃっていました。仕事内容が事前に分かっているから、不安がなかったそう。それくらい、不安払拭は大切なのです。

でも、「小手先頼り」はイケてない

—— 教えていただいた通りに、修正してみます。これで、たくさんの方から応募がきそうです!

松岡:でも、小手先のテクニックに頼るのって、正直イケてないですよね。求人広告をうまく書いて応募をたくさん集めても、実態を語らずに話を盛っているのだとしたら、入社後に辞めてしまいますし、選考段階で辞退されることもあります。

—— たしかにそうですね…。

松岡:いわゆる本末転倒です。求人広告を作成する目的は、「求める人物像を採用し、その人材が活躍することで、事業成長につなげる」こと。究極的には、「1応募・1採用」くらいが理想なのです。欲しい人材を明確に定義し、その一人を採りにいくべきです。

しかし、しばしば母集団を集めることが目的化してしまいます。それでは、本来の目的はいつまでたっても果たせないのです。

—— 反省しています…。

松岡:でも以前、私にも「自分のことしか考えられない」時期がありました。「一番になる」ことだけを考えていたので、業績目標を達成することだけを考え、本来の目的を履き違えていたのです。

—— 詳しく教えていただけますか?

松岡:前職、エン・ジャパンに在籍していた頃のこと。当時は有効求人倍率が0.93倍で、求人広告の営業活動にとって苦労が多い時期でした。とはいえ、広告が売れなければ社内からお怒りの声が聞こえてくるし、たとえ売れても採用ができず取引先に怒らてしまう…という激しい環境だったのです。

松岡:とにかく生き残りに必死だったので、机上の空論の提案で発注をもらおうとばかりして、よく当時のマネージャーに叱責されていました。もちろんそのような考えでは、広告を掲載しても、人材の採用にはつながりませんでした。

ただ、とあることがきっかけで、成果が出せるようになったのです。

—— どんなことがあったのでしょうか?

松岡:いくつかあるので、代表例をお話しさせてください。入社して間もない頃からお付き合いのあったクライアント様で、エンジニア採用に力を入れている企業がありました。実際に採用ができていたので勝手に満足していたのですが、実は、“理想とする人材”の採用には至っていなかったのです。

つまり、不満があっても「言わないだけ」のサイレントクレームです。ついに、「もう利用するのは辞めようと思っている」と告げられてしまいました。

—— おっと…。そこで、どのような対応をしたのでしょう?

松岡:「ラストチャンスをください」とお願いしにいきましたね。そのときに、自分のことしか考えていなかった自分にチャンスをくれたことが嬉しくて、何としても採用を成功させようと本気になりました。

現状の広告の何に問題があるかも分からないし、どのような表現をすればいいのかも思いつきません。人材業界に入って間もないペーペーですから、正解なんて持っていないわけです。もう、「やるしかない」という状況です。

そこで、こちらがまだ把握できていない隠れた情報を必死に探しました。また社長自身が気付いていない会社の魅力を見つけようと思い、労働条件通知書を始めとした内部情報を見せてもらうようにお願いしました。すると、これまで触れられていなかった事実が出てきたのです。

—— そこで、内容を書き換えたわけですね?

松岡:その内容を全面的に押し出しました。ラストチャンスを何とかしてものにしようと全力を尽くした結果、過去最大級の大成功になったのです。以降、その成功に準ずる結果が出続け、10社以上の紹介をもらい、雪だるま式に成果がでるようになりました。

そして、エン・ジャパンの地方拠点からも「成功要因を教えてほしい」と内線が発生するようになり、IT業界の採用相談をよく受けるようにもなっています。

—— その案件に限らず、それ以降も成功が続いたと…。その要因って何でしょうか?

松岡:「求人広告を作成するために効果的な材料」を引き出す力が身についたからだと思います。ヒアリングの際に「効果的な材料」を引き出すためには、採用市況の理解は前提として、業界・事業・職種・仕事・人(経営層を含む)・文化の理解が求められます。

さらに、魅力度が上昇する情報を掴むため、深入りすることを意識するようになりました。任せる仕事内容ひとつとっても、「裁量権の大きい仕事です」と「経験が浅い人でも上位レイヤーの仕事を任せます」では、解像度が変わってきます。

また、写真一枚で雰囲気の理解度が変化します。会社の社風をピンポイントで表せる写真はなんなのかと追求するだけで、自社に合った人材が応募してくれる確率は高まるでしょう。

そうやって相手のことを考えられるようになったら、成果が最大化をされていったのです。

—— 結局、小手先のテクニックに精を出したところで、本当の意味での成功はできないということですね。

松岡:その通りだと思います。求人広告で最も大切なのは、募集背景。なのに「そもそも、なんで募集するんだっけ?」という本来の目的を見失うと、母集団を集めることに必死になり、本当に欲しい人材以外を採用するなど、

どんな仕事もそうですが、目的から考えるのが大事。求人広告も、本質を見失わず、妥協せずに取り組めば、欲しい人材に巡り会えると思います。

Text by Text by オバラ・ミツフミ
All Photos by 岡島たくみ(株式会社モメンタム・ホース)

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