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なぜ自分のキャリアに興味のない男が、若者のキャリア支援を仕事にするのか——Traimmuマーケター・奥村壮太インタビュー

ツイッターのタイムラインを眺めていると、「朝活」「オンラインサロン」「プログラミングスクール」…などなど、キャリアを意識した活動に活発的な方の意見をよく目にします。そうした光景を見ていると「最近は、自己投資に積極的な人が増えているのだろう」なんてことを考えます。

しかしあくまで、これもタイムラインとしての世論。NewsPicksに公開された記事では「日本のサラリーマンは先進国一勉強していない」ことが明らかにされた上で、「自分のキャリアは自分で創るという自律的なマインドセットがない」といったことが指摘されていました。

ただ、キャリア形成のために働くことが、果たして本当に理想なのかは分かりません。何を大切にするかは個人の価値観によるため、「キャリアを開拓しようと必死」なことが素晴らしいとは、一概には言えないのではないでしょうか。

株式会社Traimmuのマーケター奥村壮太は、「自分自身のキャリアについて考えたことはない」と話します。「達成したいビジョンがあるので、ビジョンを達成するために仕事をしている」のだそう。

Traimmuが展開する事業は、日本の若者が、早期からキャリアを考えるためのプラットフォーム「InfrA」の運営です。なぜ奥村は、自分自身のキャリアに興味がないにも関わらず、若者のキャリア支援を仕事にしているのでしょうか。

生存戦略としてのキャリアより、やりたいことドリブンなキャリア

—— 奥村さんはTraimmuに入社する以前、海外でスタートアップを立ち上げていた経験があるとお聞きしました。まずは入社までの経歴について、お伺いさせてください。

奥村:大学を卒業後、美容業界に特化した求人サイト「リジョブ」を運営する株式会社リジョブに入社しました。理系学部に所属していたので院進学も考えましたが、自分のやりたいことはビジネスサイドにあると感じ、就職を決めています。

—— 「自分のやりたいことがビジネスサイドにある」と感じたきっかけについて、おしえてください。

奥村:好奇心が強いタイプで「科学」そのものは好きでしたが、自分自身が研究することには楽しさを感じませんでした。

というのも、研究者は基本的に、研究室にこもることになります。また研究結果や成果がすぐに出るものでなく、世の中とかけ離れている感じがしました。社会が見えなくなってしまうことが、自分には合っていなかったのです。

しかしビジネスサイドにいれば、すでに存在する技術を利用して、社会を動かす側に回ることができます。リアルタイムで社会の変化に貢献していけることに、興味がありました。

—— 数ある企業の中で、なぜリジョブをファーストキャリアに選ばれたのでしょうか?

奥村:就活当時、リジョブの親会社であったオネスティグループ、そして代表を務めていた望月佑紀さん(現・XVOLVE GROUP CEO)が持つ思想に惹かれたからです。彼が持つ「ビジネスという枠組みを超えて社会を抜本的に変革する」というビジョンに、とても共感しました。

—— なるほど。ちなみになぜ、海外でスタートアップを立ち上げることに…?

奥村:リジョブが買収されたことをきっかけに、代表の望月さんが退職し、海外で新たに会社を立ち上げることになったのです。僕はもともと、彼のビジョンに惹かれて入社したところも大きかったので、彼についていくことにしました。

—— そうだったんですね。海外経験が自身のキャリアにもいい影響を及ぼす、なんてこともあったのでしょうか?

奥村:いえ、一切考えていなかったですね(笑)。というか、今でも自分自身のキャリアについて考えることはほとんどないです。ここでいうキャリアとは、生存戦略を意味しています。市場価値を軸に、求められるスキルや能力を身につけていくものです。

僕はそうした「キャリア」ではなく、自分が成し遂げたい社会を実現することに興味があります。むしろ、それ以外で仕事に対する興味はないくらい。今はマーケティングを担当していますが、その領域でトップになれなくても、自分が理想とする社会を実現することができれば、自分の人生は満たされると考えています。

—— なるほど。Traimmuに入社されたのも、そうした観点からでしょうか?

奥村:そうです。海外にいる際にふと、「なぜ自分はこの仕事をしているんだっけ?」と考える機会がありました。学生時代は理系科目を勉強していましたが、当時学んだことは、現在9割がた役に立っていません。とはいえ、社会に出てから学んだことは、今やっていることに直結しています。

ですから、もっと早くからビジネスであったり、社会を知る経験があれば、やりたいことを見つけられる人が増えるのではないかと。そうした環境をつくること自体が、自分のやるべきことに感じました。日本で自分の考えていることに近い事業を展開している企業がないかと探し、Traimmuに入社しています。

—— 自身の生存戦略としてのキャリアに関心はなくとも、学生がキャリアについて考えられる環境をつくることには、興味を持ったわけですね。

奥村:おっしゃる通りです。Traimmuは「若者の価値を最大化する」というビジョンを掲げ、「本当にやりたいことに向かう人を増やす」ことを目指していました。ビジョンマッチが、入社のきっかけです。

社会に出るまで、生きる意味を見出せなかった

—— でも、自分のキャリアに関心はなくて、若者のキャリアに興味があるなんて、なんだか不思議です。ご自身のキャリアに興味がない理由を教えてもらえますか?

奥村:キャリアを支援するというか、社会を知ることができたり、やりたいことを見つけられる場をつくりたいと思っています。その理由はやはり、原体験が大きいです。僕は働くことで世界を広げることができたので、働くという経験を、もっと多くの学生にしてほしいと思っています。

—— 奥村さんは働く経験をする以前、やりたいことを見つけられていなかったのでしょうか?

奥村:そうですね。思春期は特にそうで、自分がなんで生きているのか分からなくなっていました。次第に心が荒れ、自分はなぜ生きているのだろうと、親と喧嘩をすることもあったほどです。

でも、新卒で入社した会社で初めて、自分のやりたいこと、人生をかけてでも成し遂げたいことに出会うことができました。思春期に抱えていた悩みや、社会への憤りを、自分の手でぶつけられる手段がビジネスだったのです。

—— やりたいことが見つかって初めて、人生に本気になれたんですね。

奥村:エゴかもしれませんが、だからこそ、学生の皆さんには本当にやりたいことを見つけてほしいです。もし見つからなくても、見つけるための挑戦をしてみてほしい。「キャリア」とは、自分が実現したいことや、叶えたい世界をつくることだと思っています。

僕にとってのキャリアとは、より良い社会の実現である

—— これからTraimmuとして、挑戦していきたいことはありますか?

奥村:直近の話でいうと、自社サービス「InfrA」をリニューアルしていて、先ほどお話しした「本当にやりたいことを見つける」ためのプラットフォームにしたいと思っています。今は世界観をつくりこむ段階で、リリースされる日が本当に楽しみです。自分のつくりたい世界が、そのままサービスとして世に出ることにワクワクしています。

また個人的は、社会システムそのものをアップデートすることに、興味があります。

—— アップデート…とは?

奥村:今僕たちは資本主義の中に生きています。ただ資本主義には格差や競争などの問題がありますよね。僕はそうした競争社会があまり好きではないのです。

なぜ、競争しないといけないのだろう?と考えたところ、その背景には「個人の力で生きていけない社会」ということが関係しているのではないか、と思っています。

たとえば、野菜を育てる知識や環境がなかったり、家を自力で建てられなかったり。できないから、できる人の力を借ります。でもその分、お金がかかり、ときにトラブルが発生してします。そうして、つくれる人だけが強くなっていく。

でもテクノロジーの力によって、誰もが人に頼らなくても生きていける社会になったら、どうでしょう。無駄な競争や格差がなくなり、生まれた場所によって人生が決まってしまう不幸がなくなると思うのです。いずれそうした社会がやってくるとは思っていて、僕もその未来に貢献したいと考えています。

ただ、そうしたテクノロジーが生まれても、社会に浸透するにはまだまだ時間がかかると思っています。なので、自分たちが手がけたキャリアのプラットフォームから社会に出た若者たちが、より良い社会を創っていってくれたらな、と思っています。

—— これから社会に出る若い世代に活躍してほしいし、より良い社会づくりに貢献していきたいと。

奥村:そうですね。肩書きや職種にこだわりはありませんが、今任せられている「マーケター」は、テクノロジーを世の中に浸透させることができる仕事です。

僕が今マーケターとして働くことで、若い人たちが活躍していくことを応援できるし、より良い社会をつくることに貢献できる。そこに、大きな誇りを感じています。

—— なるほど。では最後に、一緒に働きたいと考えている人物像について、お伺いさせてください。

奥村:一言でいうなら、「オープンマインドな人」です。Traimmuの価値観の一つに「Respecr Others(=仲間を尊敬する)」があります。偏見を持たず、仲間を尊敬し、ビジョンの実現に向かっていける方と、一緒に働けたら嬉しいなと思っています。

Text by オバラ・ミツフミ
All Photos by 岡島たくみ(株式会社モメンタム・ホース)

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