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椅子の話。

私の趣味の中に1つ、あまり共感を得られないものがある。「椅子」。私は椅子が好き。特に1910〜主に北欧で発表された建築家や家具デザイナーの作った名作の椅子が好きだ。

この時代から「木を曲げる」技術が発展し、様々な名作が生まれた。ここから椅子の文化はスタートする。

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●アントチェア

当時、画期的といわれたこの椅子。一枚の木の板を熱を使って曲げて作るという手法で注目を浴びた。

この椅子はシンプルで且つ現在はお手頃価格でお買い求め頂ける作品になっている。(それでも定価は20,000円以上)


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●スーパーレジューラ

世界で最も軽い椅子として発表された作品。重さは1㎏もなかったと記憶している。今ではよく見かけるタイプの形状だが、改めて見てもフォルムが美しい。

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●マシュマロソファ

とてもポップでカラーバリエーションも豊富なソファ。ジョージネルソンの作品で、彼の作品は壁掛け時計が有名ではないだろうか。


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●バルセロナチェア

こちらはテレビでもよくお見かけするソファ。リプロダクト品(著作権が切れたため他メーカーが作った同じようなデザインのもの)がたくさんある中で再現率が非常に難しいと勝手に思っている。足元のクロスされた部分は緻密な計算の元、作られており偽物はすぐ折れてしまう。


年代や造形美はバラバラだが、この作品ひとつひとつにしっかりと物語がある。なぜこの椅子が作られたのか、なぜこの椅子は目的を果たせなかったのかなど、調べていくと凄く面白い世界が存在する。

日本に椅子の文化が発展していない理由は、畳があるからかもしれないが、戦時中にもヨーロッパはずっと文化を大事に育ててきた。特に1940〜1980代の成長ぶりは目覚ましいものがある。やはり戦争はクソだ。戦争のおかげで日本の文化の発展は遅れた。

さらに言うなら、人間工学(人間が快適に生活や労働を行うための最低限の空間領域や計算)が生まれたのも戦後だ。全ての家具や家屋はこの人間工学から計算され作られている。

「化学や文化が目まぐるしく発展していく中で人間自体も発展していくはずだ。しかしそうはならなかった。狭い工場に人をぎゅうぎゅうに詰めると倒れていく人間が溢れた。人間には必要最低限の空間領域があるらしい。」という事で生まれたのが人間工学。とんでもない話だ。頑張れば翼が生えて空でも飛べるとでも思っていたのだろうか。

ヨーロッパは既に50年以上前にそこに気づき椅子の文化を発展させた。


つまり椅子は時代の象徴でもある。日本人、倉俣史郎が作った椅子は60年代、世界的には評価されていたが日本では酷評だった。日本で認められたのは没後である。

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彼の作品は前衛的過ぎたのだ。60年前、日本にこんな椅子が誕生していたのだ。60年前に、この日本で。

彼は辛かったと思う。世界的には成功した。ただ戦後の日本の復興を願う1人の日本人として、国内に求められなかったのは無念だったんじゃなかろうか。


デザイナーズチェアには様々な物語がある。時代背景や製作者の思想、思惑、魂胆、希望が詰まっている。そんなものにも思いを馳せながら今日もミニチュアの椅子を眺める。


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美しさの極み。

フォルムにストーリーにデザインに。

北欧の椅子好きが多くなるといいな。




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