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小説「対抗運動」第4章1 東金のルバーブ

おいさん「信太さんが画きよる『トランス・コミック』ね、いろんなところに万置きしてもろとるんじゃけど、・・・」

舞ちゃん「万置き、て何よ?」

おいさん「万引きの反対じゃね。こっちが気に入った店にはタダで置いてくるんじゃ。」

舞ちゃん「面白いねえ。」

おいさん「そのうちの一つじゃけど、千葉の東金にあるルバーブという店の人がね、情報公開おにぎり、はフェアトレードの精神と通じるものがあるけん、5月のフェアトレード月間に店でやる催しの一つとして話しに来てくれんか、と言うてきたよ。」

舞ちゃん「ふーん。初めての反響やね。大事にせんといかんね。」

おいさん「実は雨やった4月5日、渋谷からのデモの日ね、同じ日に東金で対抗運動のシンポジウムやってくれんか、と言われとったんじゃ。東金は東京駅から電車を乗り継いで2時間はかかる。接続が悪いけんね。それに急やったから、断わったんじゃ。情報公開おにぎり、配る計画もあったけんね。けど、そんな田舎でやっても効果ないんやないかと思うたんも確かなんや。」

舞ちゃん「・・・・」

おいさん「・・・デモで情報公開おにぎり配るいうんは、新庄水田トラストの阿部さん、茨城アイガモ水田トラストの平野さん、そして大崎の創作家庭料理『楽』の池田さん、皆すぐに解ってくれたけんね。4月5日の朝、雨の中おにぎり取りに行ったら、池田さんは感慨深げやったよ。今日デモ来る人らはすごいね、と。ター博士や岡部編集長、木村の親方は早く来て竹の皮に包むのを手伝いよったよ。太鼓の松村さんやアシード・ジャパンの河合さんは代々木公園まで運ぶんを手伝うてくれた。
公園で、出発まで雨避けもっておにぎり配りよったんじゃが、雨の中、続々と駅から人が参加しに来るのを見とるんは壮観じゃったよ。けどね、・・・」

舞ちゃん「けど、何?」

おいさん「歩き始めてからは、誰にアピールしとるんか疑問じゃったよ。デモは大事じゃよ。これまでなかったんじゃからね。けど、本当の対抗運動は田舎でフェアトレードやったり、村興し、町興しに取り組んどる人らが、それならやろかいね、というもんじゃないとあかん思たね。」

舞ちゃん「おいさんも、やっと気付いたか・・・・」

おいさん「えっ?・・・ハハハハー、こりゃやられたね。」

舞ちゃん「デモは都会の対抗運動やね。私は田舎でどしたらええか、いっつも悩んどったんや。トラスト運動より、もっと広がるもんはないんかと・・・」

おいさん「舞ちゃん、東金では4月の11日に、平和を考える会、が立上がったそうじゃよ。まだ準備会じゃ言うとるけどね。5月の2日には東金文化会館で何かやるそうじゃよ。3時から夜の8時までフリーじゃから是非来てみてくれ、と言うてきた。」

舞ちゃん「おいさん、行っておいでよ。」

おいさん「そうじゃね。対抗運動のシンポは必ず引きうけようと思うとったんじゃが。ほいなら、平和の会にも出てみよかいね。」

続く
執筆:飛彈ゴロウ、2003年4月17日

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