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スウェーデンで学んだ。「わからない」から逃げずに、自己理解を真剣に深めるための方法

デジタルハーバード。

私が2年前に留学していたスウェーデンにあるビジネスデザインスクールHyper Islandは、そんな風に呼ばれる学校で、卒業生たちを世界の名だたるクリエイティブエージェンシーに輩出する、ヨーロッパでは名の知れた学校だった。

ハイテクな設備と、刺激的な講義。意欲的で競争意識の高い学生たちに囲まれて、ものすごいスピードで知識と経験を得て、成長できるに違いない。

スウェーデンにいったこともなければ、国自体にさして興味もない。だけど、絶対に世界のクリエイティブ業界で活躍できる人材になりたかった私は、この学校を発見した翌日には留学を決め、数ヶ月後にはスウェーデンに引っ越していた。

だけど、学校が始まって数ヶ月後、私ははっきりいって今までにない失望を経験することになる。

なぜか。

それはこの学校では、授業や先生、さらにはテストまでもが一切ないからだ。

あるものは「プロジェクト」のみ。

学生たちは何も知識がない中で、「お題」が与えられ、その「お題」の解決方法自体を自力で学びながら、なんとかプロジェクトを完成へと向かわせて行くのだ。

もちろん必要な知識が圧倒的に不足しているので、私たち学生が「完成」と呼ぶプロジェクトのクオリティーは全く高くない。日本の学校でいったら落第点みたいな作品やプレゼンだってたくさんある。だけど学校関係者は、全く気にも止めていない様子。

はっきりいって日本人の私にはわけがわからなかった。

デジタルハーバートとまで呼ばれる有名校なのに、絶対のユルさしかない。放任主義にしか見えない学校の方針に怒りすら感じていた。

だけど留学後半年が過ぎた頃、わたしはあることに気づいた。

この超放任主義の学校は「ある一つのこと」を、絶対の例外なく厳しく生徒にやらせている。

それこそが今日の本題、「自分の感情に徹底的に心と耳を傾けること」。

この学校では、一連の内省するための方法と時間をReflection(リフレクション)と呼んでいて、ことあるごとに学生たちにリフレクションを促す。

プロジェクトが始動する時。
朝、生徒たちが集まってチームに別れてプロジェクトに取り掛かる時。
チームごとにその日の活動が終わる時。
1週間に一度チーム毎に活動内容を振り返った後。
プロジェクトが全て終了した後。
他のチームのプロジェクト完成発表を見た後。

私たち生徒がどんなクオリティーの成果を発表しても、一切無関心の学校も、なぜかこのリフレクションに関しては、しつこいぐらい厳格に環境や時間を設定して強制してくるのだ。しかも毎回フォーマットは必ず同じ。

静かにするように言われ、下記のような質問を自分自身に問いかけ、書き出すように促されるのだ。

[ リフレクション:一連の流れと実施方法 ]
1: What do I feel? What's on my mind?
自分が今何を感じているか、どのような感情が心の中にあるのか、感じて書き出す。

2. What affected me the most?
どのような事象が今感じている感情を生み出したのか探り、その事象が自分にとってどのような経験だったのか振り返り、書き出す。

3. What did I learn about myself?
その特定の事象が自分に与えた感情を理解することで、自分がどのような性格・特徴のある人間なのか、自分自身についての学びを書き出す。

4. What did I lean about others?
その特定の事象が他人の行動に与えた影響を振り返り、他人(多くの場合プロジェクトメンバー)についての学びを書き出す。

5. How will I apply this learning to my project/life?
この自分と他人についての学びを、今後のプロジェクトにどう生かしていくのか、具体的な方法を書き出す。

[ リフレクション:例 ]
わかりにくいと思うので、私が在学中に行ったリフレクションの例を出すとこんな感じだ。

1. What do I feel? What's on my mind?
少しイライラしている。気分が落ち込んでいる気がする。

2.  What affected me the most?
今日のプロジェクトに取り込んでいる最中に、チームメンバーが自分より多く休憩をとるところを見て、少しイラっとしたような気がする。だから今のこのネガティブな感情は、この事象に起因している気がする。

3. What did I lean about myself?
私には、日本の会社で働いていた時に常識だった厳しい労働規律があって、知らず知らずのうちに、同等の規律を他人にも求めてしまう傾向があるのかもしれない。

4. What did I lean about others?
私のチームメンバーは、私の労働規律に合わせようしたり、合わせていないことでの罪悪感は特に抱いていないように見える。「自分の規律は、誰かに合わせるのではなく、自分自身で決める」といった哲学を持っているのかもしれない。

5. How will I apply this learning to my project?
ユルい労働規律であっても、チームメンバーの生産性が高いのであれば、私は無駄にイライラする必要はない。もし彼らの労働規律が原因で、チームの成果に悪影響がでる場合は、その事実をメンバーに共有し、彼らに規律の向上を求めるべきかもしれない。

このようにリフレクションは、「自分の今の感情」を丁寧に観察することで、その感情の発生原因である事象を特定し、その事象と自身の感情の関係性から、自分自身を深く理解することができる方法なのだ。

正直なところ最初は面倒だと思っていたこのリフレクション。

騙されたと思って数ヶ月やってみると、みるみる自分への理解が深まり、自分がプロジェクトを通して何を学びたいのか、どのようなタスクを行いたいのか。日々の丁寧な感情観察の結果、どんどん自分がやりたいこと・やるべきことが明確になっていった。

留学して1年経った頃、やっとこの学校がデジタルハーバードと言われる所以がわかった気がした。

様々な領域でテクノロジーが必要とされる今の時代、個人が知るべきことは「どうやってプログラミングをするか?どうやって使いやすいデザインのデジタルプロダクトを作るか?」そんなプラクティカルな知識はあまり重要ではない

本当に必要なのは、「自分は何を作りたいのか?」という、自分の中にだけ眠る「自己動機」に向き合うことだ。

きっと「自分が本当に何をやりたいのか」を見つけられた人は、実現のための知識修得なんて、ググったり、YouTubeのHow to動画を見れば簡単にできるはず。

だからこそ、この学校では授業や先生から小手先の知識を学ぶことよりも、「自分自身に徹底的に向き合うこと」を教えているのだ、と。

1年半のスウェーデン留学ですっかりこのリフレクション習慣を身につけた私は今、ことあるごとに自分の感情を観察しまくっています。

それは仕事の場面だけに限らず、友人・パートナーとの関係、または個人で過ごす時間など。様々な場面で自分の感情を丁寧に観察していくことで、自分のポジティブな感情を増幅させ、ネガティブな感情を排除するためのヒントが見つけ出せるのです。

毎日仕事や楽しい予定に溢れ、スケジュールをこなしていく日々の中。30分だけ、1週間に一回、自分の感情を観察するリフレクションタイムを是非設けてみてください。この時間の積み重ねが、最終的に「自分の次の目標」を見つけるためのヒントになると信じ、私も現在進行中で実践しています。

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ゆか - Humanity Centered Thi...

Humanity cultivator 💪 フリーランスの人類中心ストラテジスト。人間らしい倫理観と道徳観が個人・ビジネス・社会・環境レベルで宿る生き方を探り、発信し、プロジェクトやお仕事で形にしています。🇺🇸→🇸🇪→今は🇫🇷と🇯🇵をいったりきたり。
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