ShogoKudo@AIU

国際教養大学・准教授。専門は地域のサステイナビリティ。近著に『私たちのサステイナビリテ…

ShogoKudo@AIU

国際教養大学・准教授。専門は地域のサステイナビリティ。近著に『私たちのサステイナビリティ』(https://www.iwanami.co.jp/book/b599126.html)。秋田と南アフリカの農村を行き来しながら、風土のサステイナビリティについて考えています。

マガジン

  • #ひとそれぞれのポコポコ

    • 5本

    ポコポコキッチンをよく使ってくれる人たちに「ポコポコ」とは何なのか…について書いてもらいました。

  • 研究という創作の記録

    「研究」をひとつの思考プロセスとして見ると、それは一研究者による創作ではないかと思うのです。言葉や数字を使い、図や表を使い、写真や概念図を使います。表現の目的は新しい知見を創り出すことで、これまでわからなかったことをわかるようにすること、これまでひとつの見方しかなかったところに別の見方を示すことにあります。こうした営みによって、踏襲されてきた考え方や固定概念から思考や発想が解放されていきます。この手続では、理論やロジック、批判的思考が地図の役割をしますが、時々これらの地図自体も問い直されながら進みます。研究成果は一般的には書籍や論文で発表されますが、これはいずれも結果に注目してまとめたものです。研究という営みを創作活動と捉えたなら、研究者の数だけその思考プロセスについてのポートフォリオがあってもいいのではと思うのです。このマガジンは一研究者である私の研究という創作の記録です。

  • サステイナビリティ思考

    「サステイナビリティ思考(Sustainability Thinking)」という考え方と、実際の活用事例をご紹介していくマガジンです。「サステナブルな〜」や「SDGs」に対して感じるモヤっとしたわからなさを整理しながら、サステイナビリティという概念を使った思考方法としてのサステイナビリティ思考を提案していきます。同タイトルの書籍化を目指して、コツコツ書き溜めていきます。新しい物事の見方や捉え方に関心のある方にぜひご登録いただきたいです。

  • サステイナビリティの話

  • 文字にせずにはいられなかったこと(雑記)

    日常で見聞きしたことや体験したことで文字にせずにはいられなかったことを書いていきます。

最近の記事

  • 固定された記事

サステイナビリティ学とは?

私の専門はサステイナビリティ学(Sustainability Science)です。まだ新しい分野で発展途上であるということと、そもそも視座が広い領域であるため、毎回説明するのに少々苦労します。というわけで、今日は一度ここにまとめて書いておくことにします。 サステイナビリティ学は、持続可能性に関することであれば何でもその範囲に入る学際領域です。気候変動、生物多様性、エネルギー、食料・保健、自然災害、人口、経済、都市化、技術革新、シェアリング、ライフスタイルなどなど、さまざま

    • 私の短い、〈研究〉をめぐる回顧録。

       今日は8月14日。お盆のど真ん中で、大学は明日までお休み。今年の前半は、学会をホストしたり、ゲストを迎えたり、ローカルアントレプレナーシップの森づくりイベントを開催したりと、とにかく慌ただしく過ぎていった。そんな折、7月中旬の大雨で秋田市と五城目町を中心に大きな被害があった。完全復旧までにはまだ時間がかかりそうだけれど、そんななかでも大学は通常運行で学期末を迎え、短い1ヶ月間の夏季休講期間に入り、私は秋田をしばらく離れて過ごしている。日常が起きる場所から物理的に離れると、い

      • 森をめぐる知と文化のサステイナビリティ

        1. 変化の過程で何をしていくかほとんど森です、秋田県。冬にはたくさんの雪が降り、11月末から3月いっぱいまで、とにかく、どよーん、とした空気に閉ざされます。何か暗くて、日本のフィンランドみたいなところです。 人もどんどん減っています。若い人が県外へと流出し続けて、特に女性が減っています。なので、子どもの数も減っています。若い人が減り、親世代が残っているので、高齢化が進んでいます。 人が減って高齢化が進むと、これまでの秋田らしい暮らしを、次の世代へと継なぐことができなくな

        • サステイナビリティ思考と名付けた理由

          1. サステイナビリティ学を出発点にこのマガジンでは、サステイナビリティを用いた物事の捉え方や戦略の立て方を「サステイナビリティ思考(Sustainability Thinking)」と呼び、この内容をご紹介していきます。初回の記事では、まずこの名前から。そして簡易な定義を示したいと思います。 これから書いていくサステイナビリティ思考に関する記事は、私の専門であるサステイナビリティ学(Sustainability Science)をベースにしています。サステイナビリティ学は

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        サステイナビリティ学とは?

        マガジン

        • #ひとそれぞれのポコポコ
          5本
        • 研究という創作の記録
          18本
        • サステイナビリティ思考
          2本
        • サステイナビリティの話
          4本
        • 文字にせずにはいられなかったこと(雑記)
          7本
        • 私の見ているサステイナビリティ(書籍案)
          2本

        記事

          サステイナビリティ思考についてのマガジンをはじめよう。

          1. noteを書くときに大事にしていること 久しぶりの投稿になりました。私のnoteでは、これまで世の中の動きのなかで気になったことや、サステイナビリティや、ぎっくり腰になった話などを書いてきました。扱うテーマはバラバラでしたが、note記事を書くということについて、3つほど大事にしていることがあります。 1つ目は、テーマについての文章を、「世の中の片隅に置いておく」ということ。世の中は日々目まぐるしく変わっていくわけですが、それを受け取る人々の感性もまたそれぞれ。ある出

          サステイナビリティ思考についてのマガジンをはじめよう。

          ポコポコキッチンはキッチンにあらず

          1.ババメの住人 秋田市の自宅からBABAME BASE(ババメベース)までは、車で大体40分。正式名称は「五城目町地域活性化支援センター」だけど、みんな「ババメ」と呼んでいる。 私はスケジュール管理があまり得意ではないので、覚えられない以上の予定はなるべく入れないようにしている。ババメまでの道すがらはいつも、「今日はオフィスで何をしようかな」と考えるのが好きだ。 念の為にとスマホで大事な予定が入っていなかったかと確認した刹那、それまで車窓の美しい秋田の景色に感嘆しながら

          ポコポコキッチンはキッチンにあらず

          『私たちのサステイナビリティ - まもり、つくり、次世代につなげる』が刊行されます。

          1.書籍刊行のお知らせ私のnoteでは、サステイナビリティやSDGs、そしてこの分野をより専門的に学びたいと考えている方々にむけて、サステイナビリティ学(Sustainability Science)についての記事を書いてきました。 ちょうど一年前のこの時期に「私の見ているサステイナビリティについての本を書こう」という記事を書きましたが、第1章以降の記事は非公開にしていました。そうしていたのには理由がありまして、それはこの書籍案の内容が、岩波ジュニア新書の書籍として出版され

          『私たちのサステイナビリティ - まもり、つくり、次世代につなげる』が刊行されます。

          複数の異なる世界の見え方を軽やかに往来するスキル - 国際開発学会金沢大会の振り返り

          1.日本の地方から国際開発を考える久しぶりのnote記事になりました。今日は所属している国際開発学会の話。 先週末は国際開発学会の第32回全国大会が金沢にて開催されました。金沢はとっても好きなまちなので、なんとしてでも現地にて参加したかったのですが、コロナのためオンライン開催となりました。 近江町市場をぷらぷらしながら「年末年始は思い切ってカニ鍋とか食べちゃうのかしら」、なんて独り言をつぶやくまったりした時間は、次回までしばしのお預けとなりました。残念! さて、今回の学

          複数の異なる世界の見え方を軽やかに往来するスキル - 国際開発学会金沢大会の振り返り

          リベラルアーツの次にあるものは創造的な表現かと思うのです。

          以前にリベラルアーツについての記事を書きました。そこでも述べたとおり、リベラルアーツ教育の目的はリバレイトすること。つまり、他人の考えや社会の慣習から自らの思考を解放することでした。 今年4月から国際教養大学に拠点を移し、さっそく開発学のコースを担当しています。学生とのやり取りのなかで気がつくことは、彼らが「考える」ということがとても好きだということ。 週に2回の講義は1回が75分、そのなかでの私の役割は前半30分のインプット。毎回リーディングの課題があるのですが、私が同

          リベラルアーツの次にあるものは創造的な表現かと思うのです。

          書き方の癖

          久し振りのnoteになりました。前回の記事からしばらく時間が経ち、年度末と新年度の多忙な時期を駆け抜け、何度目かの「コロナでどこにも行けない連休」であるゴールデンウィークも過ぎて、ようやく新しい記事を書こうかなとnoteを開く気持ちになりました。 きっと田植えと新緑のこの季節だからこそ「ちょっと開いてみてもいいかな」と思えたような気がします。今日のサムネは、秋田での新しいオフィスからの今日の眺めです。冷房も暖房もいらない、季節の温度で心地よく過ごせるこの季節。もうすぐ蚊が飛

          書き方の癖

          第1章:サステイナビリティのわからなさはどこからくるのか (note版)

          今日は書籍案『私の見ているサステイナビリティ』の第1章「サステイナビリティのわからなさはどこからくるのか」のnote版を公開します。この章での中心的な議論をまとめていますので、第1章の紹介版として読んで頂けると嬉しいです。 1.力のない言葉「サステイナビリティ」という言葉を聞いたときに、読者の皆さんはどのようなイメージが思い浮かぶでしょうか。環境に関する何かグリーンなイメージ、あるいは国連が2030年までの開発目標として提唱しているSDGsの七色のロゴが思い浮かぶかもしれま

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          第1章:サステイナビリティのわからなさはどこからくるの…

          フィールドワークと縦書きとテキストエディタ

          まだ学部生の頃、研究のけの字も知らなかった私にフィールドワークを教えてくれたのは、朝ラーとお酒が大好きな在野の民俗学研究者でした。 その方は柳田国男の民俗学が好きすぎて、自ら地域の祭事を訪ねては、聞き書き調査を何年もされている方でした。 この先生が聞き取りをするときのノートは自作のもので、B5版ほどのサイズで横開きになっています。そしていつも4Bの鉛筆を使っての縦書きでした。 「なぜ縦書きなのですか?」と私が尋ねると、先生は「よくぞ聞いてくれました」というような嬉しそう

          フィールドワークと縦書きとテキストエディタ

          くるくるおじさんの話

          向かいの席に座っているおじさんが、さっきから右手の人差し指をスマホの画面上でくるくるくるくると滑らせている。 しばしくるくるした刹那、今度は指を画面の上に向かってシューっとする。 そしてまたくるくるくるくる。くるくるくるくる。 またくるくるくるくる。 もう十駅くらい過ぎただろうか。 おじさんが欲しいものはゲットできたのだろうか。   私はというと、この「くるくる」と「シューっ」という言葉をどうしても縦書きの文章にしたくて、今電車のなかでこの文章を書いている。 おじ

          くるくるおじさんの話

          私の見ているサステイナビリティについての本を書こう

          noteをはじめてから2年ほどが経ち、記事の数も38本になりました。ここまでを振り返ってみると、noteを書くことは自分の言葉をみつけていくことだったなぁと思います。 内容があちらこちらになってしまったので今日の記事にはタイトルをつけるのが難しかったのですが、これから「私の見ているサステイナビリティについての本を書こう」と考えていることについて書いておこうと思います。 1.わかりやすい言葉ってどんな言葉だろうnoteをはじめてから2年ほど経ちました。はじめの頃は読んだ本の

          私の見ているサステイナビリティについての本を書こう

          リベラルアーツを「教養」と訳すのはそろそろ止めにしよう。

          今日は、リベラルアーツについて書いておこうと思います。 このテーマについて書こうと思ったきっかけは、リベラルアーツの和訳として広く用いられている「教養」という表現が、本来リベラルアーツの意味するところとは違うものを想起させるなと思ったことでした。 1.「教養」という訳にひっぱられてしまうリベラルアーツを紹介する書籍を調べてみると、「大人のための教養」とか「本物の知性」とか、そういう抽象的な表現が多くでてきます。しかし、肝心のリベラルアーツの目的が示されていないことが多いよ

          リベラルアーツを「教養」と訳すのはそろそろ止めにしよう。

          風土のサステイナビリティ

          今日は、ここのところ考えている「風土のサステイナビリティ」ということについて書いてみたいと思います。 1.環境問題を考えるときにぼやける主語風土に関心を持ったきっかけは、サステイナビリティの議論のなかで最頻出のテーマである気候変動について、「本当の意味で自分事として捉えるためには、どのような感覚が必要なのだろう」と考えたことでした。 というのも、地球温暖化や気候変動に代表されるような環境問題は、もうかれこれ30年来あるわけですが、どうもこのことのについて解決に向かっている

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