見出し画像

『食と生活』料理の進化と革新、サーモン・オゼイユ

トークイベント〈男の料理、女の料理〉

こんにちは。昨日は日比谷シャンテ3FにあるHMV&BOOKS HIBIYA COTTAGEでスープ作家の有賀薫さんとトークイベントをしてきました。テーマは『男の料理、女の料理』

男の料理、女の料理というのはあるのか? という問題ですが、僕の頭に浮かんだのはやはり檀一雄『檀流クッキング』(1970年)ですね。伊丹十三や開高健も七十年代に食関係のエッセイを数多く残していますが、男子厨房に入らずの時代に料理をする男性は進歩的な文化人という印象。

さすがに時代が下ると男性も料理をするようになり、NHK『きょうの料理』で『男の料理』というコーナーがはじまったのが1983年。それが『男の食彩』(1991~2000年)という形で発展し、『新・男の食彩』(2000 ~2003年)と続きました。このあたりが『男の料理』の黄金期といえるかもしれません。『男の食彩』は2004年には『食彩浪漫』(2003~2009年)という番組にリニューアルされ、ついに男という単語が番組名から消えます。

男の料理の特徴は『ウンチク』『素材一点主義』(肉を焼くだけ、とか、釣ってきた魚を調理)。『豪快』といった形容詞がつくことも多かったと思います。アメリカなんかではBBQはやっぱり『男の仕事』で、そういう影響もあったのかもしれません。男の料理、女の料理は趣味的な料理、暮らしの料理と言い換えることもできるか、と思います。「定年退職した夫がそばを打ちはじめたらやばい」って時々、聞きますが、この趣味的な部分が女性から嫌われる要因とされていました。

でも、今は男の料理、女の料理という言葉をまったく聞かなくなりましたよね。本屋さんに行っても趣味的な料理を紹介する料理本は本当に見かけなくなり、様々な形で実用性のある本ばかりです。あるいは人々の関心が「暮らし」に向かったのは、2011年の東日本大震災から現在まで続く大きな災害の影響かもしれません。

有賀さんがお話のなかで「今までは女性ばかりが仕事と暮らしの両立について考えていたが、これからは男性も悩む時代になる」という主旨のことを仰っていましたが、深く頷いてしまいました。

ここから先は

3,324字 / 14画像

¥ 200

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!