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家庭的なふきのとうの天ぷらの作り方

春は山菜がおいしい季節。先日、生産物の直売所に行ったところ、ふきのとうが安く売られていたので購入。

ふきのとう味噌や佃煮など食べ方は色々とありますが、一般的なのは天ぷら。油がアクや苦みをマスキングしてくれるので食べやすいですし、なにより簡単です。

ふきのとうですが土に生えているものなので振り洗いします。

あまり大きいと食べづらいので、根の部分と花の部分に分けて準備完了。

さて、ここで2種類の選択肢があります。1つはクリスピーなお店の天ぷら、もう一つは家庭的なふんわりとした天ぷらです。

お店の天ぷらと家庭の天ぷらの配合はなにが違うのでしょうか。日本調理科学学会誌Vo49に掲載された『プロの技より解析するてんぷら調理』(峯木眞知子、石川由花著)という論文によるとプロと家庭の大きな差は卵の割合。

プロの衣の配合では,小麦粉と卵水の比が重量比 1:2 (容量比 1:1)で,卵水の卵と水の割合は,1:10 である。 一般調理書 25 冊を調べると,てんぷら薄衣における小麦 粉と卵水の比は,重量比 1:1.6~2.0(容量比は 1.0:08~1.0)で,卵水の卵と水の比では 1:3 が多い。

卵の量が増えるほど衣は分厚くなり、味は重たくなりますし、カリカリ感もなくなります。しかし、卵の量が多い配合の天ぷらは冷めても「ふんわりとしておいしい」というメリットもあります。

逆にプロっぽい天ぷらは揚げたてのクリスピーな食感を味わうのがベスト。冷めるにつれてべたっとした食感に変わってしまいます。参考までにプロっぽい天ぷら衣の作り方を記すと

卵1個を割り、そこに計500ccになるまで水を足す。卵と水を泡立て器で混ぜて卵水を作り、冷蔵庫でよく冷やしておく。揚げる直前に1カップの卵水に対して1カップ弱の小麦粉を混ぜて、天ぷら衣にする。

という感じです。今日は冷めてもおいしい家庭向けの天ぷらにします。

天ぷらの種をつくります。いわゆる天ぷらバッター液です。冷水と卵を計量カップに割り入れます。卵と水を足して180cc〜200ccになるように調節します。これくらい卵の量が多いとフリッターといってもいいくらいの重めの衣になります。この後の工程で小麦粉を混ぜますが、よく知られているようにこの時にグルテンを出さないようにあまり混ぜないのがコツです。

小麦粉を混ぜる自信がなければ水にアルコールを混ぜてください。今回はウォッカを大さじ2加えました。ウォッカがない場合には焼酎でも大丈夫です。余計な香りがないものが適しています。グリアジンとグルテニンは水分の介在下で反応させると結びついてグルテンを形成しますが、水分ではなくアルコールを介在させることでその反応を遅らせることができます。

ボウルで混ぜて、卵水をつくります。

泡はいらないので除去しておきましょう。

さて、卵水と小麦粉は同体積。1カップに対して1カップの小麦粉ですが、ふきのとうの場合、粉は多少控えめにするのがコツ。薄めの衣のほうが山菜の味が生きます。

小麦粉を混ぜる自信がなければ小麦粉の一部をデンプン(例えば米粉)に置きかえる方法もあります。しかし、そこまでするなら市販の天ぷら粉で充分でしょう。市販の天ぷら粉は通常、小麦粉、デンプン、ベーキングパウダー、乾燥卵、それと発色剤としてビタミンB2が配合されています。

ここでフライパンに油を注ぎ、予熱しておきます。

小麦粉に卵水を加えるよりも、卵水に小麦粉を加えたほうが玉になりません。

切るように何度か混ぜて、多少小麦粉の塊が残っているぐらいで止めます。これで天ぷら衣の出来上がりです。天ぷら衣は作り置きが利きません。繰り返しますが、グリアジンとグルテニンは水分の介在下で反応させると結びついてグルテンになるので、長く置いておくと反応してしまいます。

というわけでさっさと揚げましょう。よく水気を切ったふきのとうには充分に打ち粉をしておきます。この打ち粉が非常に重要な役割を果たします。

さて、天ぷらが油っぽくなった……という失敗は外側の衣が破れて内側に油が入ってきてしまうことで生じます。それを防ぐためにはまず衣を均一にまとわりつかせておくことが重要です。

打ち粉があることで衣が剥がれにくくなります。間を置かず油に放り込んでいきます。

油の温度は170度。山菜の天ぷらは基本的にこの温度で揚げます。(エビを半生に揚げたいという時は190度、イモやカボチャなどのデンプン質のものは140度〜150度を使います)

今回はフライパンに1cmほどの油を入れて揚げていますが、卵の割合を減らすと衣の粘度が下がるのでそれだけ油の量も必要になってきます。少ない油で揚げられるのは家庭的な配合のメリット。

衣がしっかり固まってから裏返します。繰り返しになりますが衣が破れるとそこから油が浸入してきて油っぽい仕上がりになるので極力触らないこと。

からっとしてきたらOK。

一度、経木やキッチンペーパーにとって油を切ります。

出来上がり。卵の多い配合の家庭的な天ぷらです。今回は卵の割合が多い田舎っぽい配合ですが、もう少しクリスピーな食感にしたければ卵黄だけを使うといいでしょう。

ちなみに山菜の天ぷらは天つゆではなく、粗塩をつけて食べるのが一般的。塩には苦みを感じにくくする効果があるので、非常に理に適っています。昔から行われていることには意外と科学的な根拠があるものです。

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樋口直哉(TravelingFoodLab.)

樋口直哉 作家・料理家 主な著作として小説『スープの国のお姫様』(小学館)ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)など。新刊『新しい料理の教科書』が1/17日に発売されました!

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