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フライパンで魚を焼く 第1回 ~強火編~

これから3回シリーズでフライパンで魚を焼いていきます。熱したフライパンで魚の切り身を焼く、と言ってしまうと簡単ですが、注意する点はいくつかあります。目標は魚にいかに水分を残して、ジューシーに焼きあげるか。

例えばこんな薄いスズキの切り身と

厚みのある鰆の切り身では加熱のアプローチが異なるのは当然。

まずは魚の保存から。スーパーで買ってきた切り身を冷蔵庫にしまう、というのが一 般的ですが、冷たい海を泳いでいる魚の保存は0度~1度が基本です。普通の感覚で冷蔵庫に放り込むと4度~6度くらいなので、鮮度が落ちてしまいます。チルドルームなどがあれば利用しましょう。

冷蔵庫内の温度は場所によって違います。庫内の一番冷たい場所は一般的に奥と 下。温かい空気は上昇するため下に行くほど冷たいのです。なるべく冷蔵庫の奥か下 で保存するのが基本。

ラップでくるんだだけだと、魚から出てきた水分が傷みの原因になるので、キッチンペーパーなどを挟んでからラップでくるみます。しかし、キッチンペーパーには身の水分まで吸収してしまうという弱点も。キッチンペーパーではなく昔ながらの経 木を使ったほうが状態がいいようです。また、お寿司屋さんなどが熟成に用いる青紙と呼ばれるパーチ紙も魚の保存にはやはり適しているよう。

面倒ですがベストを追求するなら、冷蔵庫は扉の開け閉めの際に温度が上が るので、このように氷水に沈ませた上で冷蔵庫で保存すると温度が安定します。(一 日に何度か氷を足すだけで大丈夫です)氷水であれば常に温度は0〜1℃です。

さて、今日は比較的、身の厚い魚を焼いていきます。用意したのは鰆です。魚のタン パク質は肉より低い温度で凝固しますので、加熱のし過ぎには要注意。

皮目に切れ目をいれておくと、焼いているときの反り返りを防ぐことができます。今回は適当に包丁で入れてしまいましたが、正確さを求めるならカミソリで切れ目を入れる手もあります。

ここで重要なのは皮目が乾いていること。その理由は水分があるとフライパンに入れた際に蒸発し、その蒸気が魚の切り身を押し上げてしまうから。結露した水分などで濡れていたら、必ずペーパーで拭き取りましょう。水分が残っているとカリッと仕上がりません。
さて、ここで二通りのアプローチが存在します。焼く前に塩を振るか、焼いてから振 るか、です。今回は身の側にだけ薄く塩を振りました。皮目に水分が出てくるのを避 けるためです。どちらでもこのあたりはお好みで。

フライパンを強火で熱し、油を小さじ1ほど入れます。油は加熱に強いキャノーラ油 やオリーブオイルなどがいいでしょう。油からうっすら煙が出るくらいまで予 熱します。
強火で焼くメリットは香ばしい焦げ目がつくことです。皮目も美味しく食べるこ とができる反面、加熱時間が短くなるため、火の通し過ぎには注意する必要がありま す。

魚を入れ、軽く押さえます。この工程で皮目とフライパンが密着します。あまり強く押さえつけないようにしますが、抑えないと身が反ってきます。
押さえつけながら加熱しても反り返ってしまうようなら、魚の鮮度が良すぎることが考えられます。新鮮な魚はタンパク質が分解しておらず旨味成分に乏しいため、経木に挟んで冷蔵庫(0 度~1度)で保管し、熟成させる必要があります。適度に熟成された魚の身なら大丈夫。

目指す中心温度は50度から高くても60度。魚は50度を超えると一気に温度が上 がっていきます。目指す中心温度が肉よりもずっと低いことを頭に入れておいて ください。加熱し過ぎを防ぐには側面をよく観察することです。

半分まで白くなりました。この段階で裏返します。

いい焦げ目がつき、皮はカリカリです。裏返したら火を止めます。裏返してから魚にあっという間に火が入るのは、なぜでしょうか? 

それは冷蔵庫から出したての魚は温度が上がるのに時間がかかるのに対して、裏面はすでにあたためられているからです。裏側は表面を殺菌するような気持ちで焼くだけで充分。あとは予熱で充分に温度が上がります。

今回の話をまとめます。
1. 魚は低温で保存する
2. 表面に水分が浮かんでいるのは避ける。もし浮いていたらペーパーなどで拭き取
ること。そのため塩も身のほうだけにとどめる。
3. 魚の中心温度は50度~60度のあいだが理想。予熱で温度が上がるためにその前
に火から下ろすこと。全体の加熱時間は3分の2が皮側、3分の1が身側という イメージ。

マッシュポテトを敷いたところに魚を盛りつけ、皮目に粒が大きいマルドンソルトを 振りました。マッシュポテトではなく、醤油と大根おろしを添えれば和風のおかずにもなります。次回はこの魚にあわせるソースをつくります。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!