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ペアリング用ノンアルコールドリンクを考える その1〈ハイビスカスのドリンク〉

アルコールを飲まないという方が増えている昨今、ノンアルコールペアリングの需要が高まってきました。ペアリングについて、検討していきます。食中ドリンクに求められる役割はおおまかに三点。

1 〈ウォッシュ〉

口のなかを洗い流し、次の食事に進ませる役割です。口のなかに残るのは主に『脂質』と『タンパク質』。世界各国で食中酒が飲まれているのは脂質がアルコールに溶けるから。

脂の多い肉を食べた後に赤ワインを飲むとさっぱりしますが、これはアルコールの作用+赤ワインのタンニンのおかげ。タンニンはタンパク質を凝固させるので唾液と結びついて、口のなかに残ったタンパク質を固めて洗い流してくれます。お茶にもこの効果があるので、煎茶をあわせたり、烏龍茶をあわせたりします。

炭酸にも弱いですが、このウォッシュの効果があります。

2 〈ペアリング〉

お互いが引き立てあうような香りの組み合わせを考える必要もあるでしょう。

香りの組み合わせには大きく『対比=コントラスト』と『調和=コンプリメンタリーコンビネーション』の二つ。食中酒などではあまり使われませんが、キノコと牛肉のような対称的な香りの組み合わせは相性のセオリーの一つ。ボルドータイプのワインは土っぽい、キノコのような香りがありますが、そうしたワインと肉の組み合わせですね。

もうひとつは調和型。これは風味化合物が共通している素材を組み合わせるFoodPairling的な手法です。ライムとココナッツとか、バニラ+ホワイトチョコ+トンカ豆みたいな組み合わせです。意外なところでは洋梨とブルーチーズ(あるいはバナナとブルーチーズ)というのもあります。

3 〈味の組み合わせ〉

味の組み合わせにも基本的なルールがあります。塩味は旨味と甘味を引き立てます。このことは出汁に塩を入れるとおいしくなること、甘いチョコレートドリンクに少量の塩を加えると甘みを強く感じることからも実感できるか、と思います。

少量の苦味は旨味や甘みを強調します。苦味を使いこなすことがおいしい料理をつくるコツでもありますが、焦げ色が旨味を引き立てたり、チョコレートも苦味が甘みに深さを与える好例です。

甘みと酸味は仲良しで、酢だけよりも砂糖を加えたほうがおいしいと感じます(三杯酢の原理)甘味と辛味が交じるとおいしいのはタマネギの甘さとスパイスの辛味が効いたカレーの構造です。また、甘味は脂肪とも仲良しで(砂糖が入ったホイップクリームがおいしい、みたいな)アルコールを介することで、味に深みが増します。脂肪分と酸味も関係があり、酸味単体よりも油脂部分と組み合わせる=ドレッシングの方がおいしいと感じます。

このようなルールを理解して、味を組み立てることが重要でしょう。例えば日本酒を料理と一緒に食べると旨味が足されるので、塩味、酸味、苦味のどれかと一緒に提供するとよい、という結論が導き出されます。塩味+苦味はイカの塩辛、塩味+酸味+苦味なら牡蠣ポン酢とかですね。なんとなく納得感のある組み合わせか、と思います。

ペアリングの例1 ハイビスカスドリンク

さて、実践例です。ハイビスカスにはタンニンが含まれているため、口のなかのタンパク質と結合し、洗い流してくれます。また、この酸味が後味に軽やかさを与えてくれます。つまり、このドリンクは肉料理と高相性。

水 1L
ハイビスカス 30g
グラニュー糖 100g
シナモン    1本
クローブ    4本

作り方はシンプル。

鍋に水1L,砂糖、スパイス類を加えて、火にかけます。この時、かき混ぜて砂糖を溶かしておくとスムーズです。

沸騰したところにハーブティー用のハイビスカスを加えて、火を止めます。

蓋をして一晩、放置します。

翌日、濾しましょう。

出来上がり。ワインのような深みのある色で、ノンアルコールワインとして提供できます。

3/14日にPOCで開かれたトークイベントではこのハイビスカスドリンクをベースにしたノンアルコールカクテルを提供しました。Mr.cheesecakeで知られる田村さんのチーズケーキとの相性を考え、バニラ、桜の塩漬け、醤油で風味をつけました。

種明かしはこうです。田村さんのチーズケーキの特徴は豊富な油脂分とバニラ、ホワイトチョコレート、トンカ豆の香りのバランスです。

ハイビスカスドリンクに加えたバニラはチーズケーキにも入っているので調和します。また、桜の塩漬けに含まれるクマリンという香り成分はトンカ豆の香り成分で、こちらもフレーバーペアリング的には『調和』の組み合わせです。また、醤油に含まれるフラノン類、エステル類、メラノイジンがチーズケーキと調和するはずです。醤油の塩味を加えることで甘味も強調されます。

今回は簡単な組み合わせですが、ペアリングにはまだまだ可能性があるので、このnoteで少しずつ紹介していくつもりです。今後をお楽しみに!

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!