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マッシュルームは洗ってはいけない?

料理本にはよく『マッシュルームは洗わず、濡れ布巾などで拭いて使いましょう』と書いてあります。その理由として挙げられているのは「きのこはスポンジのように水を吸ってしまい、香りがなくなってしまうので、洗うのはやめましょう」というもの。

マッシュルームには黒い土のようなものがついているので、洗い落としたら楽なのにな、と思いませんか? この黒い土の正体はポートモスや人工堆肥(コスト的に安価な馬糞を堆肥化させたもので栽培されたマッシュルームも味がいいことでも知られています)で、それぞれ無菌化されているので、衛生上問題はありませんが、料理に混入するのは避けたいところです。

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マギーキッチンサイエンスによると「キノコは初めから水分でできているので、さっとすすぐだけで風味が失われることはない」とのこと。

さすが、マギー先生。水洗いすると風味が失われるというのであれば、マッシュルームの風味のほとんどは表面に存在する水溶性ということになってしまいますが、実際はマッシュルームの皮を剥いても、味をしっかりと感じます。つまり、マッシュルームは洗ってもいいのです。

マギー先生は『Keys to good cooking』(未邦訳)でマッシュルームを洗う実験を行ってています。というわけで僕も試してみました。

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169gのマッシュルームを流水でよく洗い、その後の重量変化を調べます。

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洗った後のマッシュルームの重量は176g。つまり7g、水を吸い込んだ計算です。思ったよりも水を吸い込んでないことがわかりますね。スポンジのように水を吸うという考え方は誤りなのです。そもそもマッシュルームを顕微鏡で見るとスポンジのような多孔質にはなっていません。

次にボウルに張った水に5分間浸けてみました。これはマギーさんが行った実験と同じ。通常、洗うよりもはるかに長い時間、水につけることでマッシュルームにどんな変化がおこるか調べます。

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水気を切って、表面の水分を軽くふき取ってから計量したところ、結果は184g。つまり、マッシュルームは水で洗ってもほとんど水を吸わないのです。

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というか、むしろ洗った方がおいしく調理できるのです。その理由はその後の加熱。この工程で水分が蒸発し、キノコが自身の持つ水分で蒸された状態になり、効率的に加熱が進むから。吸い込んだ水分は結局蒸発するので、味が薄くなるようなこともありません。

マギーさんはマッシュルームは『水が出てくるので少量ずつ鍋で加熱したほうがいいとされているが、実際はギュウギュウに入れてマッシュルームから出る水分で蒸し焼きにしたほうが早く火が通る』といいます。僕もこの考えに賛成です。

いずれにせよ、マッシュルームは洗ってから使って問題ありません。ちなみにトリュフもほとんど水を吸わないタイプのキノコなので、同様に多少なら洗っても問題ありません(冬トリュフの外側はやや硬いので普通は剥いて使いますが、洗って土を落とせば外側の硬い部分もオイルにつけるなどして活用できます)

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!