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『トマトと紅茶のコンソメ』の作り方

オーストラリア、シドニーにある『Tetsuya's』(現在はそれに加えてシンガポール『waku gin』)は世界ベストレストランに何度も名前を連ねる名店。シェフの和久田哲也氏は日本とオーストラリアのエッセンスを融合させた料理で、世界中から顧客を集めています。

そんなTetsuya'sのシグネチャーディッシュの一つが『トマトと紅茶のコンソメ』で。和久田シェフの著者「オーシャントラウトと塩昆布」(PHP新書)ではこんな風 に紹介されています。

発想の原点は菜食主義者の人のために考えた料理だった。 トマトの上澄みを使うという方法はよくあるが、それではトマトの風味の インパクトに乏しい。最終的に見つけたのはトマトを煎じるという方法だった。

レシピには生のトマト、乾燥トマトを水で煮だし、紅茶を加えるとあります。紅茶のタンニンがトマトの酸味を支えるとのこと。早速、試作してみました。

試した結果ですが、原材料選びがかなり重要なようです。まずは完熟トマトを入手す るところからはじめましょう。というのも普通のトマトを使うと煮出し液の段階では 違和感はないのですが、紅茶を入れたとたんに青臭みが全面に出てくるのです。ど うやら紅茶にはフレーバーを引き出す作用があるよう。考えてみればフレーバー ティーも同じ原理なのかもしれないですね。

トマトと紅茶のコンソメ (できあがり約400cc)
 トマト 2個 (500g相当)
 ドライトマト 20g
 紅茶(セイロンティー) 3g
 水 500cc

トマトは角切り(種と皮ごと)、分量の水、ドライトマトをひとつの鍋に入れて、 弱~中火にかけます。ここで強火にかけてしまうとドライトマトが柔らかくなるまえ にトマトが煮えてしまうからです。ここがまず最初のポイント。

ゆっくりと温度を上げていきます。

ふつふつと泡立ってきました。ここで93度です。沸騰させてはいけませんので、注 意。沸騰させてから弱火に落とすパターンだとトマトのフ レーバーが弱くなり、コンソメが濁りました。95度を超えないように注意して、火を 止めたり、弱火にかけたりしながら、15分ほど煮ていきます。液体の量が少ないのでちょっと注意が必要です。

15分経つとこんな感じ。時間はあくまで目安です。途中、何回も味見をしていると生 のトマトから加熱したトマトの味にコンソメの味が変わる瞬間があります。煮過ぎるとトマトが崩れてコンソメが濁りますので、長時 間火にかけるのは厳禁。

そこで紅茶を投入して、火を止めました。(紅茶はパックに入れてます)

3分間、そのままにして紅茶を煎じます。シェフはそのまま 煮出すようですが、液体の量が少ないので火を止めたほうが安全です。この紅茶の種類によっても分量は変わってきます。セイロンティーといっても色々とあるのが難しいところ。今回は3gにしましたが、2~4gが目安となります。調整してみてください。

でき上がった液体はまさにコンソメの色合い。リードキッチンペーパーを敷いた ざるで漉します。

この時も鍋ごと中身をあけたりしないように。コンソメが濁ってしまいますから。

コンソメができました。塩と砂糖で調味するということをシェフは書いていますが、 ここが一番の難所です。塩を加えるとコク味が薄れるので、あまり塩味を濃くしないことが肝要。トマトの風味が乏しい場合は砂糖を加えるといい、とシェフは述べていますが、砂糖を加えるとトマトの酸味が引き出されます。いいトマトさえ使えば、味付けはしないほうがいいくらいの感じです。

トマトの味のあとに紅茶の後味。コンソメの味わいは肉や野菜の旨味と焦がし玉ねぎの渋味、ゼラチンのコク味で構成されています。この料理では肉や野菜の旨みは トマトに含まれる旨味で、焦がし玉ねぎの渋味を紅茶のタンニンで、ゼラチンのコク味はトマトのペクチンで代用しているとも考えられます。この料理には菜食主義者のための料理を考えるうえでのヒントが詰まっているのではないでしょうか。

「おまけ」

 ダシガラのトマト。もったいないので再利用します。

鍋にいれて、味が抜けた分を補います。砂糖大さじ1、ワインビネガー大さじ1を加 えて火にかけました。結構酸っぱめにしているので、嫌いな方はビネガーを控えてもいいです。

ぐつぐつ煮て崩れたら、EVオリーブオイル30ccを加えます。EVオリーブオイルを加 えたら火を止めます。バージンオイルは加熱すると風味が落ちます。(火を通しても いいのですがもったいないので)

ミキサーにかけて、塩、胡椒で調味します。

ざるでこすと口当たりが良くなります。

できあがり、オリーブオイルが乳化して、コクが出ました。魚や肉料理にソースとし て使います。ビネガーと砂糖がいい味を出してくれる、、、はずです。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!