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ごうしゅいも(源平いも)の塩煮

日本で食べられている野菜は大きく「F1種」と「在来種」の2つ。F1はFilial 1 hybridの略で、異なる品種を交配するとその一世代は形質が安定する(小学校で習うメンデルの優性(顕性)の法則を思い出してください)性質を利用したもの。F1種は品質や収穫時期を揃えたり、病気への耐性がある品種を交雑させることもできるので、一気に普及しました。

一方の「在来種」(固定種とも言います)は地域で育てられてきた作物。こちらは地域で何世代も受け継がれていくなかで、人間にとって都合のいい形や味を選びながら(選別といいます)育まれてきたもの。例えば山形の在来品種、温海カブは扁平な形をしていますが、もともと遺伝子をさかのぼれば細長い形。しかし、漬物をするときに樽に並べやすいものを選び続けた結果、温海カブが生まれた、というわけ。

で、前置きが長くなりましたが、在来品種のじゃがいも『ごうしゅいも』を頂きました。徳島県の西部山村だけで生産されているじゃがいもで、この種芋を他の地域に持っていっても、この小さな形状にはならないそうです。

ごうしゅいもの特徴は小ぶりで、実が締まっていること。味は淡白で、なるほど米のない地域の炭水化物という感じで、味噌にあいます。この地域では田楽のことを「でこまわし」というのですが、竹のくしに芋を刺して味噌塗って、囲炉裏で焼いて食べます。実際に現地で食べたのですが、なかなか美味でした。

このごうしゅいも、味見をしてすぐに思い出したのはスペインのパパス アルガダス という料理。スペインのカナリア諸島にも伝統作物としてジャガイモがあり、それがちょうどこんな風な小さな芋で〈しわしわのじゃがいも〉という料理が名物とのこと。(あんま知らないので、スペインに詳しい方に詳しくはお聞きしたいところです)

こちらのスペイン王立ガストロノミー協会のページを参考に、料理してみます。

パパス アルガダスという料理は言ってみれば塩ゆで。それも大量の塩を入れて茹でます。今回は水500ccに対して、粗塩25gを投入しました。

そのまま強めの火加減で15分ほど煮ていきます。塩の脱水作用で新じゃがいもから水分を抜き、味を凝縮させる手法です。水分が煮詰まりすぎたら、湯を足します。

ジャガイモに火が通ったら水を少し残して残りを捨てます。

あとは粉吹いもをつくる要領で水気を飛ばします。塩が細かい結晶になって、芋の表面に吹いてきます。あれ、あんまりシワが寄りませんでしたね。塩が少なかったか、火が弱かったかもしれません。

しかし、ちゃんと表面に塩がまぶさってます。

試食。おお! これはおいしい。思ったほど塩は強くありません。ジャガイモってほとんど塩を吸い込まないので、表面に吹いた塩がいい加減になります。これは付け合せに活かせそうです。もちろん、小さめの新じゃがいもでも同様に調理できると思います。ごうしゅいも、もう少しあるのでもうちょっと料理してみます。

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樋口直哉(TravelingFoodLab.)

樋口直哉 作家・料理家 主な著作として小説『スープの国のお姫様』(小学館)ノンフィクション『おいしいものには理由がある』(角川書店)など。新刊『新しい料理の教科書』が1/17日に発売されました!

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