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「OKOME COLLECTION2018」レポ

10月21日、銀座三越9Fで開かれた「OKOME COLLECTION」というイベントに行ってきました。

このイベントを企画したのは銀座三越に出店している米店、米屋彦太郎(山田屋本店)の秋沢毬衣さん。(参考、山田屋本店で米について考えた)イベントの狙いは一番おいしいお米を探したり、ランクをつけるのではなく、好みのお米を探してもらうこと。秋沢さんが平成生まれで、今年が平成最後の年ということに因んで、会場には平成に開発された新品種が並びました。

○青森「青天の霹靂」(27年産)
○秋田「つぶぞろい」(27年産)
○秋田「秋のきらめき」(27年産)
○宮城「だて正夢」(30年産)
○宮城「ささ結」(27年産)
○山形「つや姫」(20年産)
○山形「雪若丸」(30年産)
○岩手「金色の風」(29年産)
○岩手「銀河のしずく」(28年産)
○新潟「新之助」(29年産)
○福井「いちほまれ」(30年産)
○兵庫「いのちの壱」(18年産)
○佐賀「さがびより」(22年産)

さて、このなかで知っている銘柄はどれくらいあるでしょうか。つや姫やさがびよりは結構、みんな知ってると思いますが、ささ結など僕が知らない品種も。

だて正夢もささ結は宮城の品種。宮城はササニシキとひとめぼれを生んだ県ですね。だて正夢は低アミロースでもちもち系の味でした。

https://www.foodkingdom-miyagi.jp/miyagimai/know/lineup/date/index.html宮城のお米より引用

血統的にもおぼろづきの血を引いているからでしょう。あ、お米の味は系統が参考になります。米の品種開発は20万種あるといわれる稲からいくつか(例えば100種類とか)選び、そこから栽培、収穫、食味評価をして、さらに数種類に絞り、そこから実際の農家に頼んで育ててもらい……という形で行います。一つの品種が生まれるまで軽く10年とか普通にある深い世界です。

僕が興味深いと思ったのは「ささ結」です。ささ結は「東北194号」という品種でお母さんがササニシキ、お父さんがひとめぼれ。ササニシキの血を引くコメなので、あっさりとした味が特徴。

かつて東の横綱と呼ばれたササニシキは(ちなみに西の横綱はコシヒカリです)寿司に最適なお米で人気があるのですが、日本全体の作付け面積で考えると1%くらいの超希少品種。きっかけは1993年の冷害で、大きな被害を受けたことから、耐冷性があるひとめぼれに品種を変えてしまった米農家が多いのです。

ささ結はひとめぼれから耐冷性を、ササニシキから味を引き継いだ優良品種。これからの展開に期待大です。(簡単そうに見えますが、味を残すのにも技術が必要です)もっとも生産量を拡大していくためには小さな問題も。JA古川、JAいわでやま、JAみどりの管内で生産された東北194号は「ささ結」という名前で販売されていますが、ブランド名なので、他の地域ではこの名前が使えないんですね。ブランド化との兼ね合いで難しいところです。

さて、特Aとか聞いたことがあると思いますが、お米にはランクがあります。このランクの基準に粘りがあるので、例えばここに並んだ新品種は基本的に粘りの強い品種です。特に低アミロース米と書いてあれば、粘りが強い品種。例えば佐賀の「さがびより」は九州ではじめて特Aをとったお米ですが、低アミロース品種です。ちなみに今回、試食したさがびよりにはわずかな雑味を感じました。雑味はタンパク質に由来するものか、と思いますが、このところ続く夏の暑さの影響があるかもしれません。

新品種のもう一つの傾向は『大粒化』。昔と比べて今の食べ物は味が濃厚なので、例えば〈唐揚げに負けないお米〉となるとご飯の粒は必然的に大きくなります。例えば兵庫の「いのちの壱」は突然変異したコシヒカリの大粒種です。食べるとすごくインパクトがあります。新潟県の「新之助」も粒が大きいですね。

そうしたなかで僕が今回、一番印象に残ったのはコシヒカリを生んだ福井県の新品種「いちほまれ」です。この品種は大粒でもなく、低アミロース米でもありませんが、これが最高においしい。雑味がなく、透明感がある味です。

スタッフとして来場されていた福井県農林水産部米穀戦略課主任の長谷さんによると「食糧管理法のなかにあってコシヒカリは『おいしい品種』として開発されたんですね。そして、コシヒカリが『おいしい』なら、このいちほまれの開発には『たのしい』というのがありました」

福井県が生んだコシヒカリは日本のお米のスタンダードの地位を確立しましたが、実は五十年前の古い品種です。(開発がはじまったのは1946年で、コシヒカリとして命名されたのは1956年)当時は食糧管理法(いわゆる食管法)によってお米が管理されていた時代で、求められていたのはとにかく味よりも収量の安定性という。そうしたなかで食味を求めたコシヒカリは特別なお米だったんですね。

「おいしいお米というのはないんです。あるのはおいしいご飯。つまり、お米の味は炊飯によっても変わるということですね。例えばタイガーさんの炊飯器はやわらかめに炊けますし、東芝はしっかり目。パナソニックはふっくらという具合です。開発にあたってはすべての炊飯器でテストを繰り返し、今求められるお米とはなにか、という点を考えました」

コシヒカリの後継品種と位置づけられれているいちほまれ。パナソニックの調査によると5年前と比べて今の消費者はお米の〈粒立ち〉を求められている傾向があるそう。粒立ちに優れたいちほまれはまさにそういう品種。

すごくきれいな味なので、人によっては「味がない」という意見もあるかもしれませんが、こういうお米がスタンダードになると料理がより引き立つのでは。

会場に並んだお米を食べ続けましたが、飽きることがないのがご飯の凄さ。張り、みずみずしさ、甘さ、キレの良さ、重厚感などすべてがはっきりと違う味ということにも驚きます。たのしいイベントでした。


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