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粉ふきいもができればおいしいコロッケはつくれる

先日、掲載されたこのnoteが面白かったです。

フードライターの白央さんが行ったアンケートによると「家庭科で習った料理といえば?」という質問に対して最も多かった回答は『粉ふきいも』とのこと。昭和33年改訂の小学校学習指導要領には「ごはん・みそしる・目玉焼き・こふきいも・サンドイッチ」(6年)とあり、このあたりから粉ふきいもが登場しています。ただ、茹でるのではなく粉吹きという調理があることからとりあげられました。

最近の教科書からは粉ふきいもというメニューは姿を消しつつあり、そのポジションにはポテトサラダが居座っているようです。しかし、ポテトサラダにも途中に粉吹きにする工程が挟まれているので、完全に消えたわけではありません。

粉ふきいもの工程=茹でたジャガイモの水分を飛ばす工程は、ジャガイモを使ったありとあらゆる料理で使います。マッシュポテトにも茹でたジャガイモの水分を飛ばす工程が含まれていますし、ローストポテトも粉ふきいもにしてからオーブンに入れないと上手に焼けません。調理工程において茹でたジャガイモの水分を飛ばす作業は料理の基本です。

さて、ジャガイモ料理の定番、コロッケも粉ふきいもの操作が鍵になる料理の一つです。つまり、粉ふきいもができれば定番料理のコロッケも上手につくることができるというわけ。というわけで、今日の料理は『基本のコロッケ』。

基本のコロッケ(6個分)
ジャガイモ 550g程度
合い挽き肉 150〜200g相当
玉ねぎ    100g(半分をみじんぎり)
塩     小さじ1/2
挽き黒胡椒  適量   
ドライパン粉    適量
小麦粉    適量
卵      1個

じゃがいも550gという分量を出していますが、皮を剥いて500gあればOKです。じゃがいもの重さをいちいち計らないと思いますが、スーパーで売られている一袋がだいたいこの分量のはず。目で見るとこんな感じです。

ジャガイモは皮を剥き、輪切りにして水で表面を軽く洗います。コロッケに使うジャガイモをおいしく茹でるコツはマッシュポテトと同じく、細胞を破裂させないことです。そのためには皮付きのまま茹でるよりも皮を剥いてある程度の厚さに切ってから茹でます。

ジャガイモは0.5%塩分濃度の水に入れ、火にかけます。塩を加えることでペクチンが溶けやすくなり、この後の工程でジャガイモを潰す作業が簡単になるからです。沸騰したら弱火に落として、煮崩れる限界まで茹でます。

並行して、混ぜる具を準備します。中火にかけたフライパンに分量外の油小さじ1を敷き、挽き肉を加熱します。広げるようにして焦げ目をつけるといいでしょう。

焦げ目がついたら、裏返し、もう半分にも焼き色がついたら、挽き肉から出てきた脂で玉ねぎを炒めます。本当は別々に炒めた方がおいしいのですが、コロッケにそこまで手間はかけられないので。

塩、胡椒で味付け。分量の塩を入れるとちょっと多いかな、と思うかもしれませんが、意外と大丈夫(のはず)。

黒胡椒はたっぷりめに入れたほうがおいしいです。玉ねぎも端の方は焦げ目がついていますが、問題なし。具材はきっちりと加熱してください。コロッケが食中毒の原因になる場合はほとんど具材の加熱不足によるものなので。

ジャガイモが茹で上がりました。ザルにとって水分を抜き、熱い鍋に戻します。

弱火にかけながら鍋を揺すると粉が吹いてきます。これが粉ふきいもです。ジャガイモの加熱時間が短いと粉が吹きませんし、長いと煮崩れます。ここが難しいところです。ゆで加減は金串を刺して確かめますが、ジャガイモの選び方やゆで加減なので、かなり味の差が出ます。上手にできた粉ふきいもは噛むとさらりと口に溶ける立派なつけ合わせですが、適当につくった粉ふきいもはただの茹でイモです。

基本的に煮くずれしやすいイモは上手に粉が吹きます。これを調理科学の世界では「粉ふき性が良好」と言ったりします。様々な先行研究もあり、基本的に熟度の高い(つまり新じゃがは駄目)、粉質系のジャガイモが粉ふき性が良好と言えるか、と思います。

水分が飛んだのでジャガイモを潰していきます。ゴムべらか木べらを使って、少しだけイモの塊を残すのがポイント。混ぜすぎると細胞が壊れ、粘りが出てくるので注意してください。

具を混ぜていきます。さきほどジャガイモの水分を飛ばしているので、具材の水分や油分がジャガイモに染みこみます。これがコロッケのおいしさのポイント。

最終的にはこのくらいまで混ぜます。ジャガイモの粒がかすかに残っている程度ですね。

成形して、冷やします。熱い状態だと崩れそうになりますが、冷やすと扱いやすくなります。ここでコツを一つ。

揚げている最中の破裂を防ぐには種を冷やす

コロッケを揚げている時に「爆発した」という経験はありませんか? コロッケが爆発する原因は内部の水蒸気が膨張してしまうこと。具材にはすでに火が入っているので加熱しすぎは厳禁。なので破裂を防ぐために一度、種を冷やしましょう。そうすれば加熱をしても内部の温度が上がりすぎず、破裂するリスクをかなり減らせます。余談ですが、僕はこの状態でつまみ食いするのが子供の頃、好きでした。(本当に余談ですが……)

さて、いよいよ揚げていきましょう。まずはコロッケに小麦粉(薄力粉でも強力粉でも)をまぶします。

刷毛を使うとまんべんなくはたけます。

ここからは右手と左手をわけて作業します。右手でコロッケに卵をつけます。

パン粉をつけるのは左手。このように右手と左手をわけて作業しないと、手がパン粉だらけになりますよ。

生パン粉のほうがいいような気がしますが、最近市販されている乾燥パン粉はかなり優秀です。生パン粉には水分が含まれるのでトンカツなどを揚げるときには有効ですが(豚肉の表面が気化熱によって冷やされるので)コロッケの場合はそこまで気を使う必要はありません(すでに火が通っているので)。さきほど説明した通り、コロッケが爆発するのは加熱のしすぎが原因。乾燥パン粉を使ったほうが短い加熱時間でも揚げ色がつくので、コロッケには向いていると思います。

フライパンに高さ1cm程度の揚げ油を入れ、やや低温150℃くらいの油から揚げていきます。

焦げ目がついたら裏返し、火を弱めてさらに揚げます。全体にこんがりとした揚げ色がついたら出来上がり。

キャベツに千切りとレモンを添えてどうぞ。トマトケチャップと中濃ソースを1:2で混ぜたソースをかけて食べるとおいしいはず。

コロッケは衣をつけた状態で冷凍することもできます。その場合は解凍せずにそのまま揚げますが、その時は低温の油ではなく冷たい油から揚げると上手に揚がります。もしも、なかが冷たいという場合はオーブンかトースター(の場合はアルミホイルをかぶせて、焦げ付きを防ぎます)で温めます。コロッケは手間はかかりますが低コストなのが魅力。昭和の時代の智慧という感じがします。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!