酢素麺の作り方

明日、更新予定のcakes連載「おいしい」をつくる料理の新常識」では「酢を使った作り置き、3種」を紹介しています。

こちらで紹介するのは「酢そうめん」の作り方です。蒸し暑くなってきたので「そうめんもいいか」と。そうめんつゆではなく、酢を入れてさっぱりさせたかけだしで食べるそうめんです。

かけだし
水    600cc
鰹節   15g
薄口醤油 50cc

なんでこちらをcakesに載せなかったのか、というと僕のレシピではめずらしく「薄口醤油」を使っているからです。この調味料をレシピに挙げると「家にないんですが……」と言われることは目に見えています。京味の西健一郎さんが「昔の東京では薄口醤油は手に入らなかったので、濃口を水で薄めて塩を加えるなど工夫していた」と語っているところからも、かつては薄口醤油の入手は困難でした。

家庭では使用頻度が低く、使い切れない、という問題も。しかし、最近では空気を遮断するパッケージの商品が登場し、薄口を家で常備するのは以前よりずっと楽になりました。

今回はヤマサの鮮度の一滴、うすくちを使っています。別に「薄口がないから作れない!」というわけじゃないんですよ。濃口35ccくらいにして後は塩で調味すればまったく問題ありません。ただ、レシピ化する際に塩の分量が微妙になるので、確実に再現性が落ちるんですね。薄口醤油であれば塩分濃度がJAS規格で定められているので、メーカーが変わっても塩分濃度に関しては再現性が高い、というだけです。なので僕としては「できたら薄口を使ってください」というわけ。

すべての材料を鍋に入れて、中火にかけます。

沸いたら弱火に落として1分。鰹節の香気成分は揮発性のため、短時間の加熱でも大部分は揮発してしまいます。1分で旨味はほぼ完全に抽出されるのでこれ以上煮る必要はなく、そのほうが鰹節の香りを生かすことができます。熱湯に鰹節を入れるのと、このように水から抽出することに差はあるのでしょうか? 水から煮出したほうがごく僅かにアミノ酸抽出量が多くなりますが、生臭みなどが出やすいという報告があります。しかし、ここでは醤油を加えて一緒に加熱しているため、臭みは問題になりません。魚などと同様に生臭みの成分はアルカリ性ですが、醤油は弱酸性のため、それを中和してくれるからです。これを醤油の緩衝作用といいます。

ザルで濾します。この状態でかけだしとして使うことができます。ここで一度、味見をしておいてください。

今回は「酢そうめん」なので、かけだしに酢大さじ3と砂糖小さじ1が入ります。米酢は富士酢を使っています。酢を入れてからもう一度味見をするとかなりすっきりとした味わいになっていることがわかるか、と思います。酢を加えることで得られる酸味には

旨味を→抑える
甘味を→抑える
苦味を→抑える
塩味を→強める

働きがあります。レモン汁を加えることで甘味を抑えたり、サンマのハラワタにスダチを絞ると苦味が減ったりというのは誰でも経験があるので、すぐに理解できるか、と思いますが、注目すべき点は酸味は「旨味を抑える」ということ。我々はつい旨味を多く感じさせる料理が「おいしい」と思いがちですが、旨味を抑えたすっきりとした味もまたおいしいものです。

あとはそうめんを茹でてから、冷水で冷やし、このかけだしをかければ出来上がりなのですが、今日はちょっとトッピングを用意しました。

1つ目は長いもです。150g分用意しました。個人的な話ですが、僕は長いもの痒さに非常に弱いので、おろすときには必ず調理用のニトリル手袋を使っています。

とろろは味噌で味付けしました。白みそなら30g、信州味噌なら15gくらいでしょうか。少量の水で溶いてから混ぜたほうが混ざりやすいかもしれません。とろろを味噌で味付けする手法は土井善晴さんが紹介していて、「これは素晴らしい」と思ったので取り入れました。

オクラも入れようかな、と。冷凍オクラが売っていたので買ってきました。

冷凍おくらを自然解凍し、包丁で細かく刻めば出来上がりです。生のオクラを使う場合は塩ゆでしてから水にとり、水気を切ってから同じように刻んでください。

そうめんの種類はなんでもいいのですが、今回は僕の好きな半田そうめんを使いました。他のそうめんと比べてやや太めの半田そうめんは強いコシが特徴です。

袋の表示時間どおりに茹でてから水で洗います。

そうめんの作り方は以前、cakesでもやったんですよね。

氷水で締めてから器に盛り付け、かけだしを注ぎます。おろしとろろ、オクラとろろ、紅生姜をトッピングすれば完成です。

そんなに時間はかかりません。酢が効いてスカッとしたかけだしがいい味だと思います。夕ご飯にちょっと晩酌した後の締めにおすすめの一品です。


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おいしさの新常識、スピンオフ

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コメント3件

いつも楽しみしております。
酢について質問なのですが、以前いわしのマリネのレシピ(間違っていたらすいません)の際に、米酢は旨味が強いのでおススメとおっしゃっていたかと記憶しています。今回の旨味を抑えるという効果と、米酢の旨味、どのように考えればいいでしょうか。
よろしくお願い致します。
米酢は実際、アミノ酸が多いので、ワインビネガーと比較すると旨味やコクを感じるお酢という理解でいいか、と思います。

酸味が旨味を抑える効果というのは味の相互作用という生理的な効果です。苦味に酸味を加えると苦味自体は変わりませんが、舌には感じにくくなります。それと同様に旨味に酸味を加えると、旨味自体は変わりませんが舌には感じにくくなる、ということです。つまり今回は出汁に酢を加えることで、出汁の旨味を抑えるので、舌はすっきりとした酢の酸味や旨味を感じやすくなると思います。
ありがとうございます。
あるなしと、感じやすい感じにくいを混同しておりました。
実際に試してみたいと思います。
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