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カラメルの化学「カラメルクリームの作り方」

みんなが好きなカラメルソース。カラメルという言葉はもともとフランス語の「焦げた砂糖」に由来します。今日はカラメルの原理を復習します。

どんな種類の糖でも加熱を続けると熱によって分解されます。この反応が「カラメル化」です。角砂糖(ショ糖)は無味無臭で単一の分子が集まったものですが、熱を加えることで分子構造が壊れて、4000を越える化合物が生成されます。そこに含まれる様々な芳香成分──アルコールやアセトン、アルデヒド(シェリー酒の匂い)酢酸、ジアセチル(バターの香り)、酢酸エチル(果物の香り)、フラン(ナッツの香り)、マルトール(トーストの香り)などが複雑な風味を生み出すのです。

カラメルソースの作り方は様々。砂糖を鍋に入れて火にかける、と書いてある料理本もあれば、砂糖と水を鍋に入れて加熱する、という人もいます。ハロルドマギーは

水があるとシロップの加熱時間が長くなるので、一連の反応が起きる時間も長くなり、砂糖だけを短時間加熱するよりも強い風味が出る。

と述べていますが、この2つの反応は微妙に異なり、もちろん仕上がりの風味も違ったものになります。水が存在することでショ糖がブドウ糖と果糖に分解されやすくなるからです。この水和という化学反応はシンプルな化学式で表すことができます。

水があることで果糖とブドウ糖に分解されやすくなります。中学、高校の化学の時間を思い出さずとも、右と左の原子の数が揃っていることがわかりますね。さて、今日はそんな作り方による風味の違いを踏まえたうえで、カラメルクリームをつくります。

〈キャラメルクリーム〉
グラニュー糖 150g
塩バター 15g
生クリーム 150cc

分量はちょっと多めです。冷蔵庫で保存すればかなり長く日持ちがするので、パンケーキやクレープに塗って使ってください。

砂糖は純粋なショ糖であるグラニュー糖を使っています。ちなみに上白糖には少量の転化糖(ブドウ糖と果糖)が含まれているのでグラニュー糖より若干、低い温度でカラメル化します。

鍋に分量の砂糖と水をスプーン1杯ほどいれて火にかけます。前回、プリンをつくるときは砂糖だけを加熱しましたが、今回は水を加えて加熱します。キャラメルクリームは生クリームが入るのでその分だけ風味を強くしたいからです。

火加減は中火です。はじめはゆっくりと加 熱しましょう。カラメル化がはじまると熱が放出されるので火加減に注意しないと砂糖が焦げてしまいます。

周囲が溶けはじめました。砂糖は180℃くらいで溶け始めます。結晶化する恐れがありますのでかき混ぜるな、と料理本には書いてありますが、このままだと内側の砂糖が反応する前に外側が焦げてしまうので、静かに混ぜます。この時はなるべく静かに混ぜましょう。全体がざっくりと混ざったら、もう混ぜてはいけません。

この時、火を弱火に落とします。カラメル化反応は熱を放出するので火加減に注意しないとあっという間に行き過ぎてしまいます。カラメル化は温度だけではなく火加減によっても変わってきます。(反応速度が変わるので)

参考までに大井裕子らによる『加熱速度や加熱温度がカラメルソースの色・味に及ぼす影響』という論文から図4を引用します。

カラメル化の反応は複雑でこのように難しいもの。ただ、多めの分量でつくると反応を多少緩やかにすることができるので失敗のリスクが減ります。好みの温度帯を見つけることが大事です。

さらに加熱していくと、白い煙が立ちはじめ、泡が出てきます。カラメル反応が進ん だ状態です。このくらいになったら火を止めます。火を止めても反応は進んでいきます。

かなり濃い色になりました。この時、写真のカラメルの温度は220℃前後。温度が高いほど複雑な風味が得られますが、味は苦くなっていきます。生クリームを一気に加えて温度を下げるとともに、反応を止めます。キベラで混ぜて溶かします。

生クリームにはタンパク質が含まれているため、カラメル化に加えて糖の一部がメイラード反応を起こし、これがソースにさらに豊かな風味を与えてくれます。

仕上げにバターを加えます。バターを砂糖と一緒に加える場合もありますが、乳漿が 焦げて黒いブツブツが浮いてしまうので、あまり好ましくありません。キャラメルクリームの出来上がりです。好みで塩をひとつまみ入れても複雑さが出ます。バニラアイスクリームにかけるとすさまじいカロリーですが、おいしさは格別。

普通のカラメルソースは電子レンジを使うと簡単につくることもできます。作り方は砂糖と水をボウルに入れて様子を見ながらレンジで加熱するだけです。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!