生クリームの泡立て方

生クリームを泡立てる、とレシピに書くのは簡単ですが、なぜ泡立つか、不思議に思いませんか? 今日は生クリームの泡立て、いわゆるホイップクリームの科学を復習します。

卵白を泡立てたメレンゲはタンパク質が空気を抱え込む役割を果たしますが、生クリームの構造を支えるのは脂肪分。泡立てることで油滴の外側のタンパク質(カゼイン)の膜が破れ、脂肪が露出した状態になります。脂肪は水に反発する性質があるので、別の脂肪球同士とくっつきます。隣り合う脂肪球同士が結合することで空気を抱え込む構造をつくるのです。さらに泡立て続けると今度は脂肪球同士が完全にくっつき、バターと水分に分離する、という原理です。この仕組みを理解すると生クリームの泡立てる時のポイントがわかってきます。

ホイップクリーム(クリームシャンティー)
生クリーム 100cc
砂糖    10g

日本で売られている生クリームは純乳脂肪の生クリームと植物性のホイップクリームの2種類。食べておいしいのは乳脂肪の生クリーム。ホイップクリームはあっさりした味で、形が崩れにくいのが特徴。ケーキに塗ったりするには便利ですが、料理やお菓子には通常、純乳脂肪のものを選びます。きれいに塗ったり、絞ったりしたいという場合には乳脂肪と植物性のクリームを半々で混ぜるという手もあります。

最初に生クリームの構造は脂肪分が支えていると説明しましたが、泡立てるに必要な要素はまず脂肪分。最低30%以上の脂肪分が必要です。

日本で販売されている生クリームには36%前後のものと、45%前後の2種類があります。好みで選ぶことになりますが、泡立てやすいのは後者。しかし、最近のお菓子屋さんやレストランでは軽い味わいが好まれるためか、36%前後が多く使われています。

また、時々『(泡立て器やボウルに少しでも)水気が残っていると生クリームは泡立たない』と書いてある料理本がありますが、多少の水気では泡立てにはあまり影響はなく、45%の生クリームに1/4量の牛乳を足すことで脂肪分を調整し、軽くて軟らかい泡をつくることもできます。

脂肪分が構造を支えるので、泡立てる際には低温を維持することが大事になってきます。少し温度が高いだけでもクリームの乳脂肪の構造は軟らかくなり、泡が潰れてしまうからです。そのため生クリームの温度は5℃〜10℃の温度の範囲を維持するのがコツ。

そのためにはボールをよく冷やしておき、余裕があれば泡立て器も冷やしておきます。というのは泡立てる際に空気を取りこむので(空気は室温ですから)、クリームがすぐに温まってしまうから。温度が高いとキメが粗く、水っぽいホイップクリームになってしまいます。より完璧を目指すなら室温も下げておきましょう。

ハロルドマギーは

理想的には、泡立てる12時間以上前からクリームを冷蔵庫で“熟成”させるとよい。長く冷やすと乳脂肪の一部が針状結晶を形成し、これが膜の剥離を促して冷たいクリーム中にも少しだけ存在する液状脂肪を吸着する。

と補足しています。参考にしたいアドバイスです。

今回は冷凍庫に入れて置いたボウルを使って泡立てますが、理想は氷水で冷やしながら泡立てること。泡立て器はステンレス製なので、ボウルはアルミ製を避け、ガラス製かステンレス製を使います。(ステンレスの方がアルミよりも硬いので、表面が削れて味を損ねるので)

砂糖の量は好みです。今回は200ccに対して10gの砂糖を加えています。好みで調整しましょう。軽い甘さのグラニュー糖がおすすめです。

もう1つだけ重要なポイントがありまして、それは泡立て器の種類です。左側が泡立て用で、右側はソース用の泡立て器。違いがわかりますか? 泡立て器はワイヤーの数が多く、不揃いな泡立て用のものを使ってください。100円均一で売っているような泡立て器はワイヤーの数が少ないので泡立てるのが難しいです。

参考までに左側の泡立て器はOXOの製品です。柳宗理の泡立て器も使いやすいと思います。いい道具を使えばそれだけ楽できます。右側の泡立て器ではいくらやっても疲れるだけです。

さて、泡立てはじます。泡立てる時には泡立て器を円運動ではなく、縦に動かすようにします。せん断力によって脂肪球の膜が効率よく剥がれるからです。はじめは空気を含んで泡が出ますが、それは無視してかまいません。(すぐに消えます)泡立てるというよりも脂肪球を壊すイメージで。

次第にもったりしてきます。手首のスナップを使って泡立てていきます。腕が疲れるという場合は泡立て器の使い方が円運動になっている証拠。あくまで縦に動かしましょう。

まだゆるい感じ。

もう少し泡立てるととろーりとしたホイップクリームになります。ムースやマンゴープリンの上にソースとしてかけるならこのくらい。

もう少し、泡立てると軽く角が立ち、すぐにお辞儀をするくらいの状態になりました。この状態が普通はベスト。実際には9分立てのようにしっかりと泡立てる場合もありますが、手前で止めておくのが安全策です。泡立てる時間は人によって異なりますが慣れてくれば1分〜1分30秒くらいでここまできます。電動泡立て器をとりだすよりも早くできるはずです。

切ったいちごに添えるだけで立派なデザートになりますし、さらにボリュームを出すなら小さく切るかちぎったスポンジケーキを上に載せるという手もあります。

どうしても生クリームの泡立てが上手くいかないという方は生クリームを酸性にするという裏技もあります。(レモン汁小さじ1/2が目安)酸性にすることで、乳脂肪膜のタンパク質が剥がれやすくなり、簡単に泡立ちます。ただし、かすかな酸味がつき空気が取りこまれるよりも早く泡立ってしまうため仕上がりは重くなってしまいます。

電動泡立て器を使った方が楽ですが、おいしいのは手で泡立てたもの。手間と労力はかかりますが、より多くの空気が取りこまれるからです。お菓子屋さんなどでは途中まで電動泡立て器で泡立て、最後に手で泡立ているところもあるようです。もっと軽くしたい場合はガスを充填して泡立てる方法があります。市販の缶入りのホイップクリームが簡単に入手できますが、エスプーマサイフォンでも同様につくることができます。しかし、ガスで泡立てたそれは脂肪球が構造を形成していないので、すぐにしぼんでしまうのが難点。ムースなどには向きませんので注意が必要です。いずれにせよホイップクリームを上手につくることができればパンケーキやシフォンケーキなどデザートの幅がぐっと広がります。

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コメント1件

生クリームも奥深いですね!ケーキを作るときの楽しみが増えました。ありがとうございます。
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