見出し画像

生食用牡蠣と加熱用牡蠣の違いとカキフライの作り方

スーパーの鮮魚売り場に行くと、パック詰めのむき身の牡蠣が売られています。パッケージには『加熱用』と『生食用』の表示。この違いはご存知ですか?
鮮度と思われるかもしれませんが、じつは加熱用も生食用も鮮度は同じ。生食用と加熱用の違いは指定海域や浄化処理の有無によるものです。

1. 指定海域:採取したかきをそのまま生食用かきとして出荷できる海域
2. 条件付指定海域:採取したかきを人工浄化(おおむね20時間換水することによ
って生食用かきとして出荷できる海域
3. 指定外海域:加熱調理用かきしか出荷できない海域

「生食用の牡蠣が一番美味しいんじゃないの?」
と思う方が多いようですが、それほど簡単ではないのが牡蠣の世界。まず1の指定海域の牡蠣は数が少なく、入手が困難なうえ、陸地から遠いところがほとんど。そのため、海に含まれるプランクトンなどの栄養分が少ないため、味が乗ってきません。きれいな海で育った牡蠣が美味しい、とは限らないのです。一般的に売られている生食用の牡蠣は2の条件付指定海域で養殖されたものです。人口浄化処理を施しているので生で安心して食べられるのですが、浄化することで味が抜けてしまうというデメリットも。
逆に加熱用と指定される牡蠣は陸地に近く、森などから川を通じて流れてくる栄養豊富な海域で育ったものがほとんど。そのため実入りがよく、味がいいのですが、もちろん人が住んでいる平野部にも近いためノロウイルスによる感染の危険性があるのできちんと加熱して食べる必要があります。なかなか難しいところ。

まとめるとしっかりと加熱して食べるなら、安価な加熱用を選ぶのが賢い選択で、生食用を加熱して食べるのは無意味ということです。

今日は牡蠣フライをつくります。

かきフライ(一人前)
 剥きかき(加熱用)・・・6個
 パン粉 強力粉 卵・・・各適量
 レタスの千切り 
 レモンのくし切り

加熱用の牡蠣をまず洗います。『牡蠣の洗い方研究』で解説した通り、片栗粉で物理的に汚れや臭みを除去するのが効率的です。

塩で軽く味をつけた湯を準備し(1%目安)十秒ほど牡蠣を茹でます。表面が締まり扱いが楽になります。これが秘密の下処理です。

表面だけ茹でた牡蠣は冷水にとって冷まします。

キッチンペーパーで水気を拭き取っておきましょう。下茹ですることで、油はねも少なくなりますし、衣もつけやすくなります。牡蠣に塩気があるので塩はふりませんが、胡椒は好みで振っておきます。京都のある洋食屋さんでは牡蠣フライに使う牡蠣に粗挽きの黒胡椒をたっぷりと振りかけていました。胡椒を振るとビールによくあう味になりますね。

衣ですが、今日はドライパン粉を使います。ドライパン粉は安い物で大丈夫。そのままでもいいのですが、パン粉をザルに押しつけて細かくしました。

パン粉を使った揚げ物は食材の加熱時間に応じてパン粉の大きさを変える必要があります。例えばトンカツの豚肉は火が通るまでに時間がかかるので大きめのパン粉が向いています。また、ドライパン粉ではなく水分を含んだ生パン粉を使うことでじっくりと低温で時間をかけて揚げることに繋がります。ですからおいしいトンカツ屋さんは自分たちで使う分のパン粉をつくるのです。

逆にウインナシュニッツェルやミラノ風カツレツのように薄切りの豚肉を揚げるのであれば細かいパン粉を使います。火を通すのに時間をかけたくないので、生パン粉ではなくドライパン粉を選びます。ただ、ドライパン粉はボリュームがでないので、このあたりは好みもあります。

パン粉を薄くつけるために卵(今回は一個分)に水大さじ1を加えました。溶き卵の扱いによっても揚げ物の印象は違ってきます。溶き卵に卵黄をプラスしたりバッター液(卵と小麦粉を混ぜた液体)を使えば厚めの衣になりますし、このように粘度を下げることで衣を薄くできます。

牡蠣に強力粉(薄力粉でも大丈夫)を振ってザルなどで余分な粉を落とします。これも衣を薄くするためのテクニック。

箸で牡蠣に卵液を絡ませます。忙しい店では卵に牡蠣を入れた状態でスタンバイしておき、注文が入ったら衣をつけて揚げる、というオペレーションを採用しているところもあるようです。

押さえつけるようにしてパン粉をつけます。この時、右手は箸で卵液をつける作業、左手は衣をつける作業と分担するのがコツ。

揚げていきます。温度は170°C。パン粉を入れるとだいたい感じがつかめます。細かな泡が立たなければまだダメです。

牡蠣を入れてからはしばらく触らないこと。衣がはがれてしまいます。衣に穴があくとそこから油が染みこんできて、仕上がりが悪くなります。揚げ物は衣のなかで蒸された状態になるからおいしいのです。

焦げ目がついたら裏返して反対側も色をつけていきます。揚げ上がりは色で判断します。香ばしく美味しそうな色ならOK。

ザルにとって油を切ります。

揚げ物にはキャベツの千切りを添えますが、牡蠣フライにはレタスの千切りがおすすめです。多少、太いくらいがおいしいか、と思います。レモンを搾り、好みでウスターソースや中濃ソースをかけて召し上がってください。タルタルソースの作り方は別の機会に紹介します。

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!