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熊本のホロホロ鳥とドライエイジングあか牛経産牛のセミナーに行ってきました

昨日、「九州食材のセミナー」に行ってきました。講師は流通ジャーナリストの山本謙治さん(通称、やまけんさん)。

やまけんさんは「月刊専門料理」などの専門誌でもお馴染みで、日本に「赤身肉」や「熟成肉」ブームを定着させた業界の有名人。農作物や生産物の流通コンサルティングのかたわら、ジャーナリストの立場で本も多数、出版されています。縁があって僕も以前、インタビューをしていただいたことがあります。

このセミナーの主催は九州の丸菱。熊本地震の震源地だった益城町に本社がある製菓・製パンの原材料・器具の供給や創業支援、食材などの提供を行う総合商社で、九州では超有名な会社。(すみません、僕は知りませんでした)2015年から株式会社MARSという会社を設立し、一次産業の立て直しをミッションに、九州食材を売り出しているそうです。

現状、牛の消費は伸びていますが、生産農家自体は減っていますし、牛の飼養頭数(飼われている数)はどんどん減っています。儲からないからなのですが、そこで注目されているのが経産牛。子どもを産んだお母さん牛の肉です。経産牛は今までは挽き肉として二束三文で出荷されていましたが、きちんと再肥育してテーブルミートとして出荷する動きが各地ではじまっています。

「これはすごくいいことで、経産牛肉のほうがおいしいんですよね。未経産の牛肉、つまり三年くらいしか飼っていない牛の肉を我々、日本人はおいしいと言って食べていますけれど、味が乗るのは経産牛。フランスとかイタリアでは経産牛の方が(市場価格も)高いんです」

やまけんさんがもう一つ、強調されていたのは「オーガニック&ナチュラル」「サスティナビリティ」「アニマルウェルフェア(動物福祉)」というキーワード。環境に対する影響が少なく、持続可能で、健康にいい食べ物ですね。こうした時代がくると「消費者は情報で肉を選ぶ時代になっていくよ」というのが、やまけんさんからのアドバイス。情報というのは背景とか、物語という風にも言い換えられます。

そうしたなかで出てくるのがただ安くて、そこそこおいしいアメリカ産牛肉やオージービーフではなくて、背景がちゃんとある「天草ほろほろ鳥」と「あか牛経産牛」というわけ。

これが天草ほろほろ鳥。ほろほろ鳥は原種に近い品種なので小さいのですが、意外とでかい印象です。ホロホロ鳥はフランスでは鳥の女王と呼ばれ、肉質のきめ細かさが特徴。ただ、日本国内では生産されていません。国産というと岩手県の石黒農場が有名です。

試食してみましたが、とびきりジューシー。ほろほろ鳥特有の濃い味はありますが、脂がすごく軽いのが特徴ですね。つい国産というだけで石黒農場のほろほろ鳥と比べたくなりますが、まったくの別物と考えたほうがいいでしょう。同じ鳥でも味が違うのはやっぱり環境と餌の違い。聞けば飼料の15%ほどお米を食べさせているとのこと。だから、脂がすごく軽いんですね。地域の未利用資源なども食べさせていて、独自の味を出すよう工夫されています。

次にドライエイジングビーフ。丸菱ドライエイジングについての説明は会社のウェブページに詳しく載っています。

サーロインを焼いて食べましたが、ざくざくとした身質でお客さんにすごく受けそうです。筋がかみ切れるのがドライエイジングの特徴です。これは技術がつくる味ですねー。経産牛肉においしさの価値がつくようになると生産者も潤いますし(持続可能に繋がる)、牛の命にも少しは報いることができる気がします。

これからは情報、とよく聞きますが、地方には優れた食材がたくさんあるので、あとの問題は「伝え方」ですよね。飲食店ならではの伝え方を考えていかないといけない。

日本の飲食店は基本的に味のレベルが高く、文句のつけようがないのですが、一点だけ料理を自分語りではなく、物語として訴求する、という部分だけが弱いと個人的には思っているので、そのあたりについていつか本に書きたいと思っております。

オリジナルのシャルキュトリー(加工品)も絶品でした。

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