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cakes連載〈「 おいしい」をつくる料理の新常識〉第16回余談『きのこの味噌汁』

cakes連載のおまけシリーズです。今回はきのこ調理のポイント。無料公開期間が短くなったので(たしか……二日だったかな?)早めに読むか、有料購読してください。

例えば『きのこをおいしく炒めよう♪』という記事には「強火一気に炒める!」とありますし、カゴメ監修による『きのこ料理のおいしさが変わる!煮る、炒める、揚げるコツ』という記事にも「炒め料理の場合は、強火で火を通すのがコツ」とあるようにきのこは強火で炒めるというのが定説です。

今回の調理法ではそれらの定説に逆らい、弱火で加熱し、水分を抜いていきます。個人的にはテストの結果、きのこの水分が40%〜50%減った状態の食感がベストと思っています。

根拠はきのこの旨味がグルタミン酸などのアミノ酸系とは違い、細胞の核に含まれる核酸が、酵素によって分解される核酸系の旨味(グアニル酸)が中心なこと。つまり、酵素の活性化する温度帯での加熱が肝になるからです。強火で加熱した場合は酵素が働く温度帯での加熱時間を充分にとれず、旨味が引き出せません。

よく考えるときのこはよくホイル焼きにしますが、酵素が働くのに適した時間を長くとれるので非常に合理的と言えます。冬の時期、鍋をする時に『エノキダケ』や『舞茸』を入れますね。これも最初から入れて加熱したほうが旨味を多く抽出することができます。

こちらではきのこ汁の作り方をご紹介します。(4人前)まず用意するのはきのこが600g。

油揚げと茄子が一本入ります。油揚げではなく鶏モモ肉を小さく切って使うと力強い味になります。

えのきの一番下、この部分がおいしいので捨てないようにしてくださいね。手でほぐせばOKです。

鍋に小さく裂いたきのこ、油揚げ、茄子の輪切りを入れて出汁800ccを入れて火にかけます。

酵素が活性化する温度帯を通過させるために、冷たい状態から加熱することがポイント。

沸騰してきたら火を弱火にして、茄子がやわらかくなるまで5分間煮ます。

好みの味噌を溶きます。

出来上がり。粉山椒を振るといいでしょう。今日は赤だしを使いましたが、きのこ汁は長野県の郷土料理なので、信州味噌が一番あう気がします。ちなみに長野ではこの残り汁で蕎麦を温めて食べたりしますが、その場合は鶏モモ肉がマストですね。きのこは低温から加熱すると旨味が充分に引き出せる、ということだけ憶えておいてください。(僕も憶えておきます)

撮影用の食材代として使わせていただきます。高い材料を使うレシピではないですが、サポートしていただけると助かります!