野球漫画といえば、ドカベン！巨人の星！タッチ！ルーキーズっ！と知るのは超有名作ばかりの私が語るのは少し信憑性が低いかもしれないが、ヤングジャンプでとても面白い野球漫画を見つけた。

正直、私の中で野球漫画のイメージは一つだった。
高校生が汗水たらして、チームが強くなるように切磋琢磨して、やっと固い絆でひとつになった！と思ったら壁が出てきて、その悔しい思いをばねにして、
でも圧倒的な敵にくじけそうになりながらも、夢にくらいつき、最後は栄光を手にする。多くの人にとっても野球漫画はそんなイメージがあるのではないだろうか。
熱すぎる展開やベタすぎる話でも何故か心熱くさせられる、あったかい話が多いように思う。

しかしこの作品からそんな泥臭い熱さはあまり感じることはない。むしろ爽やかだ。そして主人公は、小学生。まだ野球人生の先は長い。時間的に追い詰められているわけでもない。
その為かこの作品は、今までの野球漫画に比べると、少し客観的に物語を見つめることができる作品のようにも思う。それはきっと、主人公に所謂才能や体格的なハンデや、完璧でない自分への苛立ちのような、そういう意味での人間味を感じないということもあるかもしれない。
あまりに恵まれた身体才能・センスと恵まれた身体を持つ少年が野球に出会い、しかしそれでも、自分の才能に苦しむ周りの人間たちに自分も苦しむ。
ただ楽しく野球がやりたいだけの彼の想い。天才の彼にそれを許せない周りの想い。
どちらかというと、周りの人間に同情や共感をしてしまうような話だ。

その一方で、筆者自身はそんな完璧な人間でも、絶対的な才能の持ち主でもないにも関わらず、どこか主人公にも共感する部分がある。
人には、なぜ周りができないのかわからないくらい、何故か簡単にできてしまう、若しくは人と同じだけの努力を必要としないで達成できるようなものが一つ二つあるような気がする。
世界レベル、日本レベルでなくても、学校では、部活内では、仲良しグループ内では、たいした努力なく、自分が一番にできること。
意識的に身につけたものでなければないからこそ、それを羨む人や、それを妬む人からの目が恐ろしく、またどう振る舞っても誰かを傷つけてしまうような、そんな状況になったことはないだろうか。その胸がキュッとなる気持ちを思い出すのだ。

誰も悪くない。誰も悪くないけれど、皆がなぜか暗く、辛い。試合に勝っても何故か暗い彼らの青春が気になってやめられない作品。