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こんにゃくゼリー事件

こんにちは。

 フランス人がこんにゃくゼリーを食べたら、どんな反応をするのかという動画があるのですが、意外とゼリーの食感が珍しいとの評判でしたが、進撃の巨人やナルト、ブリーチなど日本のアニメも評判だったことにも興味がありますね。

 さて今日は、こんにゃくゼリーをのどに詰まらせた子どもの死亡が問題となった「こんにゃくゼリー事件」(神戸地姫路支判平成22年11月17日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 祖母はスーパーでこんにゃくゼリーを買ってから冷凍庫で保管し、冷凍庫から冷蔵庫に移し替えて、2時間程度してから4人の孫にデザートとして与えていました。ところが、祖母が1歳9カ月の子に蓋を剥がして与えたところ、それを喉に詰まらせて、祖母や他の孫が見ていないところで窒息死するという事故が起きました。そこで、子どもの両親はこんにゃくゼリーを製造している株式会社マンナンライフに対して約6242万円の損害賠償を求めて提訴しました。

2 両親の主張

 マンナンライフのこんにゃくゼリーには、設計上の欠陥、警告表示の欠陥、販売方法の不適切性がある。というのも、通常はこんにゃくゼリーはカップから勢いよく吸い込んで、口の中で潰れて溶けるものと考えてしまっているので、喉に詰まる危険性を認識できないところに欠陥がある。またこんにゃくゼリーの警告表示について、高齢者は視力、注意力が減退しており、幼児も表示の意味を理解することができないので、欠陥がある。さらに、スーパーの販売コーナーを見てもPOPなどで警告を表示しているわけではないので、マンナンライフが小売店に対して注意喚起を行っていないという問題がある。だから、マンナンライフは製造者としての責任を負うべきだ。

3 マンナンライフの主張

 こんにゃくゼリーの窒息事故は、餅やご飯と言った全食物による窒息事故のうち0.04%にすぎない。こんにゃくゼリーの容器も改良して、吸わなくても容器をつまめば中身が出てくるようにして歯でかみ切れるようにしている。蒟蒻畑の袋にも、誰が見てもわかるピクトグラムの警告マークと文字で、高齢者と子どもに不向きであるとの警告表示を記載している。また、幼児が自分でスーパーでお金を出してこんにゃくゼリーを買うことはないし、POPがなくても袋の表裏に食べる際の注意・警告をわかりやすくし表示しているので、注意喚起は十分である。よって、弊社には製造物責任法に基づく損害賠償義務は存在しない。

4 神戸地方裁判所姫路支部の判決

 こんにゃくゼリーの外袋表面の中央には「蒟蒻畑」と印字されており、食感等の点で通常のゼリーとは異なることを容易に認識し得ると解されることからすれば、こんにゃくゼリーの警告表示は、今回の事故当時において、一般の消費者に対し、誤嚥による事故発生の危険性を周知するのに必要十分であったというべきである。
 また子どもが、当時1歳10か月足らずであることからしても、子どもに食物を与える際は、こんにゃくゼリーに限らず、保護者等(大人)が食べやすい大きさに加工するなどし、摂取中はそばについているなどして与えるのが通常であると考えられるところ、祖母は、こんにゃくゼリーをミニカップ容器のまま子どもに与え、自らはテレビに見入り、子どもが容器を祖母から与えられ誤嚥するまでの一部始終を全く知らなかったというのであるから、およそこんにゃくゼリーの通常予想される使用形態とはかけ離れたものであるといわざるを得ず、幼児がこんにゃくゼリーを大人の介助もないまま自ら食べることがその通常予想される使用形態でなく、国民生活センターによる一連の注意喚起が、その文面上、幼児に直接向けられたものではなく、その保護者等を対象としたものであることからしても、明らかである。
 そうすると、こんにゃくゼリーは、それが通常有すべき安全性を備えており製造物責任法上の「欠陥」はないものというべきであるから、これを前提とするマンナンライフらの責任も何ら発生しない。
 よって、両親の請求を棄却する。

5 パッケージの警告表示

 今回のケースで裁判所は、1際9カ月の子がこんにゃくゼリーを食べ、喉に詰まらせて死亡した事故につき、こんにゃくゼリーにはパッケージに警告表示がなされるなど通常有すべき安全性が備えられているので、製造物責任法上の欠陥はなかったとして、両親の損害賠償請求を棄却しました。
 この事件は、さらに大阪高等裁判所に控訴されたものの、高裁でも「こんにゃくゼリーは通常の安全性をそなえていた。食べやすい大きさにせず、そばに付くこともせずに食べさせたのは配慮を欠いていた」(大阪高判平成24年5月25日)として、製造物責任が否定されています。
 製品による事故の発生メカニズムや製品の安全性を考える上で、参考になれば幸いです。

では、今日はこの辺で、また。


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