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事故マンション購入事件

こんにちは。

 ルイージマンションという人気ゲームがあるのですが、実際に岐阜県富加町が運営していたマンションでは、怪現象が多発したことから住民が町役場にお祓いをお願いしたものの、政教分離を理由に断られたと言う事件があります。

  これに関連して、過去に入居者が事件や事故で亡くなっていた物件を購入し、後でその事実が発覚して裁判になることもあります。いったい法律上、どのようなことが問題となるかを考える上で、「事故マンション購入事件」(横浜地判平成元年9月7日判例タイムズ729号174頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 鈴木夫妻は子ども2人の4人家族で、住友不動産販売の仲介の下で、株式会社ビューティー・ライフから、3200万円でマンションの1室を購入しました。ところが、その建物内でビューティー・ライフの代表者の妻が6年前にベランダで首つり自殺していた事実が判明しました。そのため、鈴木夫妻はマンションの売買契約の解除と、1140万円の違約金を求めて提訴しました。

2 鈴木夫妻の主張

 購入した物件で、過去に自殺があった旨を知人から知らされたときに、ビックリして手足がガタガタした。家族4人で永住するつもりでローンを組んでマンションを購入したが、過去に建物内で自殺があったようないわくつきの物件であれば絶対に購入しなかった。売買契約を締結するときに、売主は、買主への重要事項として、過去の自殺があったという事実の説明義務があるだ。ビューティ・ライフはこのことを黙っていたので、私どもは契約を解除し、違約金を請求する。

3 ビューティー・ライフ代表の主張

 元妻は、障害児である長男の教育に悩み、引っ越しの苦労が重なってノイローゼとなり、入居後2週間して命を絶ってしまいました。それ以降に私は再婚し、子ども2人と平穏な家庭生活を送ってきました。今回の契約締結の際には、6年以上たった妻の自殺の事実を告げる義務はないと思っていました。
 人はだれしもいつかは死亡するものです。死者が出た歴史を持つマンションかもしれないことは、買主の方でも当然予想できるはずです。しかも、大都市のマンションは人の出入りが激しく、隣の人がどういう人なのか、何をしている人なのか関心がないのが通常のことではないでしょうか。
 買主が欠陥と感じるというだけの主観的感情的欠陥では、マンションの著しい欠陥とはいえず、マンションに住めないといった契約の目的を達成し得ないほど重要なものではないので、契約の解除はできないと思います。

4 横浜地方裁判所の判決

 小学生の子ども2名との4人家族で、永続的な居住の用に供するためにマンションを購入したものであって、買受の6年前に縊首自殺があり、しかも、その後もその家族が居住しているものであり、このマンションを、他のこれらの類歴のない建物と同様に買い受けるということは通常考えられないことであり、居住目的からみて、通常人においては、自殺の事情を知ったうえで買い受けたのであればともかく、子どもも含めた家族で永続的な居住の用に供することははなはだ妥当性を欠くことは明らかであり、また、これは損害賠償をすれば、まかなえるというものでもないということができる。 
 よって、契約の解除を認め、ビューティー・ライフは鈴木夫妻に対して、約1140万円を支払え。

5 事故物件公示サイト

 今回のケースで裁判所は、購入したマンションで6年前に自殺があった場合に、事故から長期間が経過したとはいえず、また損害賠償ではまかなえないほどの欠陥があるとして、契約の解除と売主に1140万円の支払いを認めました。
 民法改正により、買主を保護する制度として、買主が契約内容と異なるものを買わされた場合には、売主に対して契約不適合責任を追及することができるとされています。また、不動産売買において消費者がだまされないようにと、大島てるさんが運営する「事故物件公示サイト」もあります。

 自己防衛をするうえでも、自らで情報収集をすることは重要でしょうね。

では、今日はこの辺で、また。


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