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扶養料の求償事件

こんにちは。

 今日は、離婚した妻が元夫に対して立替払いした扶養料の求償ができるのかどうかが問題となった最判昭和42年2月17日を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 夫婦の間に子供が生まれましたが、その後に夫婦は離婚し、妻は子どもを連れて実家に帰り、父親が子どもの養育費を支出していました。元夫は、かねてから子どもが自分の子ではないと主張していたことから、扶養料を支払っていませんでした。そのため、妻は元夫に対して建て替えた約27万円の支払いを求めて提訴しました。

2 最高裁判所の判決

 第一審の富山地方裁判所は、一部の扶養義務者のみが養育料を支出した場合、他の共同扶養義務者に対して立替金の請求ができるものの、元妻の父親が養育費を出していたので、元妻の請求は理由がないとして棄却しました。これに対して第二審の名古屋高等裁判所金沢支部は、元妻の請求を認め、元夫に約13万5000円の支払いを命じました。最高裁は、次のような理由で、妻の請求を否定しました。

 民法878条 ・ 879条によれば、 扶養義務者が複数である場合に各人の扶養義務の分担の割合は、 協議が整わないかぎり、 家庭判所が審判によって定めるべきである。 扶養義務者の1人のみが扶養権利者を扶養してきた場合に、過去の扶養料を他の扶養義務者に求償する場合においても同様であって、 各自の分但額は、協議が整わないかぎり、家庭裁判所が、各自の資力その他一切の事情を考慮して審判で決定すべきであつて、 通常裁判所が判決手続で判定すべきではないと解するのが相当である。
 本件において通常裁判所である原審が分担の割合を判定したのは違法であって、この点に関する論旨は理由があり、原判決の求償請求を認容した部分は破棄を免れない。そして、原審の認定したところによると、未だ分担についての審判はないというのであるから、元夫の扶養義務は具体的に確定していないものというべく、元妻の求償請求は理由がない。 よって該請求を棄却した一審判決は、理由は異なるが結論において正当であり、この部分についての控訴は棄却すべきものとする。
 よって、原判決の一部を破棄し、養育料の求償請求に関する控訴を棄却する。

3 扶養義務の具体的内容の確定

 今回のケースで裁判所は、扶養義務者が他の扶養義務者に対して求償する場合、各自の扶養分担額は、協議が整わない限り、家庭裁判所が審判で定めるべきであって、通常の裁判所が判決手続で定めることはできない、として扶養料の求償を認めませんでした。
 つまり、家庭裁判所ではなく通常裁判所である原審が扶養料の分担の割合を判定したことに違法があるとされましたが、扶養料の求償自体は認められているという点に注意が必要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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