見出し画像

ビットコインゴールド事件

こんにちは。

 一般人でもビットコインを容易に購入することができるようになりましたが、その仕組みがどうなっているのかを調べてみたところ、公開鍵と秘密鍵の組み合わせたシステムを用いていることが画期的だというところまで分かりました(さらに深掘り中)。

 ビットコインが民主的な通貨を目指すという表向きの目標があると同時に、国家から偽札を作っているのではないかという通貨偽造罪の適用を免れるために、中央集権的なサーバーを置かないブロックチェーン(分散型台帳技術)が用いられているという話があります。

【刑法148条】
① 行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は3以上の懲役に処する。
② 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

 またこのビットコインのブロックチェーン上で発生したビットコインゴールドをめぐって裁判に発展した事件があります。いったい法律上、どのようなことが問題となるのかを考える上で「ビットコイン事件」(東京地判令和元年12月20日金融商事判例1590号41頁)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 平成29年10月24日に、ビットコインのブロックチェーンにおいて、仮想通貨のアップデートを意味するハードフォークにより、システムを変更した新しい通貨であるビットコインゴールドが発生しました。コインチェック株式会社に対して2.5657ビットコインを保有していた者が、ハードフォークによって生じたビットコインゴールドが自身に付与されていないとして、コインチェックに対して2.5657BTGの移転を求めて提訴しました。

2 ビットコイン保有者の主張

 コインチェックと交わした契約によると、その8条3項に「当社は、登録ユーザーの要求により、当社所定の方法に従い、・・・仮想通貨の送信に応じます。」と書いてあり、ハードフォークによって生じたビットコインゴールドはこの「仮想通貨」に該当するので、コインチェックは私に対して、ビットコインゴールドを移転させるべきだ。また、民法88条により、ビットコインゴールドがビットコインから生じた果実(天然果実であり、かつ法定果実である)と考えられるので、コインチェックは寄託物から生じた果実の引渡義務を負うはずだ。

3 コインチェック側の主張

 そもそも、ビットコインゴールドをビットコイン保有者に移転させる明示あるいは黙示の合意は存在しません。現に、規約の8条3項にもビットコインゴールドと明記されていないじゃないですか。またハードフォークにより生じた新コインを移転するには、新たな仮想通貨を取り扱う場合以上の極めて困難かつ煩雑な作業が必要で、不正プログラムが仕組まれて旧コインが盗難される危険性や新コインの送信を行う際に旧コインも送信される危険性があるので、コインを安易に送信することはできないのです。

4 東京地方裁判所の判決

 今回の契約において、原告と被告との間で、ビットコインゴールドを含むハードフォークにより生じた新コインをビットコイン保有者に移転させることを明示的あるいは黙示的に合意したものとは認めることができない。
 ハードフォークにより生じた新コインについて、一般社団日本法人仮想通貨交換業協会への事前届出をしないまま取り扱ったりすることは、それ自体仮想通貨交換業者としてのコインチェックの事業継続を困難にさせるおそれがあり、また、安全性、安定性の確保という点から問題のあるものと言わざるを得ない。
 よって、ビットコイン保有者の請求を棄却する。

5 ハードフォークと当事者間の合意

 今回のケースで裁判所は、ハードフォークにより新たに生じたビットコインゴールドについて、顧客が何らかの権利を有するのかどうかについては、当事者間に移転の合意があったかどうかを元に判断すべきとしました。
 まさにWeb3.0というブロックチェーン技術を活用した分散型ウェブ世界が到来していますので、今後も既存の法律の枠組みでどこまで対応できるのか、その限界がどこにあるのかということを追究してみたいと思います。

では、今日はこの辺で、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?