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安愚楽牧場事件

こんにちは。

 エガちゃんねるで、大食い女王3人を連れて焼き肉屋で食べまくっていたら、お会計が50万円になるという事実を目の当たりにして死ぬほど驚きましたね。

 さて今日は、和牛オーナーを募って高額の配当金を出すビジネスが問題となった「安愚楽牧場事件」(大阪高判平成29年4月20日裁判所ウェブサイト)を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 安愚楽牧場は、繁殖牛を買ってくれるオーナを募り、その繁殖牛が生んだ子牛を買い取るという名目で、オーナーに年3%~8%の配当金を支払い、契約が終了時に繁殖牛を出資金と同額で買い取るとしていました。ところが、安愚楽牧場は2011年に民事再生を申請した後に破綻することになります。負債総額4330億円に対して、返金されたのがたった215億円だったことから、関西に住む被害者らは、安愚楽本体が債務超過にあったことを契約時に説明しなかったのは不法行為に当たるとして、元役員らを相手に約1億6000万円の損害賠償を求めて提訴しました。

2 被害者らの主張

 安愚楽牧場は、販売できる繁殖牛の数が少ないにもかかわらず、「母牛のオーナーになりませんか」と、牛の数よりも多くの投資家を募っていた。しかも、決算報告では黒字経営が続いているように装ってオーナ契約の勧誘を続けていた。このような違法な資金集めをやめさせる義務があった経営陣や監査を担当した者に対して、損害賠償を求める。

3 元役員らの主張

 オーナー契約書に書いてあったように、オーナー契約で支払った代金は、元本の返還が保証されたものではありません。また、オーナー制度はワンマン社長と少数の者で取り決められたもので、取締役会自体も開催されておらず、我々は繁殖牛不足の事実を知ることもできませんでした。取締役の1人が社長にオーナー契約の改善を進言したところ「お前は会社を潰すつもりか」と一括され、その直後に栃木県那須塩原市の本部から沖縄県石垣島への出向を命じられたこともありました。だから、我々に違法な資金集めを止めさせるべき職務上の義務を怠ったということはありません。

4 大阪高等裁判所の判決

 安愚楽本体は、平成11年3月期末以降も、繁殖牛不足の事実を秘匿し、対外的には繁殖牛が足りていると装って新たなオーナー契約を勧誘していたのであるから、その勧誘は、特定商品預託法施行令3項4号所定の事実につき、故意に事実を告げず、不実のことを告げてされたということができ、特定商品預託法4条1項の禁止に抵触する違法なものであったといわなければならない。
 そのオーナー契約代金は、不特定かつ多数の者からの元本の返還を約する金銭の受入れであって、当該金銭を預け人の便宜のために授受されたものと認めるのが相当であるから、同時期以降のオーナー契約の勧誘は、出資法に違反する違法なものということができる。
 被害者らに対する違法なオーナー契約の勧誘は、経営陣3名が決めた経営方針に基づき、繁殖牛不足が常態化していることを知らない安愚楽本体の従業員によってされたのであり、法人が組織として行った不法行為と評価するのが相当であるから、安愚楽本体は、民法709条に基づき、オーナー契約締結により被害者らに生じた損害を賠償すべき責任を負う。
 しかし、その他の役員らにおいて、オーナー契約の実情、特に繁殖牛不足がいつ頃始まり、どの程度まで深刻化しているのかを知り、安愚楽本体が法律違反の営業をしないよう会社の業務執行の管理、統制すべき職務上の義務を果たすことは極めて困難であったといわなければならず、役員らには、その職務を行うにつき、悪意はもとより、重大な過失があったということはできない。また、計算関係書類から、繁殖牛不足が常態化しているのに長年にわたり違法なオーナー契約の勧誘が継続されていた事実を察知することは容易ではなかったというほかなく、安愚楽本体の違法な業務を看過したことに関連して、監査役に、会計監査の過程における悪意又は重大な過失による職務の懈怠があったということもできない。
 よって、被害者らの請求を棄却する。

5 高配当の預託商法に注意

 今回のケースで裁判所は、安愚楽牧場が出資金を集めて経営破綻したことについて、元取締役と元監査役に損害賠償を命じた大阪地裁の判決を取り消し、被害者らの請求を棄却するという逆転の判決を下しました。
 また、安愚楽牧場の和牛オーナー制度を著書の中で推奨したとして、海江田万里元民主党代表に対して、被害者らが5億7000万円の損害賠償を求めた訴訟でも、被害者らは敗訴しています。元本保証、高配当を餌にするおいしい話には十分に注意が必要でしょうね。
 では、今日はこの辺で、また。


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