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三浦和義vs東スポ事件

こんにちは。

 今日は、スポーツ新聞の記事で、三浦和義の名誉を毀損したかどうかが問題となった東京地判平成4年9月24日、東京高判平成5年8月31日を紹介したいと思います。

1 どんな事件だったのか

 いわゆるロス疑惑で世間の注目を集めていた三浦和義氏は、東京スポーツ新聞の紙面に梨元勝によって書かかれた「三浦和義差し入れ品横流しで特別待遇」という記事で、自身の名誉が毀損されたとして、梨元と東スポに対して300万円の慰謝料を求めて提訴しました。

2 東京地方裁判所の判決

 三浦和義氏は本件記事が掲載された当時、妻に対する殺人未遂被疑事件で東京拘置所に勾留されたまま公判審理を受けていた刑事被告人であり、社会的にもいわゆるロス疑惑事件の渦中の人として世間から高い関心を集め、三浦和義氏の言動はマスコミの恰好の取材対象であった。
 他方、梨元のリポート記事の類は社会的事象を専ら読者の世俗的関心を引くようにおもしろおかしく書き立てるものであり、東京スポーツの本件記事欄もそのような記事を掲載するものであるとの世人の評価が定着しているものであって、読者は右欄の記事を真実であるかどうかなどには関心がなく、専ら通俗的な興味をそそる娯楽記事として一読しているのが衆人の認めるところである。そして、真摯な社会生活の営みによって得られる人の社会的評価は、このような新聞記事の類によってはいささかも揺らぐものでないこともまた経験則のよく教えるところである。
 したがって、このような評価の記事欄に前記のような内容の記事が掲載されたからといって、当時の三浦和義氏が置かれていた状況を合わせ考慮すると、記事内容が真実であるかどうかを検討するまでもなく、三浦和義氏の社会的地位、名誉を毀損し、あるいは低下させるようなものと認めることは到底できないものというべきである。
 もっとも、本件記事が名誉毀損にわたるものではないとしても、思わせぶりな前記見出しの掲げ方とともに、東スポらにおもしろおかしく前記のような記事として取り上げられたこと自体が三浦和義氏にとって不快なものであろうことは推認できないではない。しかし、当時の三浦和義氏の置かれた状況並びに世人から寄せられていた関心の高さとその性質及びそのような関心を寄せられたとしてもやむを得ない状況にあったこと、右記事から既に6年以上が経過し、右記事自体の陳腐さが明らかであること等の諸事情に照らすと、右記事の掲載に損害賠償をもってするほどの違法があるものとも認められない。
 よって、三浦氏の請求を棄却する。

3 東京高裁では逆転判決

 地裁の判決に納得がいなかった三浦氏は控訴し、東京高裁では、記事の内容が三浦和義氏が東京拘置所内において、所内の規則に違反して、差し入れ品を横流ししていることを具体的に指摘するものであり、三浦和義氏の社会的評価を低下させているとして、東スポに慰謝料10万円の支払いが命じられました。
 ただ、第一審の判決文の中で東スポに対して「記事自体の陳腐さが明らかである」と断言されていたことにインパクトがあったようですね。
 では、今日はこの辺で、また。


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