「ハドリアヌスの前で壁に背中をこすりつける」って諺を流行らせたい

五賢帝の三人目……というより、テルマエ・ロマエの市村正親さんで有名なハドリアヌスは、皇帝でありながら公衆浴場にもふらりと現れ、庶民とともに入浴することがちょくちょくありました。

もう100年もするとローマ皇帝は日常的に暗殺されるようになるので、ほんとこの頃は平和だったんですね。

とにかくその日も公衆浴場を訪れたハドリアヌス。
浴場の壁に背中をこすりつけている男を見かけます。

「あいつ何やって……おや、いつぞやの戦場で活躍した兵士じゃないか。おーい、久しぶり。何してんの?」

「あ、陛下。ご無沙汰してます。じつは金欠で背中を流してくれる奴隷を買えず、仕方ないからこうして背中を洗っているのです」

当時の奴隷は、今でいう家電感覚。
さほど裕福ではない家庭でも、何人か所有しているのが当たり前でした。

「お前ほどの勇士が……。よし分かった、私が奴隷をプレゼントしよう」

「え、そんな悪いですよ」

「気にするな、戦友じゃないか」

かくしてハドリアヌスは男に奴隷と、奴隷を養うための生活費をプレゼントしたのでした。ランニングコストまで意識するあたり、さすがハドリアヌスです。

後日――

ハドリアヌスが公衆浴場を訪れると、大勢の男たちが壁に背中をこすりつけていました。

「え、こわっ。なにこれ」

しかしそこは五賢帝。すぐに事情を察します。

「あー、君たち」

「はい、皇帝陛下!(奴隷ください!)」

「背中を洗う奴隷がいないのかね?」

「はい、そうなんです!(だから奴隷ください!)」

「じゃあお互いに洗いっこしてろ」

「はい、……は?(は?)」

というわけで、「偶然の厚意の再現を期待して真似をする」みたいな光景を見たらぜひ使ってみてください。

「ハドリアヌスの前で壁に背中をこすりつける」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?