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ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の観劇記録①

ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』@日生劇場

My観劇前半戦✍
10/7  18:00プレビュー
10/13 13:00
10/20 13:00

CAST (敬称略失礼します)
🎙TEAM BLACK🖤
フランキー・ヴァリ:中川晃教
トミー・デビート:藤岡正明
ボブ・ゴーディオ:東啓介
ニック・マッシ:大山真志

加藤潤一
山路和弘
戸井勝海
綿引さやか
小此木麻里
遠藤瑠美子
ダンドイ舞莉花
大音智海
山野靖博
若松渓太
杉浦奎介
岡施孜

スイング:宮島朋宏

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(以下ネタバレを含みます)

 「あぁ、またひとつ良い作品と出逢えた。」
お祭りのようなプレビュー公演の雰囲気を思い返しながら、帰路の電車でひしひしと感じていた。
私にとって本編を観るのは今回が初めて。2020年のコンサートverは観劇したものの、まだまだこの作品の持つ魅力を知らぬまま観劇日を迎えた。
本来ならば本編のストーリーは2020年の帝国劇場公演で観ていたはず。公演中止は当然残念であり当時は号泣したものだ。だからこそ『ジャージー・ボーイズ』仕様の日生劇場に踏み込んだだけで涙が出そうになるほど、本作との再会は嬉しくて堪らなかった。

この2年は彼らにとって"秋"や"冬"の時代だったのかもしれない。終演後ふとそんなことを思った。裏の事情を何も知らない私が言うのもおかしな話だが、彼らが季節を越えて殿堂入りを果たしたように、この"奇跡のミュージカル"にはある意味必要な2年だったのだと。そう思ってしまうのは、公演の熱気を忘れる事が出来ないからだ。この2年間温めていたであろうキャストやスタッフ、制作の皆様の熱量が板の上に満ち満ちて、客席に濁流のように押し寄せてくる。そして我々観客もこの2年間「待っていたよ!」という想いを精一杯拍手やペンライトで伝えていく。我々観客は声こそ出せないものの、互いに感謝を伝え合っているように思えて言葉に出来ない程の幸せを感じた。そしてそんな熱狂が毎公演劇場に広がっている。これが"奇跡のミュージカル"が完成する瞬間なのかもしれない。

あぁ……大学生活の最後の思い出に『ジャージー・ボーイズ』をいっぱい見る!と決めてよかった!!

2022年版ペンライト(¥1800)

『ジャージー・ボーイズ』の好きなところは沢山あるのだが、中でも季節ごとにストーリーテラーが変わる点は作品の大きな特徴であり魅力であると思う。彼等の心やグループの空気感の移り変わりはまさしく春夏秋冬そのもので、素晴らしい物語の紡ぎ方だなと思っている。其々ストーリーテラーがいても各季節が独立している印象はない。だがストーリーテラーの視点で見える世界の変化は面白く、メンバーが互いをどんな存在として受け止めているかがわかる点や、自身の葛藤など大変興味深い。例えば、レコードを100万枚売った彼等の旅路を"夏"で順調!最高!と胸踊らせるボブに対し、ニックは"秋"で実際は順風満帆ではなかったと言う。同じ旅路を歩く仲間でも、各々記憶された物語が違うのだと。しかし其々の旅路は、まさしくロックンロールの殿堂でボブクルーが話す通り『辿り着くには四つの生涯が必要だった』のだと思わざるを得ない。またこうした4人が歩んだ季節は、人生の山と谷を表しているように思う。成功を歓喜して輝き、才能に憧れ、亀裂を経てどん底を味わう泥臭さ。まるで春に芽吹き、夏に大きな華を咲かせ、秋に葉を落とし、冬の寒さを耐え忍ぶように私の眼に映る。
ただThe Four Seasonsとしての四季を全て背負っているのはフランキー・ヴァリたった1人なのだと感じていて、これが彼の"孤独"さなのだろうと噛み締めている。それでも彼が歩みを止めないのは、4人のハーモニーを守るために地図の上をゴキブリのように這い回ったり、電池で動くウサギのように歌い続ける覚悟があったからだと。
フランキーはただただ4人で奏でる音楽を心から愛していた。スターになることより、レコードを100万枚売ることより、手品のようにsherryをパーッと出すよりも。4人の音のハーモニーやグルーヴを大切にしたからこそ、借金を肩代わりしてでも"グループを続けること"に意義や意味を見出していたのだと思う。

彼等のように家庭を持ちながら夢(仕事)を追いかけるのは難しい。大切なものが増えれば増えるほど掌からこぼれ落ちていくようで、それを痛切に訴えるフランキーの姿は胸にくるものがある。夢の代償ともいうべきか、二兎追う事はできないのだと実感させられる。抜け出すために得た道のはずなのに、その道が彼等を苦しめている要因のひとつでもあるというのが本当に苦しい。
音を奏でつづけるのも覚悟が必要だが、ニックのように父親の自分を尊重するのもまた、夢の梯子を降りる重さを伴う。ニックが自身のマイクにジャケットを掛けて立ち去る姿が忘れられない。彼の夢の閉幕。節目。モノローグで「自尊心だったのかもしれない」と彼は言うが、何かそれ以上の重みを私は感じている。(真志さんのお芝居のちからかな☺️)
私は登場時のボブやフランシーヌと同じ22歳。まだまだ夢を追いかける身で、家庭を持ちながら夢の旅路をゆくビジョンは明確に描けないけれど、いつか彼等の心を本当の意味で理解できる日が来るのだろうか。反対にメアリーやフランシーヌの心を理解する事になるのだろうか。

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キャストに焦点を当てた記録も残せたらいいな💭

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