※この文章は『気になること。2』の続編となっておりますので購入の際はご注意くださいますよう宜しくお願い申し上げます。
※この文章は『気になること。』の続編ですので、購入の際はご注意くださいますようよろしくお願い申し上げます。
岡田将には気になることがあった。 それは将来のこと。 25歳。 高校を卒業して専門学校に行ったはいいが 岡田将には就職先がなかった。 世界からあぶれてしまったような、 凄まじい疎外感の中から望む街並みというのは いかにも排他的で、 どこからも必要とされない と自覚する人間に対して とことんまで冷たかった。 周りの友人が就職し、慌ただしい日々の中に飛び込んでいくのを 中学生の頃から変わらないテンポで過ぎていく時間の中から観測する。 その気になれば、 やる気を出せば。 本
最近、なんかおかしい。 まあ別にいつも通りのクラスであり、東三中の二年二組なのだ。 先生も相変わらず機嫌がいいし、春から少したった陽気は元気が良すぎるほどだ。窓から望む景色も素晴らしい、といっても体育館の屋根が見えるばかりなのだが。 何がおかしいと思うかというと、みんなが暗いのだ。 いつも馬鹿みたいに騒いでいる健太も、 いつもゲームのことばかり話す祐希も。 男ばかりやたら暗い。 なんだか、変だと思う。 「なあ健太。お前なんか変だよな?」 そう聞くと、健太は眼を逸らす
※この文章は『その後の日常。1』の続編となっております。購入の際はご注意くださいますようよろしくお願い申し上げます。
僕は拗れていた。 まあ、表向きは健康な柔道少年でありインターハイを目指すこともできる位置にいる選手。 ということになっているしそれは間違ってはいない。 実際この夏には勝負をかけるべく部活は頑張っているし、 学校全体からの、もしくは県の柔道連盟からの期待も厚い。 しかしプレッシャーに感じることはほとんどなかった。 特に絶対的な自信があるわけでもなければ 特に絶対的に自信がないわけでもない。 凄まじくフラットで、 例えば言葉を選ばないのだとすれば 「それどころではない」 とい
※この文章は『彼女は僕のもの。』の続編となっておりますので購入の際はご注意くださいませ。
僕には好きな人がいる。 竹内由香。という彼女の名前も美しく、そのビジュアルはほとんど天女だ。 まあ、天女見たことないからもしかしたら天女より美しいかもしれない。 うん。きっとそうだ。 そうに違いない。 彼女は僕の大学の同級生で、 時折言葉を交わすだけの間柄だが まあ彼女も僕のことを認識している、という点ですでに満足をきたしている。 彼女は僕のことを遠藤君、とよそよそしく苗字で呼ぶ。 早くタクヤ、と呼んでくれないかなあと期待しているがまあ、無理なことだ。 まだまだ道のりは
※この文章は『知らない世界。』の続編となっておりますので購入の際はご注意くださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
ありふれた一日だった。 田中真斗はしがない自営業で特に華々しくもなく、そしてそれほどひどくもないという生活を送ることに成功していた。 たくさん稼いだら、その時はいいかもしれないけど 次の年、また次の年と税金がのっかかってくるので ほとんど逃げ惑うように仕事しなくちゃいけないのが嫌だ。 というのが、彼がそれなり中のそれなりという生活を送っている理由だ。 そんな彼にも、時折思い出しては胸がキュンとなる青春があった。 県大会3位。というこれまた、華々しくもなければどん底で
俺が彼女に会ったのは、飲み屋だ。 自分で言うのもなんだが俺の人生は退屈だ。 特に派手さのない、本当に、艶のない人生。
ほとんど異様という他に言い表しようのない熱気だった。 陽はもうとっくに沈んでいて、貧乏くさい裸電球一つを垂らした狭い体育倉庫の中に、彼らはいた。 換気口は開けっぱなしのコンクリートの穴が一つあるだけで、 そこに舞う砂埃も何もかも、あまりにも泥臭く浮き上がっては沈みを繰り返す。まるで人間の営み、その生活の有り様のようだった。 息遣いはそれぞれに荒く、ことの成り行きを見守る眼差しには燃え盛るような熱が込められていた。 ことの発端は、彼らの高校の運営にあった。 「校則の厳守」
静かな夜がヒソヒソと囁き合うような音が公園の木々を象っていた。 大橋康介は将来を嘱望された高校柔道選手だ。 日々、どうすればもっと強くなれるのかを考え、それを実践することで充実としていた。 そこらへんの大学生と試合をしても負けることはない。インターハイに出るのは当然として、その先を今日も必死に考えていた。 大橋は余裕だろう。 そういう声があちらこちらから聞こえてくるが、 当の本人は常に追い詰められていた。 余裕なんかではない、毎日が綱渡りのような危機感で必死に足掻いている
※この文章は『エリート。14』の続編となっておりますので購入の際はご注意くださいますようよろしくお願い申し上げます。
僕には友達がいる。 それは、まあ、今やアイドル。と呼ばれる職業についている。 僕と彼女は中学の頃からの友達で、そのころの彼女はただのクラスメイトだった。 確かに可愛らしくはあったが、もっと派手で明るくてモテるような女の子は他にたくさんいた。僕はそんな彼女とは波長があった。 柔らかくて優しい子だった。 きっといいお母さんになるんだろう。 そんなふうに思っていたから 彼女とは違う学校だったけど、高校に上がって 彼女がアイドルになったと聞いた時は信じられない気持ちになった
何なんだよ。 僕は、目の前にいる高橋芽依という同級生の女子に対して、嫌悪感に近い感情を持っていた。 聞くと彼女はある合同練習で僕の友人を無茶苦茶に絞め落としたんだという。 僕はまるで信じられない気分で、今日の地方予選の会場で彼女を見つけた。 「なあ、お前。」 そう話しかけると彼女はそのちょっとその辺じゃお目にかかれそうもない可愛い顔をこちらに向けた。 その視線は鋭く眼光で肌が切れそうにひりついた。 「柔道って、そういうことじゃないんじゃねえの。いくら強いのか知らないけど