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若松試合中止

9月29日ONE CHAMPIONSHIPでワン・シオ(中国)と再起戦を行うはずだった若松佑弥の試合が相手選手の体重超過により中止になりました。
全くこちらに非のない話ですが沢山の応援してくれる方達に格闘技の業界人として申し訳ない気持ちで一杯ですし次こそは、もっと強くなっている姿をお披露目出来るはずと思っています。
年内に必ず試合しますので引き続き見守って頂けますと幸いです。

遡ること若松は今年3月に王者アドリアーノ・モラエスの持つ世界フライ級タイトルに挑戦するもギロチンチョークにより敗退しました。
その時の心境はブログに書いているのでこちらをご覧下さい。

敗戦後とそのちょっと後

自分が戦った本人以上に落ち込んだ後に佑弥は若い選手志望達が憧れで、うちのチームの象徴とも言える選手なのでこのままではいけないと考えました。
所属の全選手を指導していますし、一人一人に違ったアドバイスはしています。

佑弥の場合は昨年アメリカ修行に行った後から技術云々よりも世界を狙うトップ選手は練習以外は何もしないと言う「えっそこ〜」とツッコまざるにはいられないものを学んで帰ってきました。
そもそも彼はうちのジムで週に午前中のジム番2回と夜のMMA初級クラスの1時間しか働いてはいませんでしたが…
若くしての妻子持ちですがONEの試合をコンスタントにこなせれば東京在住でも確かに食べてはいけます。

指導は自分の技術に還元出来るものだし月5、6万のアルバイト代でも年間にすれば子供の食費くらいにはなりますす。重荷になるような就労時間では決してなかったはずです。

しかし彼は決めると頑固です。

アメリカ修行の帰国後から100%ファイターの生活を始めました。
Youtubeも格闘技の指導もしないで大口スポンサーも無く、ただ練習と試合をするだけの日本では、かなり珍しい稀少なファイターです。

増えた自由な時間にロータス世田谷の八隅君にパーソナルで習いに行くようになりました。
ボクシングのトレーニングも始めリブートジムの射場さんにパーソナルをしてもらうようになりました。

それから確かにレスリング力は強化され特に正面の当たりは強くなり同階級の選手にはなかなか倒されなくなってますしタックルや四つ組ではテイクダウンするようになりました。

それを駆使して戦い勝ったのが昨年末12/3に行われたフー・ヨン(中国)戦でした。


結果は打撃とレスリングを使い分けて完封勝ち。
これでタイトル戦に向かう事になります。

試合後に宿泊先のホテルにバンで戻る途中、試合中も叫んではいましたが俺はお前もっとやれただろう?と佑弥には言いました。
「わざわざテイクしなくても打撃だけでKO出来たんじゃない?」
黙って話は聞いている佑弥ですが、内心はタイトル前にフーヨンの強打を浴びるようなリスクは避けたかったし、新しいテイクダウンと言う武器を使った事に少々満足していた顔をしていた事を自分は見逃していません。

この時期からフルタイムファイターとなった彼とメインコーチである自分の考えに違いが生じている気がしました。

その後タイトル戦が決まり、とにかく練習したと思います。
5R戦なので沢山ミットを持ちましたしトレーニングキャンプに関してはやれる事を全部やったと思います。
しかしその結果は

でブログに話は戻ります。
アドリアーノに敗戦後、再起戦が決まらないうちから我々の心に多大なダメージを残した敗北を払拭するには試合でやり返すしかない。

組技を教えてくれる八隅君、ボクシングを教えてくれた射場さんにお世話になりつつもファイトスタイルのコーディネートは本人ではなく俺がやらないといけないと思い毎週水曜に1時間の長南パーソナル(無料)を開始しました。

他の選手達にしてみれば少々贔屓目に見られるかも知れませんがこれは俺の威信をかけた戦争なのです。
他所で習ったレスリングとボクシングをどのようにMMAに使うか?
距離からタイミングから全て再設定しました。
フーヨン戦で上を取ってから何もなかったのでそこから仕留めるパターンも何個か作りました。
佑弥にはONEのルールがとても合っていると思います。

水曜にマンツーで体を張って教え、外部から強豪が集まる木曜のプロ練でそれを試すと言う作業の繰り返しでした。
着々と準備は出来ました。
元々あった物+更に相手を仕留める武器を身に付けました。
フィジカルコーチの堀江さんからかスタミナが過去最高になっていると聞いていました。

今回の試合が決まり相手が一度変更になったものの結局は同じ中国人ストライカー。
フーヨンとも似ているので昨年末からの違いも見せれると思って俺自身が楽しみでした。

コロナが終息し同部屋(コロナ禍は1人1部屋)で減量する事になったのですが、一日中パタパタ動いている佑弥はいろいろやらかしました。
佑弥は我々の部屋にホテルのお偉いさんが視察に来るくらいの事をやったのですが幸い大事にはならずに無事に済んだのでその件は割愛します。

そして体重と尿比重を一発クリアしてリカバリー。
夜には会場でFace offがありました。

もう本番だけだと思ったのですが帰ると相手のワン・シオはその日の計量は失格で試合当日に再計量になると聞かされました。
再計量は朝の9時から12時までの間に行われます。

試合当日の9時に呼ばれたので計量場所に行くとONEのスタッフとワン・シオとそのセコンドがいました。
尿比重はパス出来てるものの体重は1.5kgオーバーしています。
9時だったのでまだ落とせるだろ?と俺が言うと無理だと諦めていました。

彼は和田竜光と試合した時も体重超過をやっているのでプロ選手としては失格です。
こちらとしても試合はしたいのですがキロ単位でオーバーしてくるようなのをそのまま許すマネージャーはいないのでペナルティの条件を提示しました。
だいたい他の大会でもあるような普通の基準です。
すると向こうのマネージャーは電話でそれは駄目だと言ってきます。

流石にONE側も自分もおいおいって話になりましたがワン・シオは気分が悪いと言い出し部屋に戻りました。
その直後、ONEサイドから中止と連絡が来たと言うのが今回の経緯です。

まさかここまで作り上げてシンガポールまで来て試合が中止になるとは予想していませんでしたし怒りと喪失感とでどっと疲れが襲ってきました。

横を見ると佑弥は俺よりもっと落ち込んでいました。
流石に俺も一緒になって落ち込んではいられないので周りに試合中止の連絡を一通りした後に昼食に出かけました。
美味いチキンライスの屋台連れて行き食事をしながら「このまま落ち込んでは駄目だせっかく試合する為に来たんだから試合する気で練習するぞ」と伝えました。
正直佑弥は乗り気ではなかったのですが、ホテルに閉じ籠っていてはダメだと思いチャトリ代表に連絡を取ってEVOLVEで急遽ムエタイのパーソナルをしてもらう事になりました。

俺も試合の為に用意したバンテージをしっかりと巻きました。

ぱっと見同じでも日々進化

ジェームス・シンビートレーナーが佑弥の担当をしてくれました。
キックミットを10分近く持ってもらった後は40分首相撲をやり続けました。
佑弥はムエタイのテクニックでやられながらも沢山の技を習いました。
落ち込んだいた佑弥の目は全てを忘れて真剣になっていました。

ジェームスコーチと

写真は40分も首相撲やったので少し崩れていますがバンテージがとても良かったそうです。
スタミナは全く切れませんでした。

EVOLVEでこの練習があったからこの旅は無意味なものではなくなりました。
チャトリ本当にありがとう。

高橋選手のセコンドに来ていた佐藤将光君も一緒だったのでラオパサと言うデカいフードコートでディナーしました。

凄い笑顔になっています。

今回は便が違って自分の方が佑弥よりも3時間早い早朝の便での出発だったのですが、寝ていた佑弥は俺がホテルを出る時間にわざわざ目覚ましをセットして起きてきました。
俺を下まで見送ろうとするのですが俺は来なくて良いと言うとエレベーターの前で佑弥はこう言いました。

「帰ったらまた1から宜しくお願いします。」

い、いいいいいいいいいいちから…
今までリセットするんか〜い!
今まで台無しw

しっかり計量をクリアーした佑弥は基本のギャラは貰えます。
ショーツスポンサーは全部ゼロですがすぐ試合を組んでくれるそうなのでまた練習を沢山出来ます。
KEEP MOVING FORWORD
我々はまだまだ進みます。

読んで頂きありがとうございました。暇があれば是非ピラニアとよばれた男も読んでみてください。

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